表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

295/399

先走りするのは

 

 そういえば、広義的な意味で言ってしまえばキュウビさんも魔法少女のお一人にカウントされるのでしょうか。


 戦っていたときのスタイルから鑑みるに、別に思いの力を駆使しているようには見えませんでした。


 魔法少女というよりはどちらかといえばヒーローの系譜なのでして?


 見た感じ変身装置も見当たりませんし。そもそもこの人、はだけた着物が変身衣装なのか普段着なのか分かりません。


 意外に謎多き方ですのよね。



「ねぇねぇ! 今流行りの無人偵察機とかも新世代的なヤツに含まれちゃうのかな!? プニポヨみたいな自立型AI搭載型の機械は前からあったわけじゃん? あの子ら的なのが全部勝手に終わらせてくれたら、私たち要らなくなるし!」


 内容に興味を惹かれたのか、わくわく顔の茜が参加してきなさいました。


 私、覚えておりますの。茜の戦う理由は〝大好きな街の人たちを守るため〟だったかと思います。


 戦い自体に嫌気を差していたわけではないのでしょうが、わざわざ自分たちが戦わなくてもよくなるのであれば、それに越したこともないのでございましょう。


 別に主役になりたいわけではないのです。

 


「……その発想も悪くはありんせんが、絡繰(カラクリ)には絡繰(カラクリ)の、人には人の領域と役割がありんす。

しかしながらアレはその辺の垣根をも越える存在――ある種の禁忌(・・)とも呼べりんす」


「禁忌かぁ。なんだか背徳的な響きだよね」


「分かりますの。ダメって言われるとついヤりたくなっちゃうアレですわよね」


 立場上、背徳には目がないのでございます。実際、その背徳を今現在に体現しておりますからね。


 その独特な甘美さに味を占めて、今日この日まで生きてこられた自信さえありますの。


 にしても、プニポヨのような装置自身が、つまりは機械が勝手に戦うわけでもない、だというのに新規の魔法少女やらヒーローやらを必要ともしていない……。



 そんな方法、ホントに存在するんですの?

 有ったら便利だとは思いますけれども……。



 ふと窓の外を眺めてみます。


 さっきまで青い空が広がっていたはずですのに、東の空にモヤが見え始めておりましたの。


 厚ぼったい雲が集まっていて、ほんのり暗くて黒くて……どこか私の胸の内を表しているかのようです。



「盛り上がっていらっしゃるところ大変恐縮でございますが、皆様。そろそろ邸宅に到着いたします。あたらめて心のご準備をしていただけたら、と」


「了解ですの」


 先ほどの戦いの疲れを癒すため、気を緩め始めていた私と茜ではございましたが……メイドさんからのお知らせに今一度気を引き締め直しましたの。


 反対側の窓の向こうに見えたのは、近くに寄って尚更その大きさが分かる、私の実家でございました。


 玄関扉が両開きです。

 更には私たちの背丈の二倍はございます。


 四階建てにも五階建てに見えますの。何平米の何LDKでしたっけ? っていうか我が家はその基準で表せましたっけ?


 幼かったから巨大に思えていたわけではなく、18歳を超えた今見てもやっぱりデッカイんですの。


 ……私がよりちっぽけな存在に思えてしまいます。



「……くっ。シャキッとしなさいまし!」


「美麗ちゃん?」


 ダメでしてよ蒼井美麗。


 始めから萎縮してしまっては上手くいくこともいかなくなってしまいますの。


 ドレスの内側に仕込んだ変身装置をひっそりと握り締めます。


 総統さんやアジトの怪人の皆さま方。

 どうか私にチカラを貸してくださいまし。


 今日はもう変身装置を使わなくて済むことを祈っておりますが、そうなる保証もどこにもありません。


 ここは敵地のど真ん中。

 それ以前に、私の実家ですの。


 もっと堂々としなさいまし。


 イービルブルーではなく、蒼井美麗として。


 私は帰ってきたのですから。



 メイドさんがお車を玄関の側に付けてくださいました。家財搬入のトラック用なのか、わざわざココで停めろと言わんばかりに白線が敷かれていたのでございます。


 手始めにキュウビさんが降りなさいます。


 続いて茜、お次に私、最後にメイドさんが降りまして、列になってお城の入り口へと近付きます。



「はー……っ……ふー……っ……よし」


 深呼吸をいくつ重ねても足りないです。


 いくら吸ったところで胸の内のつかえが取れるわけでもありませんし。


 さぁ。ほら。今こそ。

 ドアをノックいたしましょうか。


 こんな大きな扉、独りでは押しても引いてもビクともしなさそうなんですの。きっと内側から開けてもらえるのでしょう?


 肘を上げて、手のひらをこちらに向けて、ほんのり拳を握り締めて、いざカンコンと――



「青のご令嬢。そこを退いておくんなまし。道案内がわっちの仕事と、先ほど言ったばかりでありんしょう?」


「はぇっ……あ、はいですの」


 うっくっ。出鼻を挫かれてしまいました。

 ひらひらと手で退かされては、場所をお譲りするしかなくなってしまいます。


 私、少々先走りしてしまいましたの。

 先走りするのはお汁だけでいいのですのに。


 ……ふぅ。適度に思考を横道に逸らしておかないと、今にもどうにかなってしまいそうですの……。


 胃がとってもキリキリいたします。

 緊張のせいでおゲロがこんにちはしてしまいそうです。喉の奥で待機していらっしゃいますの。


 ……再三、気合いで呑み込みます。

 



 

ここ最近ノクターン版の執筆欲も上がってるので

どちらも並行して進めていきますね(*´v`*)


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