6(2)「銀河ステーション(2)」
いつのまにか謎の列車に乗っていたジョバンニ。
そこには親友のカムパネルラも乗っていました。
カムパネルラは謎めいたことを話しはじめました。
6(2)「銀河ステーション(2)」
ジョバンニが、「カムパネルラ、君は前からここに接続していたのと言おうと思ったとき」、
カムパネルラが「みんなはねずいぶんシステムにアクセスしたけれども遅れてしまったよ。ザネリもね、ずいぶん高速処理したけれども過学習になって追いつかなかった」と言いました。
ジョバンニは、「そうだ、僕たちは今、一緒に誘ってログインしたのだ」と思いながら、「どこかで待機しようか」と言いました。
するとカムパネルラは「ザネリはもう三次元に帰ったよ。お父さんがログインしてログアウトさせにきたんだ」と言いました。
カムパネルラは、なぜかそう言いながら、少し顔色が青ざめて、どこか高速に並列処理をしながらも、大事な部分が処理落ちしたというような表情をしていました。
ところがカムパネルラは、360度全天周ディスプレイから外をのぞきながら、もうすっかり元気が直って、勢いよく云いました。
「ああしまった。ぼく、スマートフォンを忘れてきた。タブレットも忘れてきた。けれど構わない。もうじき白鳥のデータセンターだから。ぼく、白鳥なら、ほんとうにすきだ。機械学習のアルゴリズムを使っていたって、ぼくはきっと白鳥にたどり着ける。それにVRグラスはちゃんと着けてた。」
そして、カムパネルラは、霧のように浮遊するナビゲーションシステムを、しきりにぐるぐるまわして見ていました。まったくその中に、白くあらわされたインターネットゲートウェイのノードの羅列に沿って一条のリニア軌道が、南へ南へとたどって行くのでした。
そしてそのナビの立派なことは、夜のようにまっ黒な画面の上に、サーバールームや三角標、泉、ホテルやレストランやアーカイブやステーションが、青や橙や緑や、うつくしい光でちりばめられて3Dで浮き上がっていました。
「このナビはどこで買ったの。人工知能でできてるねえ。」 ジョバンニが云いました。
「銀河ステーションで、もらったんだ。君もらわなかったの。」
「ああ、ぼく銀河ステーションを通ったろうか。いまぼくたちの居るとこ、ここだろう。」
ジョバンニは、白鳥と書いてあるデータセンターのしるしの、すぐ北を指さしました。
「でも、このナビ、まるで人間のように話ができるんだよね。音声認識の精度もすごいし、自然言語処理もできるみたいだ。」とジョバンニが話すと、
カムパネルラは「そうなんだ。それにこのナビ、人工知能を使って、ぼくたちの好みや行動履歴から学習して、最適な情報を提供してくれるんだ。」と答えました。
ジョバンニとカムパネルラを乗せた幻想第四次リニア鉄道は、電脳世界を駆け抜けていきます。