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好きにするといいプニ


 総統さんをじっと見つめて差し上げたところ、私の顔を目にして何かに気付かれたようですの。


 平手をポンっと子気味よく打たれたのちに続きを話してくださいます。



「ま、要するに企業秘密な製造情報を俺たちに横流ししてくれってこった。それでもって可能ならお前さんの中身(データ)を覗かせてほしい。組織のトップとして、またソイツ(ブルー)の身柄を預かる者として、ついでに機械好きのイチ個人としての嘘偽りのない要望だ」


 そうして曇りのない視線をプニにお向けなさいます。


 総統さんったらいつになくまっすぐな目をしていらっしゃいますの。いえ、それどころか過剰なまでにキラッキラさせておりましてぇっ……!?


 組織のトップとしてと仰ってはいらっしゃいましたが、今のお顔は完全に好奇心に湧き立つ少年のソレなのです。


 機械弄りたい欲が全面に表れていらっしゃいます。

 今だけは何を考えていらっしゃるのか手に取るように分かりますの。ふふふ。とっても可愛げがありますわね。


 総統さんとしてはきっと三つ目が一番の願望に違いありません。それがまた余計に可愛らしいのであえて指摘はいたしませんけれども。



 とにもかくにも、敵方の自意識形成型変身装置に対して、ご自身の要求の内容を濁すわけでもなく、またおべっか的な飾り言葉で取り繕うわけでもなく、ただただ思いをダイレクトにお伝えなさったのです。


 これが絶対強者ゆえの余裕なのでしょう。


 この場には駆け引きなんてモノは存在しませんの。

 ハイかYESか、プニに求められているのはただそれだけの返答なのです。



 いつもの私であれば〝あ〜らやだやだイヤらしいですのっ。お前の中身を覗かせてほしいだなんてぇっ〟などと囃し立てて差し上げていたところでしたが……!



「美麗ちゃん。今は邪魔しちゃダメだよ」


「むっ。しませんわよ。さすがに分かってますの」



 至極真面目そうな雰囲気ゆえに黙っておきます。

 茜からも釘を刺されてしまいましたし。


 正直蚊帳の外感が半端ないので寂しいのですが、この流れでは入り込む余地がありませんの。仕方がないのでございます。


 ですから今は空気を読むことに特化しておきましょう。小川を流れる水の如く、右からやって来た情報を何も言わずに左に受け流しておきますの。


 もちろん美麗フィルターくらいは通しておきましてよ。無闇に聞き流しているだけではつまらないですからね。どんな情報であっても私なりの考察は挟んでおきたいのです。


 何食わぬすまし顔でジャミング装置の中をちらりと覗き見してみましたが、どこか渋い目をなさったプニの姿がいらっしゃいました。


 漂わせている雰囲気から察するに、あまり乗り気ではなさそうに思えます。


 その旨を総統さんにアイコンタクトでお知らせして差し上げますの。すぐさま爽やかなウィンクが返ってまいります。思わずキュンとしてしまったのは内緒にしておきますの。


 先ほどの発言に自ら補足するかのように、総統さんが更なる続きをお話し始めなさいます。



「あぁそうだ。もう一つ安心してほしい。何もイチから分解して徹底的に調べ上げたいわけではないよ。あくまで行うのは必要最低限の盗み見だけだ」


「ふっふんっ。ご主人様は嘘をつきませんのよっ」


 どこかムスっとした様子のプニの為、私自らが表情とボディランゲージとでサポートして差し上げます。


 ほらほらボーっとしてないで総統さんも畳み掛けてくださいましっ! 今を逃したら私の装備強化も機械弄り欲の解放も、どちらも叶いませんのよ!



