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プリンカップのSサイズ!

 

「んっぐぅぅ……ひぇぁっ!?」


 極限なまでに姿勢を低く保って、彼女の下半身目がけた足の横振り……つまりは〝足払い〟を放って差し上げましたの!


 不意に咄嗟を重ねて奇襲で割ったような一撃っ!

 がっつりクリーンヒットいたします!


 おまけにその場で一回転いたしましたので遠心力的なパワーも上乗せできておりますの。


 それでもダメージは低めですが、この模擬戦のルールはあくまで〝相手の背中を地面に叩き付ける〟こと……!


 お相手の両足を地面から浮かせることさえできれば、後に残すは地面に押さえつけることだけです。

 九割方こちら側が優勢になったと言っても差し支えはありませんでしょう。


 宙に浮いた彼女へのダメ押しとして、レッドの胸元の辺りを掴んで、真上から真下に重心を移して差し上げ――





――あらら? 何でですの?


 どうしてか手のひらに感触がございません。



 元々茜はちっぱいな方ですから手触りやらボリューム感については少しも期待しておりませんでしたけれども。


 それにしたって何の触り心地もないのはさすがに変なんですの。柔らかみの一つもございません。


 まるで(くう)そのものを掴んでいるかのような……?



 いえ、実際にその通りでございました。


 伸ばした右手をよく見てみれば。


 私は何も掴めていなかったのでございます……ッ!?

 



「あっはは残念っ! 美麗ちゃんと違って私には! 鷲掴みできるほどのおっぱい無いもんねーっ!」


「くぅぅぅぅっ!」


 なななんと! 茜ったら私の服の裾に手を伸ばして掴んで! そのたったの腕一本だけで身体をお支えなさっていたのです。


 まるでリンボーダンスをするかのような海老反り体勢ですの。器用に背中の接地を避けていらっしゃいます。



 気を取り直して再度捕まえようと手を伸ばしましたが一歩遅かったようです。一瞬の隙を突かれて股の間からスルリと潜られて抜け出されてしまいました。


 起き上がりざま、体操でいう〝前転跳ね起き〟をなさって充分に距離を取られます。お高くジャンプなさる最中、舌を出したべろべろばーの顔が見えてしまいましたの。


 その憎たらしいこと可愛らしいこと愛おしいこと……!



「くぅぅ! そんな挑発的な顔するんじゃありませんのっ! このほとんど合法ロリ体系! 超ちっぱい! プリンカップのSサイズ!」


「全部褒め言葉として受け取ってあげるよーだっ」


 思い付く限りの罵詈雑言を言い放って差し上げましたがあんまり効果はないようでした。


 普段から彼女の身体の柔らかさについては一目置いておりましたが、まさかこんなタイミングでお役立てなさるとは。


 度胸と体幹とに心の中で拍手をお送りいたしますの。

 もちろんかなり悔しいんですけれどもっ!



 すぐさま駆け寄って蹴りの追撃を放って差し上げましたが、全て華麗に身を捩ってかわされてしまいます。


 完全にスタートラインに戻ってしまいました。ピンチもチャンスも全て真っ白、ある意味では水の泡ですの。


 スタタと安全圏内にお逃げになり、余裕綽々にバク宙三回転までなさいます。


 着地して早々にレッドがパッパと手を払い、何事もなかったかのような涼しいお顔になられます。

 どことなくご表情も晴れやかに見えますの。


 勝ち気な微笑みが妙に腹立たしくて、懐かしくて、とっても頼もしくて……!



「ふふんっ。さすがはレッドですわね。やっぱり一筋縄ではいきそうにありませんのっ」


「ブルーの方だってっ。あの頃に比べたら手強さも厄介さも特盛りだよ。もうお腹いっぱいになっちゃいそう」


「まだまだご満足いただくにはお早いですのっ。今から新型ブルーの特別贅沢フルコースっ! 華麗にウーバー美麗して差し上げますゆえにっ!」


 お生憎、私のターンはまだ終了しておりません。


 あくまで黒泥スケートシューズの奇襲が空振りしてしまっただけなのです。すーぐに二の矢三の矢を放って差し上げますからどうぞ今のうちからお身構えくださいまし。


 

 もう一度靴裏を液状化させて地面を滑ります。


 泥操作にも慣れました。今度はS字やM字を描くように機敏に動いて翻弄して差し上げますの。


 手が届く範囲かと思いきや、すぐ離れて。

 遠くまでいったかと思いきや、肉薄して。

 フェイントなのか本命なのかも曖昧にして。


 いつ重めの一撃がやってくるか、目で追うのも一苦労なのではございませんでして!?


 隙を見せたら即胸倉を掴んで大外刈りをお見舞いして差し上げましてよっ!


 どうか集中力を切らさないでくださいましっ!



「ほぉらぐるんぐるんぐるんぐるんっと! 四回転つま先着地ジャンプもできちゃいますの〜ッ!」


「うわわっ、すごいすごいすごーいっ!」


 と、お互いにノリノリになってしまっていた丁度そのタイミングでございました。


 今まさに胸倉に掴もうと手を伸ばしたその最中のことだったのです……!




「――っと。茜、美麗、そこまでだプニ」



 茜の胸元に着けられた宝石化プニから、模擬戦中止のお言葉が放たれてしまいます。



「はぇっ!? どうして止めなさいますの?」


「んぇー。いいところだったのにぃ」


 もしや第二ルールのタイムリミットが来てしまいまして!? 花園さんか翠さんのどちらかがお目を覚まされたんですの!?


 こんなに爽快なバトル、ホントのホントに久しぶりでございましたのに!


 おまけに日頃の運動不足にもピッタリでしたのにぃ!


 もう少しだけスヤスヤとお眠りいただいていればよろしかったですのにタイミングの悪いこと……!



 とはいえぶー垂れていても仕方ありません。


 ひとまず私もレッドも手を止めて、プニの方に注力いたします。



 ですけれども。

 何だか様子がおかしいんですの。

 

 

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