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ん? 今、何でもと

 

 ええと、少々整理いたしましょう。変身についてはなんとなくですが分かりました。小暮さんが類稀なる才能をお持ちで、魔法少女への変身が可能で、その力を存分に発揮できる、と。そういうことですのね。



「となりますとチミっこいあなた方……お名前何と仰いましたっけ? 自立型なんちゃらさん方は何の為に活動してるんですの?」


「自立AI搭載型の最新式怪人撃退用個人変身装置だプニ。プニらは正義のヒーロー連合に開発されたプニ。ヒーロー連合は襲い来る怪人たちに対抗する為の秘密組織だプニ。

プニらの役割は主に人材のスカウト、教育、補佐の三つだプニ。僕らは変身装置でありながら日々現地に赴いて優秀な人材を探しつつ、襲い来る怪人たちを撃退したりやっつけたりする正義の変身ヒロイン、通称〝魔法少女〟を発掘、そして補佐して、その子が一人前になるまでマンツーマンでサポートする教育のエキスパートプニよ」


「???」


「はぁー。まったく理解力がない女プニね……」


 むむ、そっちの話が長いのがいけないんですの。要点を摘んでくださいまし。いちいち腹立つ物言いをしてくる桃色大福マカロンもどきですわね。

 とっ捕まえて細切れにしてオープンでこんがり焼いてしまおうかしら。我が家のメイドさんに頼めばそんなのきっと朝飯前ですの。


 キィーッと睨み合いをしていたところ、



「えっと、それじゃ今度は私が補足するね」


 小暮さんが割り込んできてくださいました。

 さすがは空気の読める女ですの。クラスの人気者ですの。こんな体プニプニの頭カチカチ大福とは違いますのー。


「よろしくお願いいたしますわ」


「うん。えっとね。私は小難しいのは好きじゃないから装置とかいう堅苦しい呼び方じゃなくて、もっと単純にプニとかポヨって呼んでるよ。桃色がプニ、そして青色の方がポヨ」


「プニだプニ」


「ポヨだポヨ」


 右肩、左肩の順にジャンプして応えております。

 確かにそっちの方が呼びやすいですわよね。語尾にも呼び名と同じ言葉が付いてるようですし。1号機2号機よりもずっと覚えやすそうですの。


 小暮さんが続けます。


「んで、ヒーロー連合ってのは正義の味方なんだって。逆に怪人ってのは悪い奴ら!

なんだかよく分からないんだけど、どっからか邪悪な怪人たちが湧いてきて、この街に対して誘拐とか破壊活動とか、色々悪さをしてくるんだって。放っておくと世の中が大変なことになるらしいから誰かが止めなきゃなんだけど、その誰かってのがどうやら適合者の私らしくて、それでこの子達の力を借りて、頑張って撃退してる感じ! って言えば伝わるかな」



 ふむふむ。まるでお子様向けのアニメの冒頭みたいな簡易な説明ですが、内容が単純なだけあって、置かれている状況が手に取る様に分かります。


 ……そこの桃色、誰の知能レベルがお子様並ですって? 言葉にしなくたって視線で分かりますのよ。少し黙っていてくださいな。


 睨みを返しつつ再び小暮さんに向き直ります。



「私としてもこの街を変な奴らに荒らされるのはあんまりイイ気持ちしないし、私自らの手でこの街を守れるならむしろ本望だし……ってなわけで、もう半年くらい前になるのかな?

この子らにスカウトされて、その後色々技とかコツとかも伝授されて、出現の度に撃退に向かってと、そんなこんなで今日に至るまで、こっそり魔法少女プリズムレッドとして悪と戦い続けてます。えへへ」


 頬を少し赤くしながら、はにかみ笑いと共にきれいに話を締めてくださいました。分かりやすいご説明をどうもありがとうございますの。


 変身名決まってるんですのね。今日は戦う前に名乗っておりませんでしたから特に無いのかと思ってましたわ。



「ふむふむ。魔法少女……それに怪人たちを退治する、ヒーロー連合、ですか……」


「私もたまーに指令が飛んでくるだけだからよくは分かってないんだけど、この世界を秘密裏に守ってる正義の組織らしいよ。私みたいなスカウトされた魔法少女とか、あとはヒーローさんとか、色んな地域からの立志者や大企業のバックアップで形成されてる極秘の組織だとか何とか」


「バカには言っても分からん事プニよ」


「プニちゃん。一々そういうこと言わないのっ」


「…………ま、まぁ茜が打ち明けるんだから、このちんちくりんも少しは信用できる奴なんだと寛大な装置心の片隅で思ってやるプニ。むしろプニに感謝してもらいたいくらいだプニ。

蒼井美麗とやら。知ってしまった以上はお前にも色々と協力してもらうプニよ」


「それは別に……」


 詳しい話を教えてくれと言ったのは私の方ですからね。あらあら大変なことでご愁傷ですわね、それでは私はこれにて、とか無責任なことを言うつもりは最初からありませんの。


 私は転校初日からお友達になってくれた小暮さんのお力に少しでもなりたいと行動しているまでなのです。



「私にできることであれば、何でもいたしますの」


「……ん? 今、何でもと言ったプニね?

