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本部からの連絡ポヨ!

 

「さて。少しは落ち着かれましたか、お嬢様」


 そう言われてハッと気付きます。いつの間にか涙は止まっておりました。ドッサリと泣いたせいか、今はどこか気分も晴れやかスッキリとしております。


「えっと……ご迷惑をおかけいたしましたの。もう大丈夫ですの、多分」


 今になって体の気怠さを感じてきてしまいましたが、つい先程まで死闘を繰り広げていたことを思い出せば仕方がありません。そうですの。私疲れてましたの。気が滅入ってしまっておりますの。

 

 メイドさんの手の下にグリグリと頭を潜り込ませますと、再び撫で撫でを再開してくださいました。この機に乗じて存分に甘んじさせていただきます。


「……いつまでもいつまでも、お嬢様は甘えんぼさんのままでいらっしゃいますね。幼い頃から全然変わっておりません」


「むー……」


「お嬢様様はとにかく人より手のかかる子で、とってもわがままで……。でも、誰よりもお優しくて、頑張り屋さんで。そんな貴女様だから、私めも毎日楽しくお仕えさせていただけているんですよ?」


「ほえー、照れますの……」


 正座なさっているその膝に頭ごと預けますと、下からはメイドさんの温かな微笑みが覗けます。目が合いますと、何故だか目隠しされてしまいました。


「はい。ご褒美タイムはここまでです。お直りくださいませ」


「……分かりましたの」


 渋々体を起こし、メイドさんの横に座り直します。何事もなかったように衣服の乱れを直し、優雅に可憐にお嬢様らしく、私もちょこんと正座いたしますの。



「……さすが、美麗の扱いに慣れてるポヨね」


「そこ。何か仰いまして?」


「うっ……何でもないポヨ」


 つべこべ言ってないでアナタもそこにお座りなさいまし。はたして饅頭に座るという概念があるかは分かりませんが。

 ポヨが私の目の前に鎮座なさいますと、その隣にプニも寄ってきます。



「では、改めて状況を整理するプニよ」


まさに待ってましたと言わんばかりのご様子です。更に一歩分、体を前に出しました。


「お前らのおかげで、野菜の怪人勢は見事に壊滅させられたプニ。見事だプニ。とんでもなく優秀な魔法少女二人組だプニ。

しかしこの町の危機が去ったかと問われたらそれは頷けないプニ。新たな勢力、つまりはフルーツ陣営の登場だプニ。奴らを退けねば真の平和はやって来ないプニ。だからこれからも戦う他ないのプニ」


「……茜さんの代わりに、ですわよね」



 今度は、茜さんと一緒に、ではなく。



「結論から言えばその通りだプニ。茜の復帰がいつになるか……それはプニらにも皆目検討が付かんプニ。今頃ヒーロー連合本部の医療スタッフが頑張っている最中だと思うプニが……。元気に戻ってくるその日まで、あの子が担っていた大部分を、美麗がやるしかないプニ」


 私の表情を読み取ったのか、プニがかなり渋めな表情でご回答なさいました。



 ええ、言われなくとも分かってますの。現実問題、私の他に誰が戦えるというのです。

 カボチャ怪人レベルの方がこの先もポンポンと出てこられたらさすがの私も困ってしまいますが、そんなことあってたまるものですか。


 ……ですが先日のカメレオン怪人や謎の白軍服のこともございます。オレンジ怪人だって底は知れません。簡単に受け流していい内容ではございませんわね。


 ただでさえ茜さんのことが心配でたまりませんのに、更に気苦労が増えてしまいますの。ストレスは健康にもお肌にもよろしくないのです。



「あの、さすがにお嬢様一人では負担が大きすぎるのではないかと……。他の方はいらっしゃらないのですか?

今から新人様を見つけるのは難しいとしても、ほら、本部から別の方をご派遣いただいたりとか、別地域の方にもご助力いただいたりとかは」


 片手を上げ、メイドさんが質問を投げかけられます。


「まぁ難しいだろうプニね。この町にプニら以上の変身装置が追加支給されるとは到底思えないプニ。

それに、ただでさえ魔法少女はレアな存在プニ。茜や美麗レベルの魔法少女が、現役で他に何人存在しているのやらプニ……」



 たしか数万人か数十万に一人、とか仰ってましたものね。



「……やっぱり前途多難ポヨね……ポ、ポヨ!?」


「どうかなさいました?」


 突然ポヨが強く震え出します。プルプルではありません。もはやブルブルと生まれたての子鹿よりもトンデモないですの。震えということは、また怪人の反応でしょうか。次から次へと容赦のない方々ですわね……!



「ききき来たポヨ! 本部からの連絡ポヨ!」


「そっちですの!? でも待ってましたわ! 茜さんは今どちらに!? ねぇ! ねぇってばですの!」


「みっ……美麗、苦しいポヨ……グイグイ掴むなポヨ……千切れちゃうポヨ……壊れちゃうポヨ……!」


「あっ……と、ごめんなさいな」


 思わず掴んで強く握り締め過ぎてしまいましたわ。御免遊ばせですの。お許しくださいまし。


 っていうかアナタ、やっぱり壊れるとかあるんですのね。最近は不思議生物的か何かだと思ってしまうこともありましたが……やはり変身装置というだけあって、モチモチの中身は精密機械の塊なんでしょうか。


コホン。こんな青色マシュマロの中身はどーでもいいのですわ! そんなことよりも茜さんの所在です! 現在地です! 安否の方が大事なのですッ!

 期待に満ちた目でポヨを見つめます。



「茜は……隣町の大学附属病院、その最上階に搬送されたらしいポヨ。けれど容体は……その」


「なら早速お見舞いに行きましょう!」


「それでは私めは車を出してまいりますね」


「お前ら少しは人の話を聞くポヨ!」



 ふっふーん、居場所さえ分かればこっちのものですの。私の顔をお見せしたらきっと飛び起きてくださいますわよね!? そうですわよね!?

 あ、でも絶対安静にしていただかなくては困りますから、今日は元気になっていただくだけにしていただきましょう。そうしましょう。


 玄関先からは早速自家用リムジンのエンジン音が聞こえてきます。お仕事がお早いですの。準備万端のようですわね。



「ほら、プニポヨ! そんなとこ座ってないで向かいますわよ!」


「さっきまでボロボロ泣きじゃくってた奴がよく言うプニ……」


「同感ポヨ……」


「何か仰いまして!?」


「「……何でもないプニ(ポヨ)」」



 愚痴垂れるマシュマロたちを片手で鷲掴み、立ち上がり勢いよく玄関扉をくぐります。ついでに戸締りもしっかりいたしておきますの。

 後腐れなく、後ろ髪引かれる必要もなく、いざ件の大学附属病院とやらに出発ですの!

 

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