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今から腕が鳴りましてよっ

 

 私が魔法少女になろうと思った理由はただ一つです。初めて出来たお友達を守りたかったからに他なりません。


 彼女に並んで背を伸ばして立って、同じ高さ新たな景色を見てみたかったのです。


 ええ、そうですの。今までの行動全て。

 この思いこそが私の身体を動かしておりますの。



「……別に、下を向いて歩いているわけではありません。言ってしまえば今はただの充電期間なんですの。押さえつければ押さえつけるほど、バネは大きく跳び上がりましてよ」


 慰安要員だってある意味では次のステップなのだと言えましょう。


 膝を抱えて座り込んだままなのがイヤで、助けていただいた総統さん方に頼りっきりというのもあまりに申し訳が立たなくて、せめてこの身一つの私にも何かできることはないか、と……。


 私なりの恩返しなんですの。


 自己犠牲の精神というとさすがに着飾りすぎかもしれませんが、皆さまから求められることに対して、自分なりに考えて応えようとした結果なのでございます。


 今の私に出来ることを必死にこなしながら、より深く、そしてより繊細に洗練していくのみですの。



「停滞を是としない……ですか」


 魔装娼女(イービルブルー)に更なる強さを追い求めているのも本質的には同じことなのかもしれませんわね。


 敵対者を退けたいだとか全てをバッキバキに壊してしまいたいだとか、そういう野蛮な理由が行動理念ではなく。


 私はただ、メイドさんや茜をはじめとする大好きな人たちをこの手で支えたいから、そして同じくやっと見つけられた本当に居場所を失いたくないから、頑張れているんですの。


 ……引きこもるだけの人生が退屈なのは、既に十二分に知っておりますゆえに。


 私は、そんな怠惰な日常を変えたいのですから。



「……もしかしたら、答えは既にこの胸の内にあったのかもしれませんわね」


 間違いなく、私は弱いですの。

 けれども弱いからこそ強くなれるんですの。


 今の行動に限界が見えてきたのなら、新しいことを始めればいいだけなのです。



 暗い過去を見つめ直して、過去の因縁を断ち切ることができたのがついこの間だとすれば。


 その先の今を生きる私が行うべきなのは、過去の後悔を明後日の空に蹴り飛ばして差し上げることでしょうか。


 ビビってどうして最良の未来が勝ち得られるものですか。何より私はワガママなんですの。欲しいモノがあるなら、どんな手段を用いたとしても手に入れる気質でしてよ。


 言い表しようのない自信をこの身に塗り固め直します。


 そうですの。

 コレは虚仮(こけ)なんかではありません。

 全て私の経験から生まれ出る自信です。



 ええ。今の私なら、できるはず。



 まだ残っているかもしれないポヨと……そして、蒼井家当主のお父様と。


 キチンと話をいたしますの。


 身を守る鎧と盾(チカラ)は後でいいのです。大事なのは歩みを止めないことなのです。



「……あの、ご主人様。私、一つだけ地上に忘れてきた(・・・・・)ものがございますの。ソレを捨てるか拾い直すかは別として、確認してくるくらいなら、外出を許していただけまして?」


「好きにするといい。メイドの奴から話はだいたい聞いてるよ。

ヤバいと思ったらすぐに俺らを頼ってくれ。俺やカメレオンやハチやローパー、その他沢山の同僚たちがバックに付いてるからさ」


 不安げな素振りを見せたのが恥ずかしくなるほど、総統さんは


 変わらぬ優しげな微笑みを向けてくださいました。その顔を見るだけで、何でも出来るような気がしてきますの。


 私も返事をする代わりに大きく頷いて差し上げます。そのままガッツポーズも見せて差し上げます。


 私の〝時計〟が止まるのは全てを諦めたときだけです。


 今はまだ、そのときではありません。


 ゴールポストはおろか、PKラインさえも視界に映してはいないのです。貪欲にシュートを決めにいくのが私の役目ですの。無防備な背中は信頼できるお味方が守ってくださいます。



 ふふふ。


 世の中的によく言われていることを思い出してしまいました。


 強いほうが勝つのではなく、勝ったほうが強いのだと。


 強くなるには勝つしかありませんの。

 敵より誰より、己自身に対して、ですわね。


 今から怖気付いていては叶うモノも叶いません。よりよき未来を勝ち得る為に、向かう先が地の底の底であっても、そこがユートピアと信じて邁進する所存です。



「私は弱いですの。けれども強くもありますの。ですから、このままよく分からないままっ! 胸を張って突き進んで差し上げましてよ!」


「おう。それだけ分かっていれば充分だ」


「ういですのッ!」


 久しぶりにドヤドヤと鼻息荒くさせていただいたような気がいたします。ここ最近の修行で茜に負け越していた分、言葉には表せない焦りのようなモノが出てきてしまっていたのでしょう。

 


 事態としては何一つ変わってはおりません。

 でもそんなことは些細なお話なのです。


 今はもう肩の荷がだいぶ降りております。

 心を信じて何とかすればいいんですの。


 ダメだったらそのときは〝誰かと一緒に〟次の策を考えればよいのです。


 今後が血で血を洗うような展開となるかはまだ分かりませんけれども、今のうちから少しずつ行動の計画を練っていこうかと思います。


 次に舞い踊るべき舞台は、私の実家ですのっ!


 実の娘ではありますが、私は既に世を捨てた身です。

 他所行きの格好でガチガチに着飾って、見た目も準備してから向かうことにいたしましょう。



 さぁさぁ今から腕が鳴りましてよっ。

 それはもうぐわぃんぐわぃんっと!


 思えば久しぶりのオシャレなんですものっ!

 裸かネグリジェの二択は飽き飽きしてましたのっ!



――――――

――――


――


 

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