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鉄は熱いうちに打ちますの

200ページ達成ッ!

読者の皆様ッ!

応援ありがとうございます!

 

 だって考えてもみてくださいまし。


 借家ならともかく、あの家は蒼井家直々の所有物だったんですの。それに地代も税も全て実家が払っていたのです。ゆえに家賃やら何やらを取り立てられる心配はございませんでした。


 何の足枷もなく、私たちはただ蒼井家の命令に従ってであの家に住んでいただけに過ぎないのです。


 住む者が居なくなれば不要となるのもまた事実、ということなのでしょうか。それではあまりに短絡的で……。



「……さすがに……あんまりですの。もう久しく会っていなかったとはいえ、こうも簡単に娘を捨てられるものなんでして……?」


 複雑な家庭事情だったとは自負しておりますが、私も蒼井家のイチ令嬢として、世を捨てるその瞬間まで、なるべく生き恥を晒さぬように努力しておりました。


 お(いえ)の為に頑張っていたはずなのです。



 最愛の娘のためなら、行方をくらました後でもずっと探してくださったり、せめて帰る場所を残していてくださったりするのが道理ではございませんの……?


 まだ失踪からは三年と余月しか経っておりません。なのにあまりに結論付けが早すぎやしませんこと……?


 考えに耽っても結論に辿り着けるわけではございませんが、腑に落ちないところは多々にあるのでございます。



 何か私の知り得ないところで大きな物事が動いているような気がして。


 けれどもこの胸騒ぎを沈める方法を私は一つとして持ち合わせていないのもまた紛れもない現実なのでして。


 行き場を失った不安や、恐れや、戸惑いや、疑いが、私の脳内でぐるぐると渦を巻いてしまっているのです……!


 それどころか少しも留まることを知らず、どんどんと肥大化してしまいまして……ッ!?



「ああダメですの! しっかりなさいまし蒼井美麗ッ!」


 急いで頬を叩いて気を取り直します。こんなところで精神メルトダウンしてはいけませんの。


 メイドさんの問題にケリを付けたら今度は()()()の背景と向き合ってみる必要がありそうです。


 洗脳補助カプセルによって、己の〝過去〟を振り返ることは出来ましたの。


 お次は私の〝現在〟を、つまりは置かれたこの状況とかなぐり捨ててきた血筋とを紐解いて、これまで見ていなかったところを見つめ直す必要があると思うのです。


 唯一の手がかりはメイドさんですの。


 実家との繋がりは、まだ子供だった私よりも、保護者的立場であった彼女の方が圧倒的に多かったのですから。


 ……聞き出す為にはお目を覚まされていただかなければ話になりません。さらにその為には妹さんのご理解とご協力をいただく必要が出てくるのです。


 数あるタスクも全ては一つに集約されましょう。



「一個一個片付けていくしか道はありませんわね……! まだまだ先は長そうですの」


 残念ながら、提起された問題をマルチタスクで熟せるほど私の処理能力は高くないのでございます。


 結社の皆様方には引き続きご迷惑を掛けてしまいますが、私の持ちうる全ての愛嬌と愛情でまるっと許していただきますの。


 下を向いていても前には進めません。


 しかめっ面の私なんてメイドさんも見たくありませんでしょうし。総統さんだって心も身体も萎えてしまいますでしょうし。


 不安な心は可能な限り笑い飛ばして差し上げますの。おっほほほっほ……ふぅ。



「こうなってしまった以上、また来ますのとは軽々しく言えませんけれども。それでもあえてアイル・ビー・バックと言わせていただきますの。

いつか必ず納得できる回答を見つけて差し上げます。だからそれまで、せいぜい誰にも使われない更地のままで居てくださいまし」


 地ならしされてしまった跡地をしっかりと目に映し、改めて決意の息を呑み込みます。


 もし私が地下施設からお引越しするようなことがあれば、結社に頼んでココにひだまり支部を設けていただきたいですの。そうして私が住み込み支部長に就任するのです。


 世界の征服自体は総統さんにお任せいたしますから、私は妻として部下として、陰ながらこの町からお支えして差し上げる所存ですっ!

