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神聖騎士のエル

【☆★おしらせ★☆】


あとがきに、

とても大切なお知らせが書いてあります。


最後まで読んでくださると嬉しいです。



 ……エルメルマータが、ぽかんと口を開けたまま固まっていた。やがて、目に涙がたまり、そして――


 彼女は勢いよく、わたしに飛びついてきた。


 わたしは逃げなかった。正面から、彼女を受け止める。


「ぶべぇえええええええええええええええええええええええん!」

「“ぶべえん”って何ですか、それ……」


「ばっべぇえええええええええええええええええええ!」


 エルメルマータは号泣していた。悲しい涙ではないのは、わたしにもわかる。だから、わたしは何も言わず、彼女の頭をそっと撫でた。


 ……柔らかい体。そして、ほんのり甘い匂い。耳元では「うびゃあ」「おぎゃあ」などと騒がしいが、不思議と気にはならなかった。


 この子が喜んでいるのが、伝わってきたからだ。――エスパーではない。ただ、彼女が「うれしいよぉ」と何度も言っているから。まったく、わかりやすい子だ。……だからこそ、愛おしい。


「……ごめんね、心配かけて」

「ほんとですよぉ~……もぉ……いっぱい心配かけてぇ……心配……ぐす……ぐしゅん……心配したんだからぁ~……」


 それは単なる言葉じゃなかった。涙の量が、なによりの証拠だ。この子は、嘘のつけない、裏表のない子だ。だからこそ――本気で心配してくれていたのだと、わかる。


 ……そんな彼女を、わたしは好ましく思う。


「えるを心配させた埋め合わせに、梓弓を取りに来たんですか?」

「いえ、目の前のレアアイテムを放置するのはもったいなかっただけです」


「ふふふ~~♡ ですよぉねぇ~♡」


 一見がっかりしそうな返答なのに、彼女はむしろ嬉しそうだった。


「えるの知ってるセンちゃんだぁ~♡ うえへへへ~♡」


 今度は、すりすりと頬ずりしてくる。まるで子犬のように。――だが、うっとうしいとは微塵も思わなかった。


「えるはセンちゃんに雑に扱われるの、好きなのですぅ~」

「ドエム?」

「違うですよぉ~。“雑に扱っても大丈夫”って、信じてくれてるんだなぁって。だから……好き」


「そう……」


 この子は、もはや一介のゲームキャラでも、【びにちる】の登場人物でもない。

 エルメルマータという、わたしにとって唯一無二の存在になった。


「エルさん。先に言っておきます。たぶん、今後も厄介事は舞い込んできます」


 極東の危機を救ったこと。ゲータ・ニィガが、聖女としてわたしを“認めた”こと。――それらは、やがて噂となって広まっていく。


 あの馬鹿聖女が放棄した役目の数々が、これからわたしのもとに降ってくるのは目に見えていた。


 ……つまり、主役がコビゥルからわたしに変わった、ということだ。


 わたしの隣にいることは、危険を意味する。

 だからこそ――わたしは、梓弓を彼女に渡した。

 守ってほしかったから。……それは、わたしの勝手なエゴに過ぎない。


「わたしを、守ってくれますか?」


 エルメルマータは、少しだけわたしから身を離した。……ほんの少しだけ、寂しい気持ちがよぎる。


 だが――


 彼女はすっと膝をつき、わたしの手を取る。そして、その手の甲にそっと口づけた。


「貴女を、守ります。永久に」


 その言葉に、わたしの胸があたたかく満たされていく。

 その想いが、波のようにエルメルマータにも伝わっていった。


「ふぇ!? な、なんですぅ!?」

「これは……神聖騎士シュバリエ契約」


「しゅばりえ……? ななな、なんですぅ!?」


 【びにちる】の主人公にだけ許された、特殊なシステム。

 聖女を守るための、専用のナイト――それが、神聖騎士シュバリエ


 エルメルマータの体が、眩い光に包まれる。

 光が静かに収まると――


「える、なんか……ものすごーく体が軽いですぅ~……それに、魔力が……ぶわぁって溢れてるようなー……」


 今までの比ではない魔力量を、彼女は纏っていた。

 神聖騎士シュバリエになると、基礎能力が飛躍的に上昇する。


 さらに、梓弓もまた、変化していた。

 和弓の形から、白く気品ある、まさに“エルフの神聖弓”と呼ぶべき姿へ。


 身につけていた服も変わり、白を基調とした、動きやすく洗練された騎士服に。

 胸当て、篭手――見た目も機能性も、完全な【守護者】の姿へと変わっていた。


「これは、神聖騎士シュバリエになった証です」

「しゅばりえって、要するに?」


「わたし――聖女を守るナイト。それが“しゅばりえ”です」

「おぉ~! それ、いいですねぇ!」


 エルメルマータがまた、嬉しそうに抱きついてくる。……心なしか、胸も魔力でサイズアップしているように見えた。


 武装の変化。そして、外見の変化。


「あれ? もしかしてえるをシュバリエにするのも、計算だったり?」

「まさか。まあ……実験に使ったのは、否定しませんけど」


「あはは~♡ ですよねぇ~♡」


 実験台にされたと知っても、彼女は笑っていた。

 わたしに悪意がなかったことを、彼女はちゃんと理解していた。


 ……それがわかってるから、笑ってくれる。


「えるは、また一つ強くなったですぅ~! これでセンちゃんを、ばっちり守るのですぅ!」

「これからも、お願いしますね、エルさん」

「はいですぅ~!」


 こうして、わたしはエルメルマータとまた一つ――深く、絆を結んだのだった。


【★☆読者の皆様へ 大切なお知らせです☆★】


新作の短編投稿しました!

タイトルは、


『ハズレ職業【送り人】で追放されたけど、実は異世界から帰れる唯一の能力でした〜「【見送る】しかできないお荷物は不要」と馬鹿にしたクラスメイト達から、土下座されても現実には送り返す気はありません』


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★茨木野の新連載です★



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『【連載版】追放聖女はキャンピングカーで気ままに異世界を旅する』

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