私たちの次回にご期待くださいましっ!
ドアの向こう側にいらしたその人物は……!
ああやっぱり……っ! 私の予想の通りっ!
赤髪の小柄な女の子さんしか有り得ませんのっ!
「美麗ちゃんお待たせっ。無事に解析終わったよっ」
もちろん件の待ち人であった茜と……!
「見てのとおりプニ。ボディを自由に動かせるっていいプニね。しばらく鈍って仕方がなかったプニよ」
ジャミング装置箱に入って〝いない〟生身のプニのお姿が目に飛び込んでまいりましたのっ!
ようやく私の元を訪ねてきてくださったのです!
晴れ踊る心に身を任せ、半開きだったドアを全開にいたします。そうしてお一人と一体をお部屋に招き入れて差し上げるのでございますっ。
「んもう遅いですのっ! ずっとずっとお待ち申し上げておりましたのっ! ウンともスンとも仰ってくださらないものですから、私もう不安で朝と昼しか眠れなかったんですのよっ!」
夜はその……ヤらなければならない責務がありますからっ。
プンスカする私とは反対に、眼前にはニッコリご機嫌そうな表情の茜がいてくださいます。その肩の上にはぽむんっと軽快にお跳ねなさるプニもいらっしゃいますの。
釣られてふっと微笑んでしまいました。何事もなさそうなお姿にホッとしてしまった私がいるのです。
どうやら自分では気付かないうちに心の底から心配してしまっていたようですわね。
ここ最近の肩凝り腰痛はそのせいでしたか……!
私としたことが、まだまだですの。
「とにもかくにもっ! これで離れ離れは終わりってことですわよね! プニも自由を手に入れられたんですのよね!? それに私もっ! 新たなチカラを手にすることができるんですのよねッ!?」
私の大切なモノたちを守る為のっ!
全てを蹂躙し尽くせる圧倒的なチカラをっ!
手に入れられる算段が付いたって認識で合っておりまして!?
自然と彼女の手を取ってしまいます。
「あっはは焦らない焦らない。そうだよ。って言ってもまだほんの一歩だけらしいけど。明日から試作品に着手し始めるんだってさ。
美麗ちゃんのっ! おニューな変身装置の強化版ってヤツにっ!」
「はぇー! すっごい楽しみですのーっ!」
今のうちから胸がドキドキ高鳴ってしまいます。
だっていよいよなんですもの。
新たなチカラさえ手にできたら、私や茜やメイドさんを地下送りにした憎き奴らをこの手でゴリッゴリにブチのめして差し上げられるんですからね!
今からわくわくが止まりません。
新しい装置を受け取ったら早速特訓しなければなりませんわね。ご奉仕スケジュールの調整も必要そうです。
完璧に変身装置を使いこなせるようになるのは数週間先か、はたまた数ヶ月先か……!
適合率100%以外は認めたくありませんの。だって私の専用機を作ってくださるのです。結社の皆様のご期待に応えられなくては蒼井美麗の名が廃ってしまいます。
ともなれば時間などは大した問題ではありませんわね。もちろん早い方が施設露見のリスクも少ないのですが、私はこのアジトの極秘性を信じております。
逃げ際に不死鳥男が何やら不穏なことを言っておりましたが私の知ったことではないのです。
ほら、ちょっとやそっとの詮索でこの場所が見つかるほどヤワな造りはしておりませんでしょうし。そんなに簡単であれば現役時代の私だって片鱗くらいは掴めたでしょうし。
奴らはせいぜい地上で右往左往していればよろしいのでございます。その間に圧倒的成長を遂げて差し上げますのッ!
「茜。やってやりますのよ。アイツらに、私たち自らが目にモノ見せて差し上げるのです」
「…………うん。だけど、無理だけはしないでね」
「それはお互い様でしてよ」
何よりも今度は背水の陣ではないのです。いつだって私たちの後ろには頼れる結社の皆様方がいてくださるのですから。
新しいチカラを手にできたとして、それでも足りないと分かればすぐに総力戦に切り替えますの。怪人さん方には沢山のご迷惑をお掛けしてしまうと思いますがご了承くださいまし。
足りない分の戦力の埋め合わせは後で必ず身体で償わせていただきますの。それくらいの覚悟はとっくの昔にし終わっているのでございます。
ふっふんっ。今更ヒーロー連合が何なんですの!?
全部まとめてハッ倒して差し上げますのッ!
私からすれば!
安寧を邪魔する奴らこそ悪なのですからね!
絶対に容赦するつもりはございませんのッ!
