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第11話 ドラゴンを圧倒する悪役令嬢



 さて、氷竜フロスト・ドラゴン戦だ。

 わたしの目の前には、見上げるほどの、氷でできたドラゴンがいる。


 倒れ伏していたドラゴンが、ぐぐぐっ、と顔を上げる。

 私の一撃が、致命傷には至らなかったようだ。


「ギシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 空気がビリビリと振動する。ドラゴンから放たれるのは、肌がひりつくような殺意。

 お前を殺す、という意志がありありと伝わってくる。


「ここで引き返すなら、見過ごしてやる。どうする?」

「ギシャシャァアアアアアアアアアア!」


 キレて、氷竜が襲ってくる。無理もない。ツガイを殺されたのだ。私ら人間への憎悪は、半端ないものだろう。


 でも仕方ないのだ。この【びにちる】世界は、弱肉強食が絶対理。

 弱い奴は食われる。そして……。


 殺していいのは、殺される覚悟のあるやつだ。


「逃げろ! セントリア・ドロ!」


 背後で、ルシウムさまのお孫さまである、トリムが叫ぶ。


「おまえが倒せる相手じゃあない!」


 どうやらわたしを心配してくれるらしい。

 なんだ、本質的には、いい人なんだなこの人。


「ご忠告ありがとうございます。ですが……」


 氷竜が突進してくる。

 わたしは、右斜め前に向かって、ステップでかわす。


「なっ!? かわしただと!?」

「問題ありませんわ。このモンスターとは、何度も戦ったことがありますので」


氷竜フロスト・ドラゴンと何度も戦っただと!?」

「ええ」


 と言っても、ゲーム時代に、だけども。

 

 氷竜が立ち止まり、こちらに向かって顔を向ける。

 わたしは、あえて氷竜に向かって走り出す。


「死ぬ気か!?」

「いいえ」


 わたしはそのまま、氷竜の体の下へ、スライディングする。

 わたしがさっきまでいた場所に、氷結フリージングブレスが放射された。


「ブレスを避けた!? まさか……攻撃を読んでいたというのかっ!?」


 背後で、トリムが叫ぶ。その通り。

 わたしは、氷結フリージングブレスが来るタイミングを読んでいた。


 わたしはこのゲーム【びにちる】を、やりこんでいる。

 この氷竜とも、何度も戦っている。そのため、こいつがドンナ動きをするのか、攻撃の予備動作も、全部把握してるのだ。


 氷竜の背後をとる。


「おまえは確かに強いよ。でもね」


 わたしはそのまま、手に持っているそれを、向ける。

 ドガンッ……! という激しい音。


 それと供に、氷竜の右目が潰れる。


「残念、相手が悪かったね」

「なっ!? なんだ、その手に持っているのは……!?」


 トリムが驚いている。その目は、わたしの右手に握られるものを見ている。


「これは、銃ですわ」

「じゅ、じゅう……? なんだ銃とは……?」


 【びにちる】は中世ヨーロッパ風ファンタジーゲームだ。

 このゲームには銃が出てこない。けれどわたしは、知ってる。銃の構造を、銃の、恐ろしさを。


 錬成スキルを使って、わたしは銃を作成したのだ。

 地中から、特定の鉱物や物質を掘り起こす採掘スキル、物体を合成したり化学反応を引き起こす、錬成スキル。


 それらを組み合わせれば、銃を作ることなんて容易い。

 特にここは、温泉が沸いているケミスト領だ。


 黒色火薬のもととなる、硫黄は取り放題である。

 ここでは確かにゲームのルールが適応される。


 でも、現実でもある。

 ゲームに実装されていないことも、現実の知識と、この世界のスキルを使えば、こうして現実のアイテムも生成できるのだ。


 わたしはこの10日で、銃を作成していたのだ。

 量産できれば、この領地を守る強力な武器になるから。


「すごい……ドラゴンの目を正確に打ち抜いた……いったい、なんだあの武器は?」

「あとで説明してあげます」


 まだだ。

 まだ、氷竜は生きている。


 あの程度じゃレベル100越えの竜は殺せない。


「グウルウァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 怒った氷竜が咆哮をあげる。

 周囲の空気が凍り付いていく。


「なんだ、一体何が起きようとしてる!」


 トリムは知らない。これが、氷竜の奥の手であることを。

 そして、もちろんわたしはそれを知ってる。

 だから、走り出す。

 やつの、口に向かって。


「逃げろ! 怒ってる敵に向かってツッコむバカがどこにいるんだ!」

「いいえ、ここで逃げるは愚策ですわ」


 わたしは氷竜の正面へとやってきた。

 やつの周囲の温度がどんどんと下がってきている。


 間違いない。氷竜の奥の手、【氷神アイシーバースト】の予備動作。

 冷気を一気に貯めて、周囲に絶対零度の凍てつく波動を発生させる技だ。


 これが発動すると、広範囲が、氷の海に沈んでしまう。

 避けようがない即死技だ。でも……。


「それも、当たらなければ意味は無い」


 わたしは懐から取り出した、新しい武器を取り出す。

 手のひらに収まるサイズのそれ……手榴弾の、安全ピンを抜く。


 そして、氷竜の口の中に、放り投げる。

 その場に伏せ、衝撃に備える……。


 ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


 ……激しい爆音とともに、氷竜の頭部が、木っ端微塵に吹き飛んだ。


「討伐完了」


 敵に奥の手を出される前に、倒すことができた。

 奥の手を使うとき、相手には油断が生まれる。これを使えば、自分は絶対に勝てると。


 だがおまえの動きは、ゲームのときと同じだった。

 敵はこの世界ゲームを、よく知り尽くしたプレイヤーだって、最初に知っていたら、多分結果は変わっていただろう。


 おまえの敗因はただ一つ、おまえがゲームの単なるモブでしかなかったこと。

 ゲーム時代では考えられない動きや、攻撃をしてきたら、結果は違っていた。


「うそ……だろ……。氷竜だぞ? 有名な冒険者パーティですら、全滅させられる敵を……一人で、こんな短時間で……倒せる……なんて……」


 トリムがわたしを、まるで化け物を見るような目で向けてくる。

 おっと、いけない。


 夫のお孫さんを、怖がらせてしまった。


「ご無事ですか」

「な、なんだ! なんなんだ貴様はぁ……!?」


 わたしは彼の前で、カーテシーを決める。


「ただの元・悪役令嬢です」

「おまえのような悪役令嬢が居てたまるかぁ……!」


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― 新着の感想 ―
転生前はOLだったのに銃や手榴弾の構造を知ってるのか… しかもドラゴンに通用する口径だろうし 転生前もヤバイやつだったんだな
手榴弾突っ込む仕草に昔あった爆薬で魚気絶させて水面に浮かばせて全部採る漁法を思い出したのは私だけではないと思いたい…!! あとカエルに爆竹突っ込むやつ。
⁇⁇「勝ったな。」 ⁈⁈「あゝ。」通りすがりの人達(笑)。 主人公「勝ったぞおおーぉぉぉぉぉぉ!!(一応勝利の雄叫びを)ハァ、勝った。」 いつのまに、そんな物騒な『近代兵器』を? 兎に角『土魔法』つお…
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