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眩しい光の、その更に向こう側を信じて

 

 それから私たちは大浴場内での湯巡りを一通り楽しんだのち、またそれぞれ自室へと戻っていきました。


 何だか久しぶりのガールズトークを楽しめた気分で大満足ですの。


 今度はパジャマパーティーとかも催してみたいですわね。


 その際はっ、たとえ私たちが敬愛する総統さんであっても、絶対に入室NGとさせていただきますの。


 もちろんその他の男性怪人さんもダメですのっ。

 ハチさんくらいはおっけーにして差し上げましょうか。あの方はれっきとした女性ですし。


 混浴かつ不特定多数が利用するココでは叶わないからこそ、各個人のお部屋にて開催してみるのですっ。


 そういえば途中から大浴場に男性の怪人さん方が沢山入って来られましたが……首輪付きのメイドさんが一緒だったためか、何も言わずに終始そっとしておいてくださいました。


 大事なときにキチンと空気を読んでくださるからこそ、私はこのアジトにいらっしゃる皆さまが大好きなのでございます。


 今度、夜のお勤めでご一緒させていただく際により一層身体を張ってお礼させていただきますわね。


 うふふっ。楽しみにしておいてくださいましっ。


 独り湿気を帯びた微笑みを浮かべさせていただきます。



「……ふぅ。にしても昨日と今日とで、何だか急に忙しくなってまいりましたわね。こういう束の間の休息こそ一番大切にいたしませんと……っ」


 というわけで、ただいまの私は自室にて一人涼んでいる真っ最中です。


 脱衣所で手に入れたアジト印の真っ白乳瓶を片手に、薄いネグリジェ一枚だけを身に付けて、そのままゆったりとベッドに腰掛けて、ホッと一息吐かせていただいておりますの。



「んぐっ……んぐっ……ぷはーっ。いやー、とにかくイイお湯で大満足でしたのー……。お風呂の温かさとお二人の温もりのおかげで、心身共に大分楽になれましたのー……感謝感謝雨霰でぇすのぉー」


 サイドテーブルに空になった瓶を置いて、ぱたりとベッドに倒れ込みます。


 あとはしっかりと休んでおけば明日以降の鍛練にも全力で励んでいけそうですわね。


 晴れやかになった気分も相成って、とっても充実した毎日になりそうな予感がするのです。



「……ですが、これからはもう、お気楽気分ではいられないのかもしれませんの。決して不真面目なわけではありませんけれども」


 ふつふつと浮かび上がってくる独り言に合わせて、側にあった枕を軽く抱きしめます。


 角馬男と炎鳥男を退けた際には、結局は総統さんにお助けいただきましたけれども。


 今後に控える魔法少女スペキュラーブルーさんだけは、本当に私のチカラだけで戦わなければならないのです。


 天命か、宿命か、はたまた運命の悪戯か。


 ただし幸いなことに、独りで戦うのと一人で戦うのは意味合い的なところがちがいますの。


 今回の私は後者です。

 私はもう、独りぼっちではありませんもの。


 信じて託してくださる方々や、強くなるために修行に付き合ってくださる皆様方、更には直接的な関わりはなくとも装備や環境を整えてくださっている支援者の方々などなど。


 沢山の良い人の思いを背負っていることをキチンと自覚しておりますの。


 また同じく、私もこの悪の秘密結社の結束力と技術力を信じているのです。


 研究開発班の皆さまもきっと、最高最強の魔法少女を軽く超える新装備を開発してくださるはずです。


 全くの焦りやプレッシャーを感じていないわけではありませんが……独り追い詰められていた頃の私と比べれば、今は何千倍も心が豊かな気がしているのです。


 決してやれなくはないのだ、と。

 己を奮い立たせられそうなくらいには、ですの!



「ふぅむ……魔法少女、スペキュラーブルー……。私をベースに造られた……ただ勝利を重ねるためだけに存在する……女の子……」


 実際のところ、複製さんには恨みはありません。

 ゆえにこれはもう復讐でも何でもないのです。


 私はただ、私の大切なモノを守りたいだけ。

 このぬるま湯のような世界を失いたくないだけ。


 ただの小粋で小生意気なワガママのために、身を粉にして必死で抗って差し上げると言っているのです。


 それにほら、意地と意地のぶつかり合いであれば、どこかで妥協点を生み出すこともできましょう?


