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普段から生温かくてドロドロとしたモノを取り扱っておりますゆえに

 

 つぶらな二つ瞳がいつも以上にドヤドヤしているように見えてしまいました。


 はいはい。分っかりましたの。

 素直に聞いて差し上げますから、どうぞポヨのお好きにお話しくださいまし。


 視線で続きを促して差し上げます。



「いい心掛けポヨ。さえっへんポヨ。何を隠そう、このポヨこそがその新装備なんポヨッ! 厳密には内部パッチをアップデートしてもらっただけポヨけどもッ!

要するにっポヨを媒介にしてっ魔法少女にも魔装娼女にも、どちらにも変身できるようになったってことポヨッ!」


「……ふぅむ? えっと、それって新装備って言っちゃっていいんですの? 実質あんまり変わっていない気がするんですけれども」


 かつてのプリズムブルーにもなれるのは多少メリットがあるとしても、メインはやっぱりイービルブルーのほうなんですの。


 となれば今と大して変わっておりませんでしてよ?


 複製さんとの戦闘で浪費してしまった黒泥も、既に補充し終わっておりますし。


 気力もやる気もレギュラー満タン状態です。

 いつでも全力を出せるように努めておりますの。


 言ってしまえばただポヨが側にいるだけなのでは?


 新装備ってのはほら、もっとこう……青白衣装(プリズム)でも青黒衣装(イービル)でもない、第三の別衣装に変身できるようになったとか、それこそ出力数万倍の超絶ド派手なビーム砲を放てる武器を生成できるようになっただとか。


 そういうスペシャルかつゴージャスな恩恵を得られるモノだと思い込んでましたの。


 既存の衣装への変身だけではあんまり〝新〟感がないと思ってしまうんですけれども……。



「唇尖らせてるとこ悪いポヨが、いいか美麗。最強最高の魔法少女に打ち勝つためには、何よりもまず対策のスピード感が大事なのポヨ。第一に並び立つことを最優先するポヨ。それから超えることを考えるのポヨ」


「……んまぁ、仰ることも分からないでもないですの。つまりは今手元に有るものを最大限に活用して、更なる向上に励め、と?」


「その通りポヨ。どれくらい便利で凄くなったかは、実際に使って試してみればいいと思うポヨよ」


「……それも確かに、ですわね」


 私も食わず嫌いは良くないと思いますの。


 それにポヨの再変身装置化もまったく意味がないわけではないと思えるのです。


 以前、赤水饅頭のプニからも告げられましたものね。


 私の適合率が上がらないのは〝独りで戦うことしかできないから説〟に関連するお話ですの。


 プリズムレッドに変身した茜が最近特に調子がよろしいのは、変身装置であるプニが多方面から戦闘をサポートをしていただいているからなのだと、そんなことを仰っていたはずです。


 もしそれが本当なのであれば、ポヨが今の私のサポートに回ってくださればイービルブルーの戦闘にも多少の余裕が生まれてくるはず……それが適合率の向上にも直結してくるはず……!



「おっけですの。分かりましたの。ガチめに訝しむのは一通り試してみてからにいたしましょうか。

それでは早速、使用感を試してみてもよろしくて?」


「もちろんポヨ。変身文句やポーズ自体はあえて変えてないポヨ。ポヨを握りしめて、いつものーな感じで頼むポヨね」


「ういですのっ!」


 改めてポヨと睨めっこして、お互いに頷き合います。意思疎通は出来てますの。多少の不安こそあれど、疑心に囚われて集中できないほどではありません。


 それよりはずっと期待のほうが大きいのです。


 茜とポヨがこれだけ嬉しそうにしていらっしゃるのです。効果がないわけありませんのっ。


 それでは、いざまいりますわよ!

 懐かしの魔法少女化はまた今度にいたしますの。


 今は慣れ親しんだ偽装変身側を試してみましょうか。



 ポヨを手のひらに収めて優しく握りしめ、ゆっくりと拳を胸の前に掲げます。


 ふーっと長めに息を吐き、静かに目を瞑りますの。



――そして。



「……偽装 - disguise - 」


 いつもの変身文句を呟かせていただきました。


 すると、どうでしょう……!?


 みるみるうちにポヨがドロリと溶け出していったではありませんこと!?


 水饅頭が水飴みたいになっちゃいましたの。


 けれども床に垂れ落ちて消え失せてしまうわけではないらしいのです。


 むしろその逆、トロけていくうちに何倍にも何十倍にも体積を増大していって、私の腕を、そして終いには身体をすっぽりと覆い包んでしまったのでございますっ!



「ふぇ……この感触、まるで黒泥みたいですの……」


 私の身体の表面で、何やらもむもむとひたすらに蠢いていらっしゃるのが分かります。


 まるで水の中にいるような、けれども決して息苦しくはない――誠に奇妙奇天烈な感じなのです。


 ついでにこっそりと薄目を開けて確認してみました。


 液状化したポヨの身体がほんのりと黒ずんでおりましたの。それこそいつもの水饅頭と、私の愛用の黒泥をちょうど二で割ったくらいの濁り方をしているのです。


 ああ、そうですの。今思い出しましたの。


 記憶の邂逅のために使用した洗脳補助カプセルもこんなドロドロ具合でしたわよね。


 私、半液体状のモノに包まれることに慣れすぎてしまっているのでしょうか。


 まぁ確かに? 私の慰安要員としてのお仕事柄、普段から生温かくてドロドロとしたモノを取り扱っておりますゆえに、それこそこういったぬるぬる感覚にはあまり抵抗はないのですけれどもっ!



 どうやら今は魔装娼女の衣装を形成している真っ最中のようです。


 初回だからでしょうか。

 随分とのんびりとした変身ですわね。


 若干の手持ち無沙汰感が否めませんのー。



『……あー……美麗……聞こえるポヨか?』



 ふぅむ? え、あ、私、今話しかけられまして?


 粘体繭の中で膝を抱えるようにして待っておりますと、突然にポヨのお声がこの頭の中に直接響いてきたのでございます。


 以前外出の際に利用していた遠距離通信のお声のような……いえ、どちらかと言えばコレは、私の心にじんわりと広がって聞こえてきているといいますか。


 それこそ、私の実家で初めてポヨと念話をしたときのような……?



『よかったポヨ。どうやら聞こえているみたいポヨね。ポヨもお前の考えが手に取るように分かるポヨよ』


 むむっ。それはそれで人権侵害甚だしいですの。

 プライバシーもへったくれもありません。


 といいますか手に取るようにって、そう仰るアナタには手がないではございませんの。基本的にぷにっぷにでスベッスベしているだけの軟性機械さんなんですし。


 まさかこの何でもない冗談なんかも全部拾われちゃってますの?


 ……ほんの少しだけ恥ずかしいですわね。



『細っかい比喩的表現なんてどーでもいいポヨよ。今は説明と実践のほうに重きを置きたいポヨが、いいポヨか?』


 ええ、全然構いませんの。

 むしろどうぞお続けなさいまし。


 声に出さなくても意思疎通できるって便利ですわね。

 ちょっとだけ見直しましたの。


 それでそれで?


 私は今からどうしたらいいんですのっ?

 

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