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絶対恨みっこなしの真剣勝負ですのッ!

 

 スタタとカメレオンさんに駆け寄ります。

 できる限りの上目遣いで見上げて差し上げます。



「というわけで久しぶりに変身いたしましたの。私、天下無双の魔装娼女イービルブルーですの」


「おう。何がというわけなのかは知らネェが、そっちの話は終わったンかよ?」


「ええ。詳しくはカクカク飛車飛車チー鳴いてロンですの。私の変身装置をパワーアップしていただいたらしく、どうせなら実践にて確認してみたく、ですの


「で、俺に相手して欲しいってか」


「お話が早くて助かりますのー」


 首がすっぽ抜けてしまうくらいにウンウンと頷かせていただきます。もはや私たちの間に余計な言葉は必要ありません。


 キラッキラな期待の目を向けさせていただきます。


 トドメのごま擦りとして、手に持った杖でお腹の辺りをスリスリとして差し上げますの。


 こんな美人が媚を売って差し上げてるんですのよ?


 何も聞かずに何も言わずに、素直に黙って聞いてくださるのがデキる殿方というモノではございませんでして?


 んもう。テコでもタコでもビクともいたしません。

 最後のダメ押しをしておきましょうか。



「今生の依頼ですのー。後生一生のお願いですのー。全力出してお試しできるお相手なんてっ、それこそカメレオンさんくらいしか居ないんですものーっ」


「……ハァ。基本は素手で、尚且つかなり手加減してやってくれってのが閣下からのオーダーなンだがナ。

お前がガチのフル装備で向かってくるなら、俺だってそこまでの余裕は見せられネェわけで」


「あら、珍しく弱気な……いえ、むしろその逆? カメレオンさんの本気が見れるんですのッ!?」


「お前がソレ相応のチカラをぶつけてくるってンならナ」


 ほっほーう、それは腕が鳴ってしまいますわね。


 まさか総統さんから手加減の指示があったとは。

 私も舐められてしまったものですの。


 ここは全力をお見せしなければ失礼にあたりましょう。



「ふっふんっ。ご安心くださいまし。欲しいのならこの腕の一本や二本、くれて差し上げる覚悟でイきますの。何をしたってされたってッ! 絶対恨みっこなしの真剣勝負ですのッ!」


「バーカ。ンなことしたら俺が閣下に何言われるか」


 コツン、とデコピンされてしまいます。

 鋭い爪が地味ぃに突き刺さりましたの。


 血は出てないようです。痛かったですけれども。



 てへぺろりと適当に誤魔化しておきます。

 それにしても、カメレオンさんの本気、ですか。


 地下施設にお世話になり始めてからは目にしたことはございませんわね。


 せいぜい現役時代に垣間見れたかどうかでしょう。


 かつて私が幼気で無知な魔法少女だった頃、対峙したカメレオン怪人さんは手足だけでなく、長くてしなやかで鋭い舌も武器の一つとして扱っていたかと記憶しております。


 その他にも透明化だったり忍び足だったり全方位索敵だったりと、本当はカメレオンとして(素体そのもの)の固有能力をたくさんお持ちのはずです。


 私との鍛練ではあえてご封印なさっていたみたいなんですのよね。


 あくまで固有の能力は対魔法少女戦にはあまり関係ないチカラですし、自由に使われてしまっては、それこそ昨日までの私では手も足も出せなかったはずですし。


 それにレベルが違いすぎては鍛練にもなりませんの。


 ですが、今日このときからは違いますのっ!

 フルバーストが可能な蒼井美麗になったのですっ!


 何が扱えるようになったかはこれから実体験として確かめたく思いますの。


 ですからどうか、お付き合いくださいまし。



「どこまで本気を出すかはカメレオンさんの采配にお任せいたしますの。気絶くらいならホントにおっけーですゆえにッ! どうぞお好きなだけ私を一捻りしてくださいましッ!」


 今度は至極真面目に、カメレオンさんの目を見て訴えかけて差し上げます。


 この本気の模擬戦にどれほどの意味があるか、なんてのは正直どうでもいいのです。


 格上のカメレオンさんでも、思わず本気にならざるを得ない状況に引っ張り出すことができれば、更には100%の彼といい勝負を繰り広げることができればっ!


 私も少しは自身に自信が持てるんですの。


 そうして一つずつ積み重ねていった成功体験が、いずれは複製さんを圧倒できるだけの精神&技術獲得に繋がるんですのッ!

 


「ッたく。コレだけは釘を刺しておくが、〝浄化の光〟系の攻撃はナシだからナ!? あればっかりは俺らにゃどーしようもネェんだ。受けたら受けただけダメージになっちまう」


 珍しく引き気味の顔をなさいました。


「ふぅむ? それなら心配ご無用ですの。魔法少女の姿ならともかく、魔装娼女の姿では白の光は扱えませんでしてよ?」


 ですから代わりの黒泥のチカラがあるのです。


 全てを包み込む冷たくて重い、まさに秘密結社の奥の手を体現したような負のチカラの象徴ですの。


 背徳感が晩御飯のおかずにもなりましてよっ。



「どうだか。よく分からネェが、今のお前からはビッミョーに正の成分(・・・・)も感じてンだよ。俺の第六感がグワングワンとアラートを鳴らしてやがる。明らかに今までのコスプレ(ソレ)とはワケがちげェ」


「はぇー……やっぱり分かる人には分かるんですのねぇ……私にはテンでさっぱりですのに」


 私も早く分かる側の立場になりたいですの。


 少しだけ訝しむような目を向けられてしまいましたが、別に気にするようなことでもございません。



「おっけ、であれば分かりましたの。ちょっとだけ待っていてくださいまし。すぐに確認いたしますから」


 くるっと背中を向けて、胸元の宝石化したポヨに問いかけて差し上げます。



「……とのことなんですけども。もちろんのこと私の放つ攻撃に勝手に浄化の光が混じったり、まさか暴発したりなんてあり得ませんわよね?」


「安心しろポヨ。その辺は全部ポヨの制御下にあるポヨ。それに美麗とポヨの双方の意思がないとそもそも出せないシロモノポヨ。断言できるポヨよ」


「おっけですの。大丈夫そうですわね」


 私がカメレオンさんを浄化してしまおうだなんて、この星が2万回ほど回転したってあり得ませんし、例え流れ星に3回唱えても叶わせませんの。


 数えきれないほどの恩を返すまでは、カメレオンさんに消えてもらっては困りますの。


 というわけで再三に踵を返します。

 スンと落ち着いて目を見て差し上げます。


 

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