……ふん。まぁせいぜいこき使ってやるプニ」


 そう言うと、桃色はぷいと体を背け首の後ろに隠れてしまいました。代わりに青色がその体を持ち上げます。


「とりあえず今日聞いた話は口外禁止ポヨよ。どこの誰が聞いてるか分からん世の中だポヨ。ポヨらとしてもリスクは最小限に抑えたいんだポヨ。今回は茜に免じての特例ポヨ。分かってくれポヨ」


「かしこまりましたわ」


「いい返事だポヨ」


 こちらからペコリと一礼すると、左肩の青色モチモチはぴょんこぴょんこと跳ねて反応してくださいました。それを下目に見る小暮さんもニッコリと笑っていらっしゃいます。



「今日の戦いを見てもらった感じ、この街の敵さんってそこまで強くはないからさ、正直そっちに関してはあんまり困ってないんだ。

けどさほら、アイツらって時間も場所も気にせず出てくるわけじゃん? だから蒼井さんには、私が授業中にどーしても抜け出さなきゃいけないときとか、別の誰かに怪しまれちゃったときとか、そういうピンチなときにしれーっとフォローとかしてもらえたら嬉しいんだ。

あと、欲を言えば授業中分かんないときとか、出された難しい宿題とかを手伝ってもらえると! 大変助かります! ……どっちかっていうとこっちの方が本音だったり」


 顔の前で手を合わせ、バツの悪そうな顔でウィンクを向けてきます。なんだ、そんなことですの。


「うふふ、お安い御用ですの」


「やった! 蒼井さんありがとっ!」


「きゃあっ」


 半ば飛びつかれるような形でハグされてしまいます。や、やめてくださいまし。こういうスキンシップは慣れてませんの。照れてしまいますの。


 ……それと桃色モチモチ。どさくさに紛れて私の頬っぺたをバシバシと叩くなですの。別に痛みとかはありませんが限りなく不快ですの。くぅ。つくづくコイツとは馬が合う気がいたしません。



 崩れてしまった体勢を戻すと、ハグから解放してくださいました。改めて正面に向き合います。

 程なくしてお互いに安堵のため息をつきました。その様子に再び微笑みが溢れてしまいます。


 うふふ。頼りにされるのって案外悪くない気持ちですのね。


 なるほど、フォローですか。

 確かに授業中に抜け出すのは容易ではありませんからね。たまーになら支障はないのでしょうが、頻繁に起こってしまってはさすがに怪しまれてしまうでしょうし。その居ない間の勉強も止まってしまいます。


 ああ、前の学校でしっかり勉強していてよかったです。時間と要望さえあれば勉強会だって何だって、いくらでも開催して差し上げる所存でおりますの。


 彼女が彼女の手でこの街を守りたいと仰るのなら、私は私の出来る範囲で目一杯お手伝いをさせていただきます。

 たったの一週間のお付き合いでも、貴女からは既に沢山のモノをいただいてしまっているのです。これを機に少しでもお返しさせていただければと思ってますの。



「まだまだなんか分からないことがあれば、いっくらでも質問しちゃっていいからね」


「企業秘密に触れない範囲にはなってしまうポヨが、あらかじめ協力者に情報共有しておけば後々の面倒を避けられるかもしれんのポヨ。今のうちに何でも聞いておくといいポヨ」


「それでしたら……」




 こうして、女子2人と機械の2匹?による質疑応答の繰り返しによって、少しずつ夜は更けていったのです……。

 とはいってもあんまりに遅くはならないようにこちらも配慮はいたしましたが。


 どちらかと言うと時間も言葉も考えない桃色モチモチのせいで余計に時間が掛かってしまったように思えますの。まったく……。




 しばらく話し込んだのち、ひとまず今日はお開きということで、メイドさんにお願いして小暮さんをお家にお送りしていただく運びとなりました。


 メイドさんが戻られると、何やら徐ろに赤飯を炊き始めたので何事かと尋ねてみましたが、どうやら私の〝お友達迎宅記念日〟とのことらしく。

 思わずスリッパで叩いてやりたくなりましたが、さすがにはしたないと思いましたので止めました。



 ちなみにメイドさんお手製のお赤飯はお豆の甘味とご飯の塩っ気が絶妙でとても美味かったですの。出来ればまた食べたいですわね。

 

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