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もちろん最新鋭で最高性能のッ!

  

 顔を見せた茜に一瞬気を取られてしまい、生じた隙をカメレオンさんに狙われてしまいました。


 ですがこれも私の作戦でしたの。


 狡猾かつ確実なカメレオンさんのことです。

 きっと狙ってきてくださると信じておりましたから。


 何ヶ月も鍛練を重ねていれば、さすがのおっとりノーセンスな私だって、自分の苦手箇所や彼の戦法にも気が付き始めておりましてよ。


 事前に予測できてしまえば対策だって打てるのでございますッ!


 そんなこんなで完璧に防いで差し上げましたの。



「ふっ。全てが止まって見えましたわね。あ、いえ、さすがに誇張ですの虚言ですのっ。ちょっと言ってみたかっただけですのっ。

ホントは結構ギリギリでしたけれども。腕がプルップルしちゃってますけれどもっ!」


 ドヤドヤとしている間に次なる一手が飛んできそうに思えてきてしまいました。


 咄嗟に必死に弁明して事なきを得ておきます。


 さすがの私でも連続防御はキッツいですのよっ!

 極限集中は体力的にも結構限界に近いんですのっ!


 ほ、ほら。茜も訪ねてきてくださっているのです。

 この辺で一旦休憩にいたしませんこと!?


 それに朝から体を動かしっぱなしなんでしてよ!?


 わざとらしくゼーハーして疲労感を演出して差し上げます。

 そのままお顔をチラチラり。様子を伺いますの。



「……フン。まぁいい。やりゃあ出来ンじゃねえカ。毎日そンくらい動いてくれりゃ、俺も少しはやり甲斐が出てくるってモンだゼ」



 ほぁっ!? 今満足そうに笑われましたわねっ!?

 ふふふ、カメレオンさんもそう思われまして!?


 手前味噌ながら私も同じことを思っておりましたの。


 最後は逃げさせていただきましたが、この一連の回避動作、自分でも惚れ惚れしてしまうほど完璧に遂行して差し上げられたと自負しております。


 急所狙いの突きを両手を駆使していなして、続いて死角から襲いくる蹴りを身を反らしてかわして、最後には軽ぅくパッパと手払いして差し上げられるほどの余裕をお見せできて……!


 ただでさえ悪の秘密結社の上級幹部(カメレオン)さん直々に毎日血反吐を吐くほど扱き上げていただいているんですもの。成長してないほうがおかしいですの。


 この程度、ブランチ前にもなれましてよ。

 文字通り数段レベルアップできているのです。



「ふっふんっ。ふふっ。……ふぅ、ですの」



 それでも、適合率自体は未だにミリ単位も変わってはおりません。


 あれからずっと98%のままですの。


 上がっているのは私の身体能力と戦闘技能のほうなんでしょうね。全く成長していないよりは何倍もマシでしょうけれども。


 できることが増える分だけ、私の華麗なる戦術にも更なる彩りを加えることができるってことなのですから。


 単純な適合率ではなく、私の総合力を上げるという点においても、この鍛練には大きな意味と目的があると分かっておりますっ!


 無意味なときを過ごしているわけではございませんのっ!



「ま、今のでやっと及第点ってところだナ。ンだがお前の戦い方にはまだ無駄が多すぎる。そんなンじゃいつまで経っても長期戦はこなせネェゼ。

いずれ先にスタミナが尽きてジリ貧になるだけだ。もっと省エネしろ、省エネェ」


「むぅ。分かってますの! もっと精進いたしますのッ! 私だって今のままで満足するつもりはございませんのッ!」


 得意な耐久戦に持ち込むには、私の体力面の強化が必須なのでございます。


 自分自身の課題は分かってますの。持久力ですの。


 ですからこれからもどうかお付き合いくださいまし。

 基本ツンデレなカメレオン怪人さんっ!



「……素直なヤツぁ嫌いじゃネェ。ンじゃ一旦休憩だ。ほれ、赤ガキの相手してこい」


「ふっふん! ご配慮感謝いたしましてよっ!」


 手をぴらぴらとなさるカメレオンさんにペコリと一礼して、プレイルームの入り口に待機していらっしゃる茜の元に駆け寄ります。


 あらあら? 何だかいつも以上にニコニコなさっていらっしゃいますわね。



「今日はどうなさいましたの?」


「うんっ! それがねそれがね!」


 ご機嫌なだけではありません。

 どうやらかなりご興奮なさっているご様子です。


 茜がここまでハイテンションになられるとは、さぞ素敵なご報告なのでしょう。私もついニコニコしてしまいながら首を傾げて差し上げます。



「えっとね! ついに完成したんだって!」


「ふぅむ? 完成? 何がですの?」


「何って美麗ちゃんの変身装置がっ! だよっ!

もちろん最新鋭で最高性能のッ! 完全無欠の新装備ッ!」


「ほへぇー。なるほど新装備……新装備……」


 ほほう。新たな変身装置ですか。

 まったく技術の進歩とは目覚ましいモノですわね。


 初めて魔法少女の変身装置を手にしたのがほぼほぼ五年前、それから地下施設にお世話になり始めてから四年が経ち、魔装娼女のブローチをいただいてからはそろそろ一年にもなりましょうか。


 思い返せば私もいろんな経験をしてきたと思いますが、ここに来てようやく新装備とはねぇ……へっ、新装備!?



「ようやく新装備のお披露目なんですの!?」


「えっへへそうだよっ!」


「――ふっふっふっ。長らく待たせたポヨね。情報提供も無事に終わったポヨ……。そんで美麗をビックリさせようと思ってずっと秘密にしていたポヨよっ!」


「おわっぷぇっ!?」


 声が聞こえてきたかと思いきや、茜の髪の中からポヨが飛び出してまいりましたの。

 

 私のほうに向かってまっすぐにジャンプしなさいます。ホントにギリギリのところで両手キャッチが間に合いましたの。


 ぎゅむっと半分潰れてしまったポヨに、ほんの少しだけ切羽詰まった感じでもう一度問いかけて差し上げます。



「それで!? その新装備とやらはどこにあるんでして? またご主人様のところに向かえばよろしいんですの?」


「無論、既にここにあるポヨよ!」


「へっ?」


 私の手のひら拘束を振り切って、真上にぽよんと勢いよく飛び跳ねなさいます。


 既にここにあるって……どういう意味ですの?


 もう一度首を傾げさせていただきます。

 


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