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ふぅむ……ふぅむ……むむ?

 

 怪人のお二人を誘導して差し上げながら、私の捜索担当エリアへと急ぎます。パドックから離れていくにつれて、どんどんと人の気配が無くなってきたのです。


 林の小道を抜けますと、少し開けた場所に出ました。



「えっと、えっと、確かこの辺が……そうですの! 和風庭園エリアですの!」


「ほう。確かにココなら隠すのにうってつけだナ」



 賭け事に疲れた皆様の憩いの場所、リラックスを前面に押し出した和風庭園でございます。


 場内地図を見た限りではもっとこじんまりとした場所かと思っておりましたが、結構広めに作られているんですのね。


 中央には池が設けられておりまして、一周するだけでパドック周回の時間が終わってしまうのではないか、というくらいの大きさなんですの。


 鯉やマガモがのんびりと泳いでいらっしゃいます。ここだけ時間の流れがゆっくりしているように感じられますわね。


 池の中へ迫り出した屋根付きの休憩スペースなんかも用意されているようです。ちゃぽちゃぽという鯉の泳ぐ音を聞いていると、自然と頭の中を空っぽにしてボーッとできそうな気がいたしましてよ。


 池の周りを囲うように数多の木々が植えられておりますの。こちらは桜でしょうか。きっとお花見シーズンがなったら映えますでしょうね。水の流れも無いので綺麗な花筏が見られると思いますの。


 競馬場にこんな癒しの場所があったなんて。知る人ぞ知る穴場的なスポットなんでしょう。



 しかしながら。このまま放っておいたら爆弾で木っ端微塵に破壊されてしまう可能性が高いんですの。


 想像するだけで心苦しくなってしまいます。


 幸いこの場には三人もいるのです。広さにビビってはいけませんわね。皆で隈なく探せばきっと見つかるはずです。



「それっぽいモノを見つけたらお互いに声掛けて知らせよう。勝手に触るのは厳禁だ。何が爆発のトリガーになるか分からん」


「了解ですのっ!」



 お声掛けとほぼ同時に、カメレオンさんは俊敏な動きで大跳躍をなさいました。空中でくるりと一回転なさいますと、対岸の茂みの中にスタリと着地なさいます。


 するとどうでしょうか。周囲に溶け込むかのように姿をお消しになったのです。


「俺のことは気にすんナ。俺は俺のやり方で探させてもらうだけサ」


 お声だけがこの耳に届いてまいります。


「はえー……」


 木を隠すなら森の中、カメレオンさんを隠すならどこにでも、と言ったご様子ですの。隠された爆弾のお気持ちになってお探しになられるのでしょうか。プロの工作員さんの御心はイマイチ分かりませんのね……!



「んじゃお嬢。あっしは右回りに探してみますぜ」


 モグラさんもどこからか取り出されたスコップを片手にスタコラさっさと捜索に出られました。


 こうしてはいられませんの。

 私も肉体労働に勤しみましょう。



 左回りとなりますと、ルート上に屋根付きの休憩スペースが入ってまいりますわね。見るからにあそこが怪しそうなのですから重点的に探索してみましょう。


 とりあえず見落としがないように目の前の茂みから足を踏み入れてまいります。


 岸辺も水の中も目を凝らして探してみます。

 怪しげなモノは、見当たりませんわね。


 こういうときはレーダー的なモノがあれば便利なんですけれども。私が現役時代のときはプニやポヨがその役割を担っておりました。


 毎度毎度に報告されてやかましいことこの上なかったですが、怪人さんの出現や接近など、自分で探す手間が省けて便利だったことも事実なんですの。



「はて、そういえば……?」


 プリズムピンクさんやプリズムグリーンさんは、胸にどなたを付けていらっしゃるのでしょうか。


 薄れた記憶を辿ってみます。プニポヨの正式名称は確か、自立AI搭載型の最新式怪人撃退用個人変身装置だったかと……。


 戦闘中においても、彼女たちはお互い以外に会話をしている様子はございませんでした。何と言いますか、変身装置自体の気配は少しも感じられなかったのです。


 もしや音声通話から念話レベルにアップデートされておりまして? それとも怪人や第三者の私をご警戒なさっていらっしゃったり?


