第1話 悪役令嬢、婚約破棄される
この↓短編の、連載版です!
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「セントリア・ドロ! おまえとの婚約を破棄する!」
「せんとりあ……? 」
……目の前の金髪イケメンが、わたしに向かって、唐突にそんなことを言ってきたのだ。
一体この人はだれ?
セントリアって……もしかしてわたしのこと?
困惑するわたしは、突如として、激しい頭痛に見舞われた。
そして、わたしは思い出す。
(ああ! ここ、大人気乙女ゲーム【喜びにみちる世界】……通称【びにちる】の世界で、わたしは主人公の恋を邪魔する悪女、セントリア・ドロとして転生したんだった!)
……ここは、ゲータ・ニィガ王国の王立学園。
その卒業パーティの場。
わたしに婚約破棄を言い渡してきたのは、【テンラク=フォン=ゲータ・ニィガ】。
この国の第一王子だ。
「セントリア……おまえは、【聖女コビゥル】へ度重なる嫌がらせを行った!」
聖女コビゥルというのは、このびにちるの主人公。庶民の出身だけど、実は聖女の力を持った凄い女の子であることが、後になってわかる。
編入してきた聖女コビゥルに、テンラク王子は一目惚れする……というのがびにちるの序盤のストーリーだ。
……テンラク王子には、元々婚約者がいた。
それが、わたし。ドロ伯爵家の長女、セントリア・ドロ。
「嫌がらせ……ね」
「そうですぅ」
王子に抱きついて、体をくねらせているのが、ゲーム主人公の聖女コビゥル。
桃色の髪の毛、豊満なボディ。そして、大きな瞳に、小さな顔。
……男子に受けが良さそうな外見をしてる。
コビゥルはがっつりと、テンラクにくっついて、そして無駄に大きな胸をこすりつけていう。
「あたしぃ、セントリアさんに、顔面に泥を投げつけられましたぁ。しかも、飲み物に毒を混ぜられてぇ、あやうく死ぬところだったんですぅ~。くすん」
……確かに、原作のセントリアは、そんなことを、コビゥルにしていた。
わたしにも、コビゥルに対して、そんなことをした記憶がある……。
けど、なぁ……。
それをやったのはゲームの悪役キャラ、セントリアであって、この【わたし】ではない。
【わたし】は、日本でOLをしていた。
アラサー。趣味はゲーム。カレシはない。結婚の予定もなし……
……たしか【わたし】は、仕事を終えて家に帰って、新作狩猟ゲームをしてた、はず。
そして寝落ちした……と思ったら、気づいたらここにいたのだ。
で、わたしの置かれている状況を整理すると……。
(乙女ゲーム【びにちる】のラスト直前の、断罪シーンまっただなか……ってところだよね)
セントリアは卒業パーティで、その罪を白日の下にさらされる。
セントリアが行ってきた悪行のせいで、周りは彼女のことを、だれも助けようとしない。
まあ、しょうがない。
セントリアは、いまコビゥルが言ったとおり、人の顔に泥を投げつけたり、髪の毛をひっぱったり、階段から突き飛ばしたり……と。
そういうことを、平気で行うのだ。
自分が貴族で、選ばれた人間だから、他人にそういうことをしてもいいと。特に平民への当たりはキツかったから。
貴族、平民、学校関係者、だれも……わたしを擁護してくれない。
(しょっぱなから詰んでる件……。しかも、確かこの後の展開って……)
「聖女を虐めた罪は重い。貴様には、相応の罰を受けてもらう。その内容は……ケミスト辺境伯の、後妻となってもらう!」
……やっぱりか。
ケミスト辺境伯。
ここ、ゲータ・ニィガ王国の東に広がる、【ケミスト】領の領主様だ。
辺境伯なので、かなりお偉いさんである。そこに嫁ぐことが、なぜ罰になるのか。
簡単だ。
「確か、今の当主は、御年60でございましたね」
「そ、そうだ……セントリア。よく知ってるな」
ええ、よく、ご存知ですよ。
なにせ、びにちるは何度もやりこんだゲームなので。
そう……婚約破棄された悪役令嬢、セントリア・ドロは、ケミスト辺境伯(60)歳の、後妻として、無理矢理結婚させられるのである。
……そして、この後どうなるかも、わたしは知ってる。
婚約破棄後、憎しみにとらわれたセントリアは、最終的に悪魔と契約。
辺境の森の魔物達を率いて、主人公たちに復讐を果たそうとするのだ。
……まあ、コビゥルの聖なるパワーによって、悪魔となったわたしは滅ぼされてしまうのだけど。
で、その際に、ケミスト領は、復讐劇に巻き込まれて滅んでしまうのだ……。
(まあ、無理もない。うら若き乙女が、60のおじさんと無理矢理結婚させられたら、恨みを抱くよね)
セントリアは特に、プライドの高い女だった。
「セントリア様……おかわいそう(くすくす)」「60のおじいさんと結婚させられるなんて(くすくす)」「まあ、自業自得だけど(笑)」
……↑周りから、こんな風に思われる(言われる)のが、相当、嫌だったんだろう。
こうなるきっかけを与えた、主人公コビゥル、およびヒーロー・テンラクに復讐したくなる気持ちも、まあわからなくもない。
(わたしはまあ、別にどうでもいいけど。他人からどう思われようともね。……さて、問題は、これからどうする、だ)
セントリア(わたし)の、ケミスト領行きは覆せない。
なぜなら、王家の命令だからだ。
びにちるは、中世(風)ファンタジー世界を舞台にしてる。
王の命令に逆らうことができない時代なのだ。
(となると、ケミスト領へ行かざるを得ない……か。このままだと破滅一直線だけど、まあでも、大丈夫か)
セントリアは、悪魔と契約し、その憎しみを暴走させた結果、主人公達に殺される。
裏を返せば、悪魔と契約さえしなければ破滅することは、ない。
「わかりました。王家の命令に従い、わたしはケミスト辺境伯の後妻となります」
そんなわたしのことを、なぜか主人公であるコビゥルは、「……あれ? 原作とリアクションが違うような……?」と何かをつぶやいて、首をかしげていたのだった。
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