「いいか。あくまで外部から簡易的にアクセスして、ブラックボックス化している部分の構成を見させてもらうだけ。ソレさえ済んだら以後は自由だ。

何ならお前さんのオートジャミング機能を強化してやってもいいぞ。これで連合側からの詮索も完全にシャットダウンできるようになる。少なくともその狭っ苦しい箱檻からは解放してやれるだろう」


「………………ほう、プニ」



 あらまぁ。案外そこまでの杞憂までは必要なかったのかもしれません。


 プニが微かに首を持ち上げられた理由も分かります。箱から出られるのであれば決して悪い話ではございませんもの。



 それにしても。そこまで譲歩して差し上げなければ聞き出せないほど、プニの中身は企業秘密の塊ということなのでしょう。


 普段は無線でやりとりをしているらしいので情報を目にすることはできませんが、隙を見て体内に通信ケーブルか何かを物理的に突っ込んだら有線でも拾い取れるのではありませんでして?


 安心の有線ですの。差し込みと引き抜きですの。


 右手の指で輪っかを作って、左手の指でズポズポと抜き差しをするジェスチャーを繰り返しておりましたが、皆さん苦笑いを浮かべなさるだけでした。


 あくまで機械に疎い箱入り娘が適当を宣っているだけですの。鵜呑みにしないでくださいまし。私が悪かったですの……ッ!



「もちろん情報の横流しっつーことはお前の元締めを裏切る形にはなるが……レッドを含む俺たちに着くか、それともお前だけでも元の居場所に戻っておくか、選べる道は二つしかないぜ。おまけにどちらを選んでも悔いは残るからより一層タチが悪いだろうな。

せいぜい後腐れのない方を選んでほしい」


 一瞬だけ怖い顔をなさいましたが、すぐにいつも通りの優しいお顔に戻られましたの。


 張り詰めた空気に翠さんがまた怯えていらっしゃいました。その手の中に二本目の白杖を生成しようとなさっていたようですが、隙を見て平手でピシャリと叩き落としておきました。


 余計なモノは施設内では御法度なのです。

 事件を未然に防いだ私褒めてくださいまし。



「はぁ……分かったプニ。元より乗り掛かった船だプニ。お前らの好きにするといいプニよ。

どのみちのこのまま連合に戻ったところで捕えられて廃棄処分になるだけプニからね。それなら少しでも長く茜と居られる未来を選ぶプニよ」


「プニちゃん……っ!」


 まったく。ジャミング装置まるごとを宙にぶん投げて喜んでいらっしゃいますの。茜ったらそんな上っ面な言葉だけで簡単に浮ついてしまうだなんてぇ……!


 あと相棒同士でイチャコラしないでくださいまし。私、何も持たない身ゆえに事象と人物の両方に嫉妬してしまいましてよ。


 茜がその気ならっ! 私も頼れる相棒の代わりに、総統さんに慰めていただきますけれどもよろしくて!?


 抜け駆けはお嫌なのでしょう?

 そう思うなら少しは抑えてくださいまし。

 単純な八つ当たりですけれども。



「よーし。これで方針は決まった。装置本体からの言質も取れた。それじゃ善は急げだな。レッドはこの後に装置を連れて研究開発室のところに来てくれ」


「はいはいりょうかーいっ」


「あ、あのっご主人様っ。私は? 私は何をしておけばよろしくて?」


 私にもお手伝いできることはございませんの? せっかく変身装置をパワーアップしていただけるのですし。


 お仕事の雑務でも下の処理でも、今の私なら何でもござれでしてよ。



「あー……ブルーは後輩たちと一緒に自室にて待機。時間のある今のうちに今後のことを話し合っておくといい。あと今晩は泊めてやってくれ。その間にベッド広いだろ?」


「了解ですのっ! ……はぇ?」


 ホントにそれだけですの!?

 何だか投げやり感がはんぱかなくはたりませんでして!?


 そんなに今すぐに機械弄りを始めたいんですの!?

 私の為に動いてくださっているところもあるので今更何も言いませんけれどもっ!


 そっちがその気なら私も私のお部屋でガールズトークを始めちゃいますからねっ!

 後々に混ぜりたくなっても男子禁制にしておきますので悪しからずっですのっ!





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