 その分フリーのときは大変でしょうね。あの子たち、意外にお喋りでしたから。四六時中話しかけられてしまう可能性が出てきてしまうわけなのです。

 

 心中お察しいたしますの。

 さぞおストレスのお溜まりになることでしょう。



「はーっ、にしても見つかりまっせんのー」


 もやもやとした思考を続けている中、少しの痕跡も見つけられない私は、爆弾位置予想の大本命、屋根付きの休憩スペースへとついにやってまいりました。


 ひとまず水面に迫り出した手摺り柵の部分まで近寄ってみますと、頬を撫でる風がとても心地よく感じられました。ここは他よりほんのりと涼しげですの。マイナスイオンを感じてしまいますの。


 ここ一時間の間に走ったり焦ったりとちょっとだけ汗をかいてしまいましたので、この風が私の心と身体をヒンヤリと冷ましてくださるのです。いいリセットになりますわね。



「カメレオンさーんっ、そちら側から何かお見えになりませんでしてーっ? 例えばー、この柵の下とかですのー」


 さすがにこの身を水の中にポチャンして探すわけにもいきませんからね。どれだけ深いか分かりませんのです。

 見た感じでは水深60cmくらいでして? 


 もしこの床裏に設置していたのであれば、取り付けの際に下半身がビチャビチャになっていそうです。


 オレンジ怪人からは戦闘中にはその気配を感じられませんでした。少なくとも衣服は乾いておりましたの。


 おそらくは有り得ないと思うのですけれども、念には念を入れての確認です。



「外から眺めた感じはー、屋根にも床下にも見当たらネェナー」


「はーい了解ですのー、ありがとうございましー」


 やはり声だけが返ってまいります。

 残念ですの。収穫は無しでしたか。


 ということは、内側に集中すればいいということですわよね?


 天井、ベンチ、柱の影…、まだまだ見なければいけない場所は沢山ございます。


 と、ちょうどそのときでございました。



 南の空に、一本の光柱が見えたのです。


 まるで夜闇に放たれたスポットライトのように、天高く真っ直ぐに光が伸びておりますの。ほんのりと緑色に光るソレは、すぐに魔法少女の浄化の光だと分かりました。


 合図を事前に決めておいてよかったですわね。


「……なるほどお仕事がお早いですこと。私もさっさと発見してドヤドヤして差し上げませんとっ」


 あの方角であれば、おそらくは南門に向かわれたプリズムグリーンさんのお知らせだと思われますの。さすが事前に怪しげな場所をごピックアップなさっていただけはございます。


 あとは彼女の浄化の光で跡形もなく処理出来ることをお祈りいたしましょう。引き続きお任せいたしましたわよ。



 その数分後には東の空からも桃色の光が確認できました。どうやら戦闘場所付近を探されていた花園さんも無事に爆弾をご発見なさったようです。


 中々優秀な後輩ちゃんたちですの。やっぱり彼女たちは変身装置のレーダー的な機能を駆使なさっているんでしょうか。


 私のブローチにも便利機能が付いておりませんでして?


 今度総統さんにお頼みしてみましょうか。事件性がないときでも、どこで脱いだか忘れてしまったおパンツの捜索には使えましてよ。わ、私のではございませんの。茜のですのっ!



「ふぅむ……」


 いかんいかんですの。

 余計なことを考える前に手を動かすのです。


 迫り出した部分や天井付近の捜索は一旦終わりにして、今度は膝下部分の確認に移ります。


 よっこらせっと屈み込みまして。

 床の隙間や柱の影を隈なく探します。



「ふぅむ……ふぅむ……むむ?」



 木製ベンチの裏底に気になるモノがございましたの。

 

 ガムテープでベッタベタに貼られた……こちらはティッシュ箱サイズの直方体でして?

 白い丸で囲まれた〝2〟という数字が見えます。


 変ですの。謎ですの。見るからに怪しいですの。


 怪人のお二方、一旦お集まりいただいてもよろしくて? 

 アナタ方のご意見もお聞かせくださいまし。

 

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