③英国支部へと避難と知らせに来たエージェントたち
イギリスは、現地時間で午前10時半だった。エージェントたちはワープを終え、英国支部へと着いた。そこには、ここの支部の複数の諜報機関のビルと本部ビルが立ち並んでいる。また、勤務時間帯のため、諜報機関のエージェントも職員も外には誰もいなかった。つまり、ISDC全体に危機が迫っているということに誰も気付いていなかったということである。
「英国支部の人たち、やっぱり気付いていない!」
「早く知らせないと」
「人手がたくさんあったほうがいい」
「早く知らせて、手分けして助けに行こう」
英国支部長である横部 直美に知らせるため、エージェントたちはメインビルの支部長室に行くことにした。
エージェントたちはビルのエレベーターで30階に行き、支部長室のドアの前に着いた。
「トントン。失礼します」
紀ノ松がドアをノックする。
「はい、どうぞ」
すぐに横部の返事が中から聞こえてきた。
エージェントたちが中に入る。すると、部屋には来客用のテーブルがあり、その正面の奥には、横部が座っている椅子とデスクがあった。デスクの後ろは全面ガラス張りになっていて、ビルの30階から街の風景が見下ろせるようになっている。
「元スラッシャースターボーイズのエージェントKのエージェント5、久しぶりです。ナミト ミックス スパイのエージェントの皆さんも、こんにちは」
「今はこんにちはという暇も、久しぶりと言い返す暇もありません。横部さん」
「これまでNMSPはご存じの通り、AIIBSOと手を組んでいる組織や関連ある組織に潜入して悪事ができないよう、組織の壊滅などの任務をこなしてきました」
「そして、やっと全ての組織を壊滅することができたため、今回はAIIBSO自体を壊滅させるためのミッションを遂行するはずだったんです。しかし、アダソン兄弟に行動が見破られ、ドバイで罠にかけられてしまいました。その間にAIIBSOはとうとうISDCの乗っ取り行動を始めてしまい、アダソン兄弟と一部のAIIBSOの構成員はISDCの本部を自分たちの日本支部へと変えに行ってしまいました。また、この支部以外の他の支部にいたエージェントは赤い首輪をつけられ、奴隷扱いされて、AIIBSOの支部に連れ去られてしまいました」
「ISDCで無事なのは、この英国支部だけです」
「まさか、そんなことが?」
「全支部の情報のデータを調べれば、すぐわかります」
「わかりました」
横部はそう言ってから、パソコンで調べる。すると、画面に世界地図が出てきて、世界各地の支部がある国のすべてにバツ印が出ていた。唯一バツがついてないのは、英国支部だけ。それを見た横部は、言葉を失ってしまった。
「何と……! これは……!」
「早くAIIBSOを止めないと、このままではISDCが本当に全滅してしまいます。そして、アダソン兄弟もいつかはここの支部の存在を忘れていたと気付いて、他の国にある支部と同じことをするでしょう」
「坂本長官も、NMSP職員全員も、今頃赤い首輪をつけられ、薬を注入されて操られています。本部も支配されているため、NMSPの中で無事なのはもう僕たち5人しかいません。坂本長官に代わり、僕たちとこの支部全ての諜報機関の長官で指揮して、AIIBSOから救い出したいと考えています」
「君たちに一任します」
「わかりました。これは緊急事態なので、実行します」
「ありがとうございます」
「長官全員を下の大会議室に呼ぶため、支部内放送をします。NMSPのエージェントたちは、そこで待機して下さい」
「了解しました」
エージェントたちはそう言ってから、下の大会議室へ行く。
一方で、横部は次のように支部内放送をした。
「ピンポンパンポン♪ こちら支部長室より申し上げます。緊急の会議がありますので、英国支部の長官は至急本部ビル29階の大会議室に集まって下さい。もう一度連絡します。こちら支部長室より……」
数分後、エージェントたちがいる大会議室に長官たちが続々と集まって来た。しばらくすると、紀ノ松に誰かが話しかけてきた。
「こんにちは、元エージェントKのエージェント5。久しぶりです」
話しかけてきたのは、紀ノ松が前にいたSSBの長官である岩村 和春だった。
「久しぶりと返したいところですが、今は緊急事態につき、それどころではありません。詳しくは、後で説明します」
「わかりました」
さらに数分後、英国支部の長官全員が出揃ったため、緊急会議が始まる。
エージェントたちは、さっき横部支部長に話したことを彼らにも話した。議論の末、英国支部の諜報機関全てが協力して、AIIBSOの陰謀を阻止するために団結することが決定した。作戦会議の前に、まずはISDCの現状を全て把握し、AIIBSOの今後の足取り調べから始めなければいけない。その様子は後程。