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半ば冗談、半ば本気の野望はさておき

 

 皆の視線がプニの方に集中いたします。


 私も茜も、それに現役ちゃんたちも怪人さんのお二人さえも、彼の次の言動を気に掛けているようですの。


 それもそのはずです。発言次第では今後の動向が変わるかもしれないのです。


 私にご賛同いただけるようでしたら喜んでご協力を仰がせていただきますし、逆に反対されるようであれば、その……私も悪の秘密結社の一員として厳格な対処をさせていただきますの。


 冷たい言い方になってしまいますが、私とプニはもうお仲間ではありません。今は昔のよしみで和やかに過ごさせていただいているだけで……!


 敵対すると分かればそれはもう容赦なく……!



 と言いたいところなのですけれども。


 その判断を下すのは今ではございません。

 困ったらお上にご相談すればよろしいのです。


 順調に事が運ぶのであればそれに越したことはありませんの。



 とはいえ緊張のせいか、思わずごくりと喉を鳴らしてしまいます。


 彼も勿体ぶっているつもりはないのでしょうが、まるで深呼吸するかのようにフリフリと身震いをなさいますの。


 そうしてじーっと目を閉じて、ゆっくりと身じろぎをして、狭い筒カゴの中で更には身体を小さく縮こませて。


 ついに思いを決したのか静かに語り始めなさいましたの。



「……正直に言って、プニは今の連合が信じられないプニ」


「ほほぅっ!?」


「……いや、今に始まった話じゃないプニね。お前らと別れた直後から、〝本部〟の不審さについては薄々と感じ始めていたプニよ。

意に従わない者に対しての監禁や暴力、物資や資金の横領に加えて、明らかに権力を振りかざすような行動。さすがに冗長し過ぎだと思うのプニ」


 茜のお腹側に顔を隠して、後ろめたさ感を全開にしてお呟きなさってくださいましたの。


 漢は背中で語るの真逆バージョンです。叱られている子犬だってもっと堂々としていると思います。


 プニが後ろを向いたままお続けなさいます。



「ただ勘違いはするなプニ。あくまで美麗の意志を尊重してやるというだけプニ。

お前の目的がヒーロー連合の壊滅とか即時解散とか……度を過ぎた内容なら溶けてでも止めてやるつもりプニよ」


「むむ。そこまでやるとは……いえ、分かりませんの。場合によっては選択肢にも入りますの」


 私の暮らしていた地域は善良な魔法少女が目を光らせておりましたの。だからある程度の平和を維持できていたのです。


 もし連合側による無法な搾取に悩まされている地域があるのなら容赦はいたしませんの。


 私自らが奴らをコテンパンにやっつけて、その地域を弊社の庇護下に入れて差し上げましょう。


 その方がずっと楽しくて気持ちのイイ毎日が過ごせましてよ。毎晩のように酒池肉林の宴を催して、男も女も皆一律ハッピーな世界にして差し上げますの。


 国の法律がなんですの? 条例がなんですの?

 ヒーロー連合の秩序がなんだっていうのですっ!


 自由を追い求めて何が悪いんですのっ!?

 弊社がルールですの! 決まりは絶対ですのっ!

 


 むふ、むふふふふふ。



 半ば冗談、半ば本気の野望はさておき。

 今のままではホントに最低限な達成報酬なのです。


 対立こそ避けられましたが、決して前進できたわけではございません。更なる一押しが必要ですの。



「ということはプニはあくまで中立を貫き通すおつもりなんですの? 茜さんはとっくにこちら側の人間だといいますのに?」


「あはは、美麗ちゃんほど危険な思想は持ち合わせてないんだけどね……。私だって美麗ちゃんの力になれるならなってあげたいけど。でもほら、今のままだとさ。色々と限界があるし」


 ちらりとプニの方に視線を送られます。



 プニからの念話信号が再び届くようになったということは適合率の恩恵が、つまりは〝身体強化〟が受け取れるようになったという判断に至っても問題はないでしょう。


 片鱗自体は前々から見えていたかと思いますけれども。


 今のままでは少し丈夫になれただけですの。

 敵をやっつけるだけの力は身体に宿っておりません。


 茜が戦力になり得る為には。

 私と共に歩んでいただく為には。


 なんだかんだ言ってもやっぱりプニの〝変身装置としての協力〟が必要不可欠なのでございます。



 優しい口調で茜が語りかけなさいます。



「私はさ。自由の味を知っちゃったから元の暮らしには戻れそうにないんだけど……もう少しだけ、あと少しだけね。お外をのんびりとお散歩できればなぁなんて思うんだ。でもその為には、最低限自分の身体くらいは自分を守れるようにもならなきゃって。

私は私の手で居場所を〝取り戻したい〟の。また美麗ちゃんと一緒に戦えるようになりたいんだ

だからさプニちゃん。

……もう一度、私の力になってほしい」



 ある意味ではこれは、茜からプニへの逆プロポーズですの。


 私がひだまり町に引っ越す前、きっと茜にはプニからのアプローチがあったことでしょう。



 君には才能があるプニ、と。

 プニと契約して魔法少女になるプニ、と。



 今日はその日の逆なんですの。

 茜からプニへと向けられたお誘いの手です。


 たとえこれは元の組織に反旗を翻すことになるのだとしても。


 

 また私の力になってほしい、と。

 また私と一緒に戦ってほしい、と。

 もう一度魔法少女プリズムレッドになりたい、と。



 別れる者(私たち)がいるならば、また寄り添う者(茜たち)がいても別に構わないと思いますの。


 サヨナラしなくて済むのなら、しないに越したことはございませんから。



「………………少し考えさせてほしいプニ。そうプニね。あくまでプニだけが内部の情勢を独自に調査して、必要に応じて結果を教えてやるくらいなら……協力してやれんこともないプニ」


「はぇっ! つまりはスパイってことですのね!? なかなかにクールガイですの!?」


「コラ。人聞きの悪い言い方するなプニ」


「なんでぇーカッコいいではありませんのっ!」



 スパイとはなんて魅力的で蠱惑的な響き!

 人の目を欺いて実直に任務を遂行する……!


 どこをどう見ても頼れる男って感じがいたしますの。無骨さと無口さに乙女心がキュンキュンしてしまいますわね。


 おっとカメレオンさんは別ですの。確かにスパイさんですしキュンキュンいたしますしカッコいいのも認めますけれども。


 しかしながら彼はどんな餌でも釣り上げられませんの。こんなに美味そうに熟れた据え膳を召し上がってくださいませんの。


 そんな殿方さすがにぶーですのッ!



「そんなこんなプニから……えっと、そこのトカゲ型怪人とハチ型怪人」


「一応言っとくが俺はカメレオンだ。間違えんナ」


「ふむプニ。また近いうちにココを訪ねさせてもらうプニ。そのときまで茜をよろしく頼みたいプニ。この子、けろっとした顔のように見えて、胸の内な色々と溜め込んでしまうデリケートなタイプなんプニ。諸々ケアしてやってもらえると助かるプニ」


了解いたしました(言われなくとも)


 振り向いたプニがぺこりと凹んで頭をお下げなさいました。手のひらサイズの水饅頭ながらとっても誠実そうな見た目になっております。


 話題の茜は「んもー」と口を窄めて抗議のお顔をなさっていらっしゃいます。デリケートなタイプという点については私も全面的に同意いたしますの。


 人一倍正義感と情に厚い子ですからね。心と記憶を取り戻した今なら尚更だと思いますの。

 

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