 


「うふふっ、さすがに夢物語が過ぎましてよ」


 半分は冗談ですの。叶えるにはまず愛玩動物(ベッド)的な立場を脱却する必要がございますし。しかしそのつもりはあんまりないのですし。


 愛されるだけで大満足してしまっておりますからねー。それ以降の欲はホントに薄いに等しいんですのー。薄口しょうゆもびっくりなレベルですのー。


 温かくて柔らかなベッドがあれば充分すぎるほどなのです。



「ふふっ。そうですの。何を馬鹿なことを。私の帰る家はご主人様のところただ一つだけなのです。ここはもう〝過去〟の地でしかありませんの。今更ウダウダ嘆いている暇はございませーんのっ」


 サヨナラを告げる代わりに、ヒラリとスカートを翻して差し上げます。ついでに踵を返して背中で語って差し上げますの。


「過去の向こう側にこそ現在が続いているのです」


 未来には〝向かうべくして〟進みましょう。

 

 ほんの少しだけ脇道に逸れてしまいましたが、そろそろ本日の主題に立ち向かうことにいたします。


 千里の道も一歩から。いついかなるときも、手元に抱えた問題は一つずつ解消していくのが一番なのです。



「では学校に向かいましょうか。ここだけはホントにバレてはいけませんの。不法侵入甚だしいんですの。私、今はもう在校生でも卒業生でもないのです。ただの部外者Aさんに過ぎないのです……!」


 高校お受験とか、卒業式でのお涙とか、色々体験する前に歳をとってしまいましたからね。


 地下施設で過ごしている間に高卒認定資格を取得しておりますから別に学歴的なコンプレックスはないのですが、やっぱり思い出的な部分では悔いが残っていないとは言い切れませんの。


 修学旅行とか林間学校とか、茜ともっといろんなイベントを楽しみたかったというのが本音です。


 そう。間違いなく、私の本音なのです。



「…………なぁんだ、ですの。私にもしっかり時間が流れているではございませんの。悲しくも安心できましたの。

ただ、若さという名の砂時計は、二度とひっくり返ってはくださいませんのよ……」


 あらやだ、私ったらとっても詩人的。

 おセンチメンタル極まりないですわね。


 辛気臭さで小ジワが増えてしまいましてよ。

 まだピッチピチの10代ですけれどもっ!


 自身へのツッコミも程々にいたしまして、私は学校への経路をズイズイと辿ってまいります。


 長く険しかった急坂も、厳しい筋トレを重ねた私には障害にはなり得ませんの。現役時代の頃は登下校だけでヒィヒィ言っておりましたのに。


 あの頃は修行が足りませんでしたの?

 いいえ、そうではございません。軽度の人体改造の成果と、変身装置由来の黒泥補筋外装(マッスルスーツ)機能のおかげですの。


 小難しい言い方をいたしましたが、ようは黒泥のドレスワンピース&ヒールを身に付けていると身体能力にプラス補正が掛かるのです。


 手軽に身軽にチカラを得られますの。

 おまけに視力も0.3ほどアップいたしましてよ。




 思考混濁に盛り上がっておりますと、誰ともすれ違うことなく校門前に到着いたしました。


「さぁて、それでは花園さんを探しまして……よ?」


 首を左右にキョロキョロと――する必要もありませんでした。


 校庭の内側を覗き込んだタイミングでっ!

 とある少女の姿がこの目にググっと飛び込んできたのでございます!



 校庭内に設けられたゴムトラックの上を全力疾走しているあの女子生徒、明らかに周囲から浮き立つような綺麗なピンク色をしていらっしゃいますの。


 コレはもう十中八九ビンゴでしょう。お目当ての花園桃香さん当人に間違いありません。


 これはなるべく目立たないように接触を図りませんと。なるべくお友達や部活の同輩方とは離れて、単体でお話したいんですの。



 とりあえず校庭の周囲に生えている樹木の後ろに身を隠してみます。


 こちら側を見ているタイミングで指振り腕振りちょいちょいと、手招き的な合図を送って差し上げますの。だからお気付きくださいまし。


 ふぅむ。ふぅむ。


 ダメですの。手招き程度では全く効果がございません。

 かくなる上は、変装してからの直接接近でして……!?



「……偽装 - disguise -」


  声で注目を集めないよう、蚊の鳴くような声量で呟いて差し上げます。


 善は急げですの。

 思い立ったが吉日ですの。

 鉄は熱いうちに打ちますの。


 瞬く間に衣類が黒泥と化していきます。

 

  

 

改めまして、200ページ&60万字達成!

日々の応援誠にありがとうございます!

既にラノベ約6冊分も書いたんですねぇ……!


頭の中のストーリー、ようやく半分くらいでしょうか。

これからも少しずつ書き連ねてまいります!


ではでは皆さんっ!

今後とも〝もとまほにっぺん。〟を

よろしくお願いいたしますのっ!

 

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