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これで一件落着、かな?

 

 改めてポヨと向き合い直します。

 私の目線に手の高さを合わせて差し上げますの。


 そして。

 咳払いをお一つだけ零したのち。



「あの、私も貴方にごめんなさい(・・・・・・)しなければいけませんの」


「……美麗が、ポヨか?」


「ええ。貴方をこの手で握り潰してしまったあの日からずっと……私のトキも止まってしまっていたんだと思います。胸にポッカリと穴が空いておりました。モヤモヤしたまま過ごす日々は……もう、沢山なんですの」


 この胸に巣食うドス黒い感情など、金輪際願い下げですの。私は私として胸を張って生きていきたいのです。


 一時の後悔のためにその後の人生を無駄にするだなんて、そんな無駄な時間の使い方、許してたまるものですか。


 言葉を交わして解決できるのであればそれが一番ですの。


 すぐには分かり合えないのであれば、ときには喧嘩をしてでも最悪の展開を回避いたしますの。


 既に覚悟はできているのです。

 前に進むためなら何だってやりますの。


 今この告白だって同じことですのっ!



「……ぅおっほん。ですから今後はちゃんと思ってること全部伝え合いましょう。不安も不満も包み隠さず、全部ぶつけ合いましょう。

……逃げたり誤魔化したり隠したりなんてのは御法度ですの。次にやったらお仕置きモノですのっ! 

コレ、み、みみ美麗との絶対のお約束でしてよっ!」


 てへぺろりんとウィンクをして、最後は茶目っ気を全開にして強引に押し切らせていただきました。


 かーっ。やっぱり思いを言葉にするというのは小っ恥ずかしいものですわねっ。


 ちなみに誤魔化すのはNGとお伝えしたばかりですが、恥ずかしさを誤魔化すのは別に構わないのです!


 私の権限でたった今許可を出しましたの!

 こればっかりは全面的におっけーにいたしますのッ!


 目線で返答を促して差し上げます。



「……であれば、ポヨもまたキチンとごめんなさいをしなければならんポヨね。

ポヨもずっと後悔をしていたポヨ。もうこんな思いは一生ゴメン被りたいのポヨ。

……ポヨはもう、美麗の嫌がることをしないと誓うポヨ。美麗の変身装置として、美麗の為になる行動をするのポヨッ!」


「せいぜい良きに計らいなさいましっ。先に言っておきますけれどもっ。オトナになった私の相手をするのは少しばかり大変でしてよ? ご覚悟よろしくて?」


「無論、ダメそうだったらちゃんと言うから安心しろポヨッ!」


「ふ、ふっふん……ふふ……ふふふっ」



 ああ、なんでしょうね。

 ただ単に思いを言葉にしただけですのに。


 胸の中にあったモヤモヤが全部綺麗に無くなっていくような気がいたします。


 今はとっても心晴れやかな心地ですの。

 こんな気分は、もう何年ぶりか……。


 それこそ茜と満天の星空を眺めたときのような……っ!?



 ふふっ。きっと……きっと。

 止まった時計がやっと動き出しましたの。



 ふと見てみればポヨがソワソワと身を震わせていらっしゃいます。


 この動き、まるで私の肩に乗りたがっているかのような……まったく甲斐性のない方ですわね。



「しゃーなしですの。ほら、仲直りの印ということで特別に許して差し上げますのっ」


 ほんの少しだけ首を傾けて彼のスペースを用意して差し上げます。


 ついでにもう一度ウィンクを向けて促して差し上げますの。


 そんなにぱーっと晴れやかそうな顔をなさらないでくださいまし。


 つい私まで微笑んでしまいますから。



 次の瞬間にはこの肩にひんやりとした感触が伝わってまいりました。肩乗り水饅頭の再来ですの。


 ああ、とんでもなく懐かしいですわね。



「これで一件落着、かな?」


「見ているこっちがハラハラしたプニよ」


 向かい側のソファに腰掛けていた茜が、ホッと息を吐かれました。


 彼女も彼女でとっても緊張していらしたようで、その肩に乗せていたプニと見つめ合っては、ほにゃーっと気を抜いた微笑みをお零しなさっていらっしゃいます。


 貴女の仰るとおり、私の過去のわだかまりについては一旦区切りが付いたとみてよろしいのでしょう。


 コレでようやく夜もぐっすり眠れそうですの。


 メイドさんもまた同じく微笑んでくださっておりますし、もちろん仲直りの場をご用意してくださった総統さんも……あら?


 彼だけはちがいましたの。


 何故だかほんの少しだけ浮かないご表情をなさっていらっしゃるのです。


 目が合いますと、気を遣って微笑んではくださいました。


 この際ですから正直に疑問符を向けて差し上げます。

 あの、どうなさいまして?



「いや、俺もよかったとは思うよ。けれどもまぁ、むしろコレからが大変なんだけどな。俺たちが直面している問題が解消されたわけではないし、この仲直りが本質的な解決に繋がってるわけでもない」


「むむむっ。ちょーっとご主人様? 無礼を承知で申し上げさせていただきますけれどもっ。現実主義者的なご発言はさすがに空気が読めていないのではありませんこと? せっかくのハレの場なんですから、少ぉしくらい……」


「すまんな」


 言葉を濁すのはダメでしてよ。

 話していただかないと分からないのです。


 私がそう言い放ったばかりでしょう?

 もしや全然聞いてなかったんですの!?



「私、ヘソ曲げちゃいますわよ」


「それだけは困る。勘弁してくれ。

っつーのもだ。たとえお前が青の魔法少女(プリズムブルー)のチカラを取り戻したところで、件のスペキュラーブルーには歯が立たないわけだしな。魔装娼女のほうがまだ……というまである」


「……くぅ……まぁ、それは確かにぃ……。私の完全なる上位互換(アッパークローン)ってことはつまり、プリズムブルーの上位互換ってことに他なりませんからねぇ……ふぅむぅ……」


 なるほど。ご懸念もごもっともでしょう。


 今なら分かりますの。総統さんがこの場を設けてくださったのも、察するに最強の魔法少女対策についてのお話を進めるためというわけですわよね。


 ま、それなら渋めの顔も仕方ないですの。


 彼の計らいによって過去のモヤモヤが解消されてしまった以上、今度は未来のモヤモヤを解決していくように努めるしかないのです。


 ポヨと仲直りできたということは、今後はポヨも知恵を貸してくださるということに他なりませんの。


 ある意味では彼の持つ情報こそが、魔法少女スペキュラーブルー誕生の直接的な要因になったとも言えるのです。


 きっと新たな糸口やら何やらを引き出していけるはずです。


 であればパパっと頭を切り替えなさいまし、蒼井美麗。


 総統さんから沢山のご寵愛を受ける身として、彼のおチカラになるべく奮闘する義務がございましてよっ。



「では、実際問題これから私はどうすればいいんですの?

わざわざポヨと引き合わせなさったってことは、ご主人様的にも何か理由があったってことですわよね?」


「ああ、それはもちろんな。というのも、だ」


 総統さんが真剣なご表情でお続けなさいます。

 

 

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