ホントにあともう一回ポッキリですから!【挿し絵有り】
第4章! 開始記念ッ!
あとがきに新規イラスト掲載しておきました!
(*´v`*)可愛がっていってね!
それでは本編始まります!
プニからの情報提供によって、私の変身装置は飛躍的な進化を遂げました。その分だけ時間も掛かりましたの。
新たな装置の開発に約一ヶ月。
私の手に渡ってからこの身体に馴染ませる為に更にもう一ヶ月。
ヒーロー連合の手先が襲来した日から数えて早くも二ヶ月ほどが経とうとしておりますでしょうか。
来る日も来る日も鍛錬の日々に明け暮れておりましたの。
「……くぅっ。まだですの。まだ足りてませんのッ!」
ここは中層に存在するギムナジウムです。
ありとあらゆる筋トレ器具が揃っておりまして、肉体美を誇る怪人さん方が日夜鍛練に励む人気スポットとなっております。
おまけにちょっとした戦闘訓練も行えるマットスペースなんかも用意されておりますの。まさに至れり尽くせり、過不足なく修行に没頭できる素敵空間と化しているのでございます。
茜や後輩ちゃんたちをはじめ、ときには怪人の皆様にもお手伝いしていただきながら、毎日のように実戦的な経験値を積ませていただいたわけですわね。
私、ついこの間までは筋肉は己を裏切らないと思っておりましたの。流した汗の数だけ強くなれると信じ込んでいた時期もあったのですけれども。
現実は……そう上手くはいかないらしいのです。
「ふぅ。やっぱりダメですの。何も掴めませんのぉ……」
最初のほうこそ順調そのもので、装置を使えば使うほどメキメキと適合率が上がっていきました。
けれども負荷をかけ始めてから一ヶ月ほどが経った頃合いからでしょうか。
「やっぱり何も変わってないぃですのぉぉ……」
「変身装置との適合率、今はおおよそ98%ってところプニか。ほぼほぼ限界値に近い数字だとは思うのプニが……美麗、まだ納得がいってないのプニか?」
「おバカ仰いまし。当ッたり前ですの! ここで満足できるはずがありませんのぉ! だってこちらはっ! 私の為だけの特注品なんでしてよ!?
持ち主が100%の性能を引き出せなくては何が唯一無二の魔装娼女と言えましてっ!? 総統さんをはじめ、開発に携わっていただいた皆様に申し訳ないのでございますっ!」
「まぁまぁそう自分を追い詰めるなプニ。ほーんと律儀で不憫な性格だプニね……現役時代にもその生真面目さを発揮して欲しかったプニ」
「くぅぅ……それについてはノーコメントですの」
正直に言って言い返す言葉はございません。代わりに眼前のプニに瞳で訴えかけて差し上げます。
彼は今、ネグリジェ姿の茜の頭の上に乗っていらっしゃいます。鍛練を止めようとしない私に対して、痺れを切らしたかのようにぽいんぽいんと跳ねていらっしゃるのです。
お暇そうなところ申し訳ありませんが、ほら、アナタの目でも確認してみてくださいまし。確かに強くなってはおりますの。自分の体重ほどもあるバーベルを片手で簡単に上下させられるようになりましたし。
けれども、その程度でしかありません。
変身装置が更新されて、適合率が搭載されるようになって……90%を超えて無事に身体強化機能も反映されるようになったといいますのに。
こんなにも! 簡単に力強さを示し表せるようにもなったといいますのにッ!
どうしても100%には至ることができないのです。
ずぅっと中途半端なままなのでございます……ッ!
「ねぇどうして……どうして最後のピースがハマってくださいませんの……? ……このままではぁ……っ」
総統さんやメイドさんに顔向けできません。ここ最近は特に成長が止まってしまっているのです。それこそ額に貼る用の冷感シートの如くピタッとストップ中ですの。
理論上では100%をしっかり出せるはずですのに。
どうしても理解できない部分があるといいますか、完全にはしっくり来ていない箇所が残ってしまっているというのが紛れもない事実です。
出力しきれない理由は私の努力が足りていないのか。
それともまったく別の理由があるのか……。
深く考えても毛ほども思い付けません。
このままでは無闇矢鱈に体力を消耗してしまうだけ……!
そんなことはとうの昔に理解しております。しかしながら素直に引き下がれない状況だというのもまた現実なのでございます。
滲み出てくる冷や汗が私の身体を急激に冷やし始めます。悔しさと不甲斐なさに歯噛みを繰り返してしまいそうですの。
もはや焦りと不安で、自心を支える余裕さえもなくなってきてしまっているのです。
「ふぅむぅ……。どうして……どのようにしたらこのチカラを最大限に……いや、アレを……こうして……否ですの。ダメですの。違いますの……。もっとこう、指先に神経を、ぐぃっと集中できたら……」
半ばヤケになるほどに身体の感覚を研ぎ澄ませてみておりますが、必ずと言っていいほどコンマ1秒ほど反応が遅れてしまうんですの。
ずっとずぅっとその繰り返しなのです。
もしや変身装置がプロト発展タイプゆえの誤挙動が発生中……? 私のステータス的には問題はない……?
いえ、そんなわけはありませんの。
こちらは我が社の技術の粋を集めた結晶的な変身装置なのでございます。〝不具合〟などこんなにも容易く見つかるモノではございませんのでしょう。
「……やっぱり、私に原因があるのでしょうか」
扱う側の問題かもしれないのです。私が拙いばかりに、この拭いきれない未熟さを抱えているがゆえに……っ!
握る拳にもつい余計な力が入ってしまいます。
「美麗ちゃん。私とプニちゃんの適合率が最高でも96.5%なわけなんだし、この結果をもっと素直に喜んでいいと思うんだよ。ストイックすぎるのも身体に毒なんだって。
もう少しゆる〜りと落ち着いてさ。気長〜に余裕を持って、地道〜に伸ばしていこうよ」
「ふぅむぅ……分かってますの……けれどもモヤモヤしたまま毎日を過ごすのはイヤなんですのぉ……。
もう一回、ホントにあともう一回ポッキリですから! バトルの先っちょだけっ! 帰る前に実戦訓練にお付き合いいただけませんこと?」
「はーいはい。ホント頑固なんだから。分かったよ」
私の必死の訴えに渋々頷いてくださいました。
頭上のプニを手に乗せ直して、ゆっくりと握り締めなさってくださいます。
お二人とも。度々ご迷惑を掛けてすみませんわね。
もはや無詠唱でも生成できるようになった黒杖をググと握り締めつつ、一足先に身構えておきます。
そうして茜が魔法少女に変身するのを待ちますの。
美麗と茜の模擬バトル、その2。
お互いに強くなった私たちの力のぶつけ合い。
今度は誰にも邪魔されま――