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実に強そうでカッコいいではありませんのッ!

 

 生成された六つの黒泥塊が私を軸にしてクルクルと回っております。フラフープというよりは体操バトンのリボンに近い挙動でしょうか。


 手に持った杖を真上に掲げて差し上げますと、その方向に向かってブーメランのように飛んでいっては、またジャイロ回転しながら戻ってくるのでございますっ!


 重力に逆らったヨーヨーみたいな感じですの。

 ぼよんぼよんと黒泥が空中で絶えず形を変えております。



「ぃよぉっし。我ながら今日の絶好調な制御具合ですわね」


 私の手にもしっかりと馴染んでいるようです。

 魔装娼女のチカラをほぼ完全に掌握しきっていると言っても過言ではありませんでしょうね。


 改めて大地を踏み締めて立って差し上げます。そうして威厳ある佇まいで複製さんをジリジリと威圧いたしますの。



 それもこれも、私が強くなれたからでしょうね。


 ポヨが魔装娼女の装備として再調整されてくれたおかげか、私は以前よりもずっと自由かつ繊細に黒泥塊を扱えるようになりました。


 今ではもう複数の塊を同時に別々に動かせるほどになったくらいですの。


 ヤればデキる女、マルチタスカー美麗の誕生です。


 もし黒泥塊の一つを攻撃用に固定したとしても、残りの五つを全て防御に回せるんですもの。安心感がパないのでございます。


 つまりはそのときの気分やお相手に合わせて、作戦をより柔軟に選べるようになったということですのっ。


 更に言えば身体の守りはポヨが担当してくださるのですから、私としてはむしろ、攻撃と回避に専念できるようになったくらいです。


 ここまで言えば少しは最適化の具合もお分かりになれましたでしょう? 私に抜かりはないってことですの。


 最高最強の魔法少女を倒すのはこの私、至高かつ艶麗なる魔装娼女イービルブルーがその務めを果たしますのッ!



 ちなみに言いますと。


 現状の黒泥布陣は攻撃1の防御5、いわゆる〝いのちを大事に〟作戦の基本となる体勢です。


 警戒範囲に至っては前後左右に更に上方までをプラスした、まさに全方位に対して抜かりなき絶対防壁を展開するイージスの盾(・・・・・・)と呼ぶべき黄金布陣なのでございますッ!


 もちろんのこと命名は私自らが行いましたの。


 だってほら、Aegis(イージス)って響き、実に強そうでカッコいいではありませんのッ!


 ちなみに意気揚々と総統さんやカメレオンさんにお伝えしてみたところ、大方の予想と反してわんぱくなお子ちゃまを見るような慈悲深い目で見られてしまいましたの。


 二人とも珍しく何も言わずにただ頭を撫でてくださいました。それはもう、どうかお前はそのまま大きく育ってくれと言わんばかりの優しげな手付きでしたの。


 まったくもう。皆して私を子供扱いしなさって。


 このカッコよさが分からないだなんてガッカリですの。私の中の少年心がイジけてしまいましてよ。



 牽制がてら身体のすぐそばで黒泥塊をぎゅるんぎゅるんと高速回転させてみたり、更に天高く放っては着地スレスレで寸止めしてみたりと制御具合を探ってみましたが、今が一番かと思えるくらいにバッチリ扱いきれておりますの。


 これなら最終調整もバッチリな感じだったのでしょうね。ポヨにも研究開発班の皆さまにも、改めて感謝の念を送っておきませんと。



 というわけで再三に杖と黒泥を構え直します。

 心なしか前傾姿勢になっておきますの。



「ポヨ、準備はよろしくて? スタートからトップスピードを出しますの。もしものときのガードは任せましてよ」


『了解ポヨ。美麗は美麗の好きに動くといいポヨよ。全部ビタに合わせてやるから安心しろポヨ』


「ふっふんっ。さすがは私のポヨですの。頼りにしてますのっ!」


  胸の宝石ブローチをぎゅっと握り締めながら、心の中でポヨの会話(・・)いたします。


 正確には私がボソリと呟くと、頭の中でその応答が響き返ってくるような感じでしょうか。


 コチラは魔装娼女の念話機能の一つですの。


 今はポヨとダイレクトに繋がっているような状態ゆえに、彼の心の思いも具に聞こえてくるのでございます。


 別に宝石ブローチ化しているポヨとも音声的な会話は可能なのですが、それだけに頼っていては、いざというときに意思疎通が遅れてしまいますからね。


 お手紙を出した後もギリギリまで二人で色々と特訓しておりましたの。数えきれないほどの苦難を経て、今はもう阿吽の呼吸の極意を身に付けているのです。


 余計なわだかまりは思考の邪魔にしかなりません。


 どうせ一緒に戦うなら開幕から思うことも願うことも全部を曝け出しておいて、お互いの心の壁を取っ払っておいたほうが何かとスムーズにいくことが分かったのでございます。


 今更私たちの間に隠すことなんて毛先ほどもないですし、アングラな性癖も嗜好も全部筒抜けですの。


 それはもちろん、試し始めの頃はドン引きされてしまいましたけれども……。


 今ではもう、全部笑い話にしてしまえるのです。


 ですから今日もどうぞ私の思考を自由に読み取って、存分にサポートに徹してくださいまし。


 本気で危ないときのガードはお頼みしましてよ。


 乙女の柔肌を傷付けないようにお願いいたしますの。

 ただでさえ愛されわがままボディに女神のような顔と態度を持っているのですからね。まさに国宝級ですの。



 余裕ある微笑みを複製さんに見せて差し上げます。


 この真・黒泥塊のチカラがあればアナタの〝消滅の光〟も防ぐことができましょう。


 あくまで完全ガードとまではいきませんけれどもっ。

 否応なしに消し飛ばされてしまいますけれどもっ。


 ほぼ確実に直撃を防げるだけ何千倍もマシですの。


 消されてしまったらまた生成し直せばいいだけなのですし。今回は攻撃に専念できるだけ、戦力アップは間違いないのですしッ!



「ってなわけで早速まいりますわよッ! ゼロ接近してしまえばッ! そう簡単には消滅の光を撃てるはずがありませんのッ!」


「ちぃっ!」


 大地を蹴って、地を縫うようにして駆け抜けます。

 単なる直線的なの動きではダメですのッ!


 平手を向けられた次の瞬間には全てを無に帰す消滅の光が飛んできてしまうのですッ!


 あくまで照準を定められないようにジグザグに、時折黒泥塊による目隠し壁なんかも駆使して、一気に彼女との距離を詰めてまいります。


 さっきは油断して肉薄からの首絞めを許してしまいましたからねっ!


 まずはそのお返しをさせていただければと思いますの。


 近距離でその横っ腹に〝スーパースペシャル乙女パンチ〟をお見舞いして差し上げましょうッ!



「んっふぅっ! はぁぁあっ!!!」


 固いアスファルトを抉ってしまうのではないかと思うくらいに力強く足を踏み締めて、彼女との距離を更に詰めてまいりますのっ!!

 

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