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おヘソでハーブティが沸いちゃいますわね

 

 それは今にも消え入りそうな、また泣き出してしまいそうなお声でしたの。


「……ポヨだって上からの圧力で萎縮していたのポヨ……。下手に監督不行き届きの印を押されて、更には途中で美麗の変身装置を交代させられる可能性だってあったポヨ。それだけは絶対に嫌だったのポヨ……。

メイドに手を出させてしまったのはもう、背に腹は変えられない最後の逃げだったのポヨ……」


「とりあえず最後まで聞いて差し上げましょうか」


 物申して差し上げたいことも山ほどあります。けれども、私ももう何も知らない子供ではありません。


 癇癪に身を任せてしまうのが一番簡単なのでしょうが、それでは私の求めた〝対話〟は得られないのでございます。


 ほら、だからさっさとお続けなさいまし。


 この手でポヨを握り潰してしまったあの日、私は自ら対話の道を棄て去ってしまいました。


 同じあやまちは繰り返したくありませんの。


 いずれにせよモヤモヤが残るなら、また憤りを覚えてしまうのなら、キチンと自ら選び抜いた上で後悔しておきたいのです。



「……こっほん。百歩、いえ五百万歩譲ってメイドさんに危害を加える他に万策が尽きていたといたしましょう。

で? 本当にそれだけなんでして?

おそらく障害の排除以外にも理由があるのでしょう?

どうせ卑劣で卑怯な連合連中のことですの。私たちの知らぬところでまだ何か裏があると思いますの。何か賭けてもいいですの」


 仮に排除が上層部からの命令だったとして、もし本当に私からメイドさんを奪ってしまえば、それ以後は生活が成り立たなくなってしまうことくらいお分かりになると思いますの。


 少なからずお父様も噛んでいらっしゃるはずです。私の生活力の無さを知らぬ存ぜぬとは言わせません。


 まったくもう。

 そこまで私を苛めて何になるんでして!?


 子供ライオンを崖から突き落として強くするにしては、さすがに度を超えている気がいたしますけれども。


 本当に私を捨てようとしていたのか、それとも、私を危機的状況に晒すことで……?


 考えをまとめるには情報が足りなすぎます。   

 おまけに冷静さを失いかけておりますの。


 この憤りをポヨに向けたところで無駄なことは理解しておりますが、我慢しようとするのと我慢し続けられるのはまったくの別モノですの。


 だからどうか……せめて私の納得できる理由をくださいまし。


 メイドさんを退けようとしたホントの理由を。



「……分かったポヨ。言うポヨよ。あの誘拐事件もまた、新たなデータを収集するための、一つの大きな実験に組み込まれていたはずポヨ。

極限に追い込まれた際の精神性が魔法少女の適合率にどのように影響するのか、はたまた異例を極めてきた魔法少女が今度はどのようにしてピンチを切り抜けるのか。おそらく別の意味でも注目を集めていたのポヨ」


「……ふぅむ。やっぱり。ホント、はらわたが煮えくり返りそうなレベルの吐き気がいたしますわね。

私もメイドさんも血の通った人間なんですの。そしてまた、この世を生きる魔法少女一人一人だって、誰一人例外なく、普通の女の子だっていいますのに……ッ!」


 まるで人をモルモットか見世物小屋のお猿さんのように扱いなさるのです。


 もしくは囲碁の石か将棋のコマ程度でしょうか。


 ただお一言だけよろしくて? 石は囲まれてしまうと取られてしまうんですのよ!?


 それどころか将棋のコマは敵に寝返る可能性だってあるんですのよ!?


 現に今がソレなのです。その辺の思考がすっぽりと抜けてそうですわね。


 いえ、むしろ私たちは所詮はただの捨てゴマ(・・・・)だということでしょうか。


 だとしたら、あんまりですの……。


 実の娘だからってさすがに扱いが雑すぎだと思いますの。私はお父様たちの玩具ではありませんの……っ!



 ポヨが神妙なご様子でお続けなさいます。



「連合本部にとって一つだけ誤算だったのは……あの事件で美麗の心がポッキリと折れてしまったことだろうポヨね。まして魔法少女のチカラを放棄して変身装置まで破壊してしまうなど、本部は予想のヨの字もしていなかったはずポヨ」


「……ふん。おヘソでハーブティが沸いちゃいますわね。残念ながら後悔はしてませんの。なるべくようにしてなっただけのコトですの。デリケートな乙女を何だと思ってるんですの。ガラスのハートは負荷にも衝撃にも弱いんですの。ホントに失礼しちゃいますのッ!」


 ポヨとの関係を断ち切った以降も、私は自決覚悟の特攻を仕掛ける気マンマンでしたからね。


 ぶっちゃけこの手で全てを終わらせようと思ってましたの。負けても死んでも気にしなかったですの。既には私には後悔も何もかも残っておりませんでしたし。


 むしろ、茜には申し訳ないですが、メイドさんの後を追う気さえあったくらいです。



「それでもって、ここからが美麗の知らない話ポヨ。お前がそこの男に連れ去られた後のことポヨが――」


「――おぉっとちょいとお待ちですのッ! そこの男(・・・・)じゃないですの。親愛なる総統さんと今すぐこの場でご訂正なさいましッ!?」


「引っかかったところはそこポヨか!?」



 今のは聞き捨てなりませんわね。


 私のことであれば二億歩も三億歩も譲って差し上げますが、総統さんに関しては絶対にダメなのです。


 だって私たちの命の恩人なんですのよ!?


 今日一番の勢いで畳みかけて差し上げます。



「あともう一言だけ物申させていただきますとっ! 私たちは連れ去られてもおりませんのっ! 彼は死にかけの私とメイドさんと寝たきりの茜を救ってくださった救世主様ですのッ! またの名を悪の秘密結社の総統様ッ! 更には私の敬愛するご主人様であらせられるマッコト尊きお方ですのッ!」


「……お、おうポヨ……お前がそこまで言うからには……きっとすごい人、なんだろうポヨね……知らんポヨが……」


「じきに分かりましてよ。ぷんぶんですの」


 総統さんがいらっしゃらなければ、今こうしてポヨと再会できるはずも、それどころかメイドさんが生きているはずもなかったのです。


 ある意味ではポヨの恩人でもあるんでしてよ!?


 もしメイドさんが死んでしまっていたら対話のタの字も糞食らえでしたの。即刻この手で握り潰し直してましたの。今度こそ息の根を止めて差し上げておりましたの。


 ふん。ホント命拾いなさいましたわね。

 せいぜい手の上で震えてなさいまし。


 少々の恨みを込めて手のひらのポヨを握り込みます。

 むにゅりと形を変えなさいました。


 握り潰すつもりはありませんのでご安心を。

 コレはあくまで脅しの一手です。

 

 ……っと、話が逸れてしまいましたわね。

 そろそろまとめに入りましょうか。


 あとどのくらい続くかは知りませんけれどもっ。

 多分もうすぐな気がいたしますの。

 

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