「…………ふぅむ……」
――私たちが失ったモノを取り戻すため。
それは自由か、プライドか。
仮初の平和か、それとも穢れのない真っ白な心か。
もしくは、それら全てか、それ以外か。
今はまだ分かりません。
眉間にシワを寄せながら、グッと拳を握り締めます。
爪こそ立てませんが、本当の本当に今までで一番くらいの気持ちでチカラを込めますの。
そうして赤い跡ができた手のひらを見つめて、今この瞬間まで生を繋いでこられたことを再認識するのでございます。
今日までに舐めた苦汁を決して無駄にはいたしません。身を粉にして働いたことも全てが私の糧なのです。
「コッホン。皆様方よろしくて? 特に翠さんも花園さんですの。貴女方には別に連合と戦う道理や義理はないでしょう。巻き込まれてしまっただけに等しいのです。
ゆえにこの私がイチ先輩として、身の安全くらいは保障して差し上げますの。
大船に乗ったつもりでドンッとお頼りくださいましッ!」
当面の目標は〝打倒! ウマヅラ野郎とトリアタマ野郎〟なんですのッ! 達成するまでは何かとご不便をお掛けしてしまいますが我慢してくださいまし。
また陽の光を拝めるように内から外から尽力して差し上げますの。最終的には魔法少女など一人も必要とされなくてよい世界を築いてみせましょう。
もしもこれから騒ぎが大きくなってしまって、穏やかに地上を闊歩できなくなってしまったそのときには……私が責任をもって貴女方を普通の女の子に戻して差し上げます。
ヒーロー連合の本部に乗り込んで、もうこれ以上脱退者に手出しはするなと釘を刺して差し上げればよろしいのです!
お話が通じないお頑固さん方には、この手でキッツいお仕置きを施して差し上げますからそのおつもりでっ!
ふっふっふ! 今から腕が鳴りましてよっ!
それはもうボキリバキリと軽快にっ!
「さぁ突き進みますのよ蒼井美麗。そしてもちろん茜もプニもですのっ。私たちの物語はまだまだ始まったばかりなのでございます。ゆえに私たちの次回にご期待くださいましっ!」
「あはは。夢の途中で終わっちゃいそうな言い方してるけど、ホントにこれからなんだからね。
…………美麗ちゃん。一緒に取り戻そう。私たちが失った日常も、ひだまり町でのあの生活も、全部まとめてね」
「ふっふんっ当たり前田のビスケットですのっ!」
あの日この身に受けた悲惨な暴力も。
嫌になるほど味わった不快な辛酸も。
地に垂れ零した血の一滴に至るまで。
全てまとめて倍返しにして差し上げますの。
どす黒く渦巻いたこの負の感情を、今回だけは隠し通すつもりはございません。裸よろしく曝け出す所存です。
同じくこの戦いには……正義も道理も大義名分も綺麗事さえも存在いたしませんの。
あるのは穢らわしい屈辱的な思い出だけ。
拭い去ってしまいたい悲しい思い出だけ。
私の最初で最後の〝復讐〟を達成することでしか、綺麗さっぱりに消し去ることはできないのでございます。
恥辱に塗れ、汚れ濁ったこの黒泥のごとく。私には温かい闇に溶け込むことしか許されていないのですから。
「…………だから……だからですの」
「うん? 美麗ちゃん?」
どうか病室のベッドから応援していてくださいまし。
私の最愛のメイドさん。
そうして全部をやり遂げられたら。
もう一度だけ、もう一度だけで構いませんから。
目を覚ましてこの頭を撫でてくださいまし。
頑張りましたねと褒めてくださいまし。
それだけできっと満足できると思うのです。
全ては私と、私たちの未来のために。
例え貴女が少しも望んでいなかったのだとしても。
今は盲信して突き進むことしかできませんから。
【第三章 外界編 完】
【第四章 復讐編 へ続く……】
こんにちは、作者です。
なんだか久しぶりな登場な気がして
とってもソワソワしております(*´v`*)
まぁ約100ページぶりだもんね!
そりゃあ仕方ないよね!
さてさてっ!
ここまで〝もとまほにっぺん。〟をお読みいただきまして誠にありがとうございます。既に70万字近く書いておりますが、よくもまぁここまで書いてこられたな、と。まだまだ沢山続きを書かなくてはなりませんが。
見切り発車もなんとかなるもんですね(*´v`*)
未だに一度もペース落ちてないの凄いと思う!←
さてさてさてっ!
実を言えば今回は中身の余談的なお話はありません。
「第三章 外界編」はほら、過去と今とを繋ぐ架け橋的な扱いでしたし。美麗ちゃんに趣味の競馬をさせられたので僕はもう大満足の一言です。
お次の「第四章 復讐編」は字面のとおり血で血を洗う……とまではいきませんが、熾烈なバトルがメインになることが予想されます。
やっぱり暗めのお話になるのかなぁ、どうかなぁ。
メイドさん、未だに眠ったままですもんね。
このままドンドンと読み進めていただいて、黒の衣装に身を包んだうちの子美麗ちゃんの華麗な姿を瞼の裏にご想像いただければなぁ……なぁんて思っております。
ああそうだ。新規の挿し絵も用意しておかないと←
もちろん感想もファンアートも何でも常時募集しております。いただいたモノは毎度毎度楽しく読ませて&眺めさせてもらっておりますの!(*´v`*)
はい。また長々とお喋りしてしまいましたが
〝もとまほにっぺん。〟はまだまだ続きますッ!
引き続きうちの子ちゃんたちに愛を注いでいただけたら幸いです。
(ノクターンノベルズ版もよろしくね。げへへへへへ)
ってなわけで、第四章は次のページから
早速スタートいたしますの!
皆様お楽しみにッ! ではまたっ!