 私はまだ、話し合いで解決できるのでは? と。

 そんな淡い期待を抱いているのもまた事実なのでございます。


 ……しかしながら。思うところもありますの。



「……ねぇ複製さん。アナタは今、何の為に魔法少女をやられてますの……? アナタの目的は、思いは、今はどこを向いていらっしゃるんでして……?」


 かつて私がプニポヨから教えられた、魔法少女のチカラの根源。


 それは〝思いの力〟なのだと記憶しております。


 大切な人を守りたいという思いが正義の光に姿を変えて、私たちに眩いほどのチカラを授けてくださっていたはずなのです。


 彼女もまた魔法少女であるならば、スペキュラーブルーの根源(おもい)はどこにあるのでしょうか。


 あの強大なチカラは彼女の何の願いなのでしょうか。


 私、誰かを必要以上に傷付けるためのチカラは、本質的には可憐で健気な魔法少女には似つかわしくないと思っておりますの。


 普通の女の子一人が持ってよい許容値といいますか、有るべき限界値といいますか。


 ほら。膨らみすぎてしまった風船は、最後には耐えきれなくなって破裂してしまいますでしょう?


 そのサイズが大きければ大きいほど、爆発に伴う音や衝撃もまた大きくなってしまいますの。


 このまま放っておいたら、強すぎるチカラを行使し続けるがゆえに、いずれ良くないことに繋がってしまいそうな気がして……ちょっとだけ、筆舌に尽くしがたい不安に苛まれてしまうのでございます。


 もう間もなく彼女が表舞台に出てくると思われます。

 

 弊社の外回り営業にも影響が出始めて、今のままの、ほとんどノーダメージのままではいられなくなりますでしょう。


 どこかの誰かが守らなければならないのです。

 それがこの私だってだけのお話ですの。


 幸か不幸かそういう役目に慣れておりますからね。



「今回ばかりは健気に素直に頑張って差し上げますの。私はヤればデキる子なんですもの。そしてまた、褒められて伸びるタイプでもあるのです。

私の本気の本気、つまりは超絶本気をご披露させていただきましてよ」


 気合を込めて枕をぎゅっと抱きしめます。

 そうして充分に落ち着いてから頭の下に置き直しますの。


 ずっと気負っていてはいざというときに動けません。


 休めるときにしっかり休んでおきましょうよ。

 私の居場所は、ココにこそあるのですから。



「ふわぁぁふ……そろ……そろ……羽化の……ときでしてよ、……蒼井……美……ふぇぃぁぁ……」


 しっかり毎日ご飯を食べて、毎日へろへろになるまで鍛練に励んで、ときどきアジトの皆さまと息抜きをしたりして、来たるべきとき(・・)に備えますの……っ。



 段々と瞼が重くなってまいりました。

 身体が安らぎを求め始めてしまいます……。


 逆らうことなくベッドに体重を預けます。

 そうしてゆっくりと目を閉じて……。


 来たる未来に思いを馳せますの。

 眩しい光の、その更に向こう側を信じて。


 もう一段上の私をお見せして差し上げますの。

 それは一ヶ月後か、はたまたもっと先のお話か。


 これより行うは決戦(・・)です。

 皆さま、乞うご期待ですの。


 今度の私は、逃げも隠れもいたしませんから。





【第四章 復讐編 完】



【第五章 決戦編 へと続く……】


 

 

 はい。というわけで

 第四章 復讐編 が無事に終わりを迎えました。

 どうも、作者のちむちーです(*´v`*)


 いやー、茜も記憶を完全に取り戻せて、

 メイドさんも無事に目を覚ますことができて、

 ホントにめでたしめでたしになりましたね。

 みんな待ちに待っていた大団円でしたね。


 ……え? なに? 夢でも見てたの?

 まだ終わってないよ? もとまほにっぺん。

 余談と空想はさておきつつ。


 美麗ちゃんの自由を賭けた戦いも

 次でおそらく、最後になりそうです。


 家族の問題にもキチンとカタをつけますの。

 一度だけ触れた〝お母様〟の話題も同じく、ね。


 この美麗ちゃんの物語がどんな結末に向かうのか。

 それは最後まで読まないと分かりませんっ!


 ゆえに最後まで『もとまほにっぺん。』を

 お楽しみいただけますと幸いでございますっ。


 次ページより決戦編がはじまります。

 感想とかも随時お待ち申し上げておりますのっ。

 作者も読者も一緒に楽しんでいきましょっ。


  引き続きよろしくお願いしますっ!(*´v`*)

 

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