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7(1)「ノーザングランドクロスとプリオシン・コースト(1)」

楽しく旅をはじめたジョバンニとカムパネルラでしたが、やっぱりカムパネルラの様子が変です。

7(1)「ノーザングランドクロスとプリオシン・コースト(1)」


「おっかさんは、ぼくを許してくれるだろうか。」と、カムパネルラが突然口にした。彼は決意に満ちた様子で、しばらく考え


「おっかさんは、ぼくがこの列車に乗ったことを許してくれるだろうか。」カムパネルラが再び問いかけた。


ああ、ぼくのおっかさんは、あの小さな橙色の三角標の下でぼくを待っているのだ、とジョバンニは思いました。


ジョバンニは、カムパネルラを励ましました。「きっと、きみのお母さんは、何も心配することはないよ。この列車はとても安全で、最新の技術が使われているからね。」


カムパネルラが、「ぼくのお母さんが幸せになるためには何でもするよ」と言いました。

「でも、本当にお母さんが一番幸せになることって何だろう?」と悩んで泣きそうでした。


ジョバンニは「君のお母さんには何も悪いことがないよ、幸せだよ」と驚いて叫びました。


「ぼく、わからないんだけど、本当にいいことをすると、とっても幸せになれるんだよね。だから、きっとお母さんも許してくれると思うんだ。」とカムパネルラは、決意に満ちた様子で言いました。


突然、列車内が明るくなりました。目の前には、ダイヤモンドやオーロラや、その他あらゆる美しさが集まったような、きらびやかな光が流れる光景が広がりました。


その流れの中央には、後光を放つような青白いアイランドが見えました。アイランドの真ん中には、白いグランドクロスがあり、金色の円光が輝いています。それはまるで凍った北極の雲でできたかのようで、静かに永遠にそこに立っていました。


「ハルレヤ、ハルレヤ。」前からもうしろからも声が起りました。また、インターネットや人工知能を介して世界中の人々がバーチャル空間で3Dで浮かび上がりました。


ふりかえって見ると、車室の中に現れた旅人たちは、みなまっすぐに銀色のスーツのシワをなおし、自分たちが持つスマートフォンやタブレットを操作したり、人工知能搭載のウェアラブルデバイスを身につけたりして、デジタル世界とリンクしながら、それぞれの信仰に従っていました。


カムパネルラのほほは、まるで最新のLEDテクノロジーで光り輝くように美しく輝いて見えました。二人も思わず立ち上がり、その光景に感動しました。


回路を流れる電子の流れやグランドクロスは徐々に全天周ディスプレイの端に向かって移動していきました。


電子の流れの対岸も、青白く輝くプログラムのケミカルエフェクトが薄い煙と共に舞い、時折風に揺られると、その銀色の輝きが揺れ動いているように見えました。


それもほんのちょっとの間、電子の流れとリニア鉄道との間は、情報を高速で伝送するための技術であり、人工知能によって制御される可能性がある光ファイバーの列でさえぎられ、グランドクロスの島は、二度ばかり、うしろの方に見えましたが、じきもうずうっと遠く小さく、コンピューターグラフィックスの分野でよく使われる人工知能によって生成された可能性がある2Dのサムネイルのようになってしまい、また光ファイバーがざわざわ鳴って、とうとうすっかり見えなくなってしまいました。


ジョバンニのうしろには、いつから乗っていたのか、せいの高い、黒いマントを着たカトリック風の修道女が、古風なVRグラスをつけたまん円な緑の瞳を、じっとまっすぐに落して、リモートワークで参加しているかのように、ノイズのなかからまだ何か文字情報か音声情報かが、グランドクロスからリークするのを、慎み深くリサーチしているというように見えました。


旅人たちはシークエンスに従って席に戻り、リモートで参加した人々も車内からログアウトしてネットワークから消えていきました。


二人も胸いっぱいの悲しみににた、それでいて、コンテンツに満たされたような新しい気持ちを抱き、何気ないチャットの中でちがった方法で言語処理をしながらも気持ちをシェアし合いました。

次回、ジョバンニとカムパネルラは、白鳥ステーションで幻想第四次リニア鉄道を降りて、プリオシンコーストを訪ねます。

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