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これが戦略的馬券購入術……ッ!

 

「ただの一頭を当てるよりも、二頭を同時に当てる方が難しいのは当然分かるよナ?」


「当たり前ですのっ」


 単に確率のお話として考えてよいのであれば。


 15分の1をただ当てるよりも、15分の1を当てた直後に14分の1も当てる――つまりは210分の1を当てる方が文字通り何倍も難しいってことですものね。


 もちろん話を聞く限り競馬の場合は〝見るからに強そうなお馬さん〟と〝どう転んでもまだ勝てなさそうなお馬さん〟が一緒に走るようですので、実際の数値はこんな単純なモノにはならないのでしょうけども。


 とはいえ条件一つよりも条件二つの方が難しいに決まっておりますの。

 絶対に勝ちそうな子だけでなく、その後に来そうな2番手の子も考慮する必要があるとなると、今よりももっとずっと頭を使ってお馬さんを選定していく必要が出てきそうです。



「素直でよろしい。一頭より二頭、二頭よりも三頭と数を増やしていった方がずっと難しくなるよナ。同じく、単に頭の一頭だけならまだしも、三頭かつその順番までもドンピシャリに当てるってなると格段に難しくなるわけだ。

そこで出てくるのがオッズの話だ。より精度の高い予想が必要な馬券は、総じてオッズも高くなっていくという法則がある」


「ふぅむふむふむ」


「なんとなく察したと思うが、競馬には単に1着を当てるだけの単勝だけでなく、〝何頭を当てるのか〟と〝その順番を考慮するか〟を加味した難易度別の買い方がいくつか用意されてるんだ。

当然、当てるのが難しい買い方、イコール、オッズが高い買い方ってわけだナ。少し待ってろ。今表にして見せてやる」  


「ほほいですの」


 そう仰るとカメレオンさんがお手持ちの携帯端末に何かを打ち込み始めました。


「馬券種別に感しては……大まかには単系と複系に分けられると言ってイイ」


 おおかた入力し終わったのか、私の方に画面を傾けて見せてくださいます。どれどれ……?




【単系】

単勝(たんしょう)……1着を当てる買い方。

馬単(うまたん)……1着と2着を順番まで完全に当てる買い方。

三連単(さんれんたん)……1着から3着までを順番含めて完全に当てる買い方。


【複系】

複勝(ふくしょう)……1着から3着までに入る馬のうちの一頭を当てる買い方。順位自体は問わない。

・ワイド……1着から3着までに入る馬のうちの二頭を当てる買い方。それぞれの順位自体は問わない。

馬連(うまれん)……1着と2着の馬の両方を当てる買い方。両者の順番は問わない。

三連複(さんれんぷく)……1着から3着までに入る馬全てを当てる買い方。それぞれの順番は問わない。

枠連(わくれん)……馬番号ではなく、一定のゲート番号の括りで1着と2着になる馬の枠を当てる買い方。



※複勝は六頭立て以下のレースでは1着か2着のどちらかまでとなるので注意が必要。

※枠連は九頭立て以上のレースで発売。

※地方競馬での馬連は馬複に相当する。また枠単という独自の買い方も存在する。




「はぇー。こうやって見ると結構あるんですのね。とはいえ、基本的には頭数に応じた単と複が対になってるように見えましたの」


 単勝に対しての複勝、馬単に対しての馬連、三連単に対しての三連複って感じです。


「ええと、順番までピッタリ当てるのが()系、該当の順位までに入っていればよいのが()系という認識で合ってまして?」


「おう。それだけ分かってりゃ上出来かもナ。この中で言ったらワイドと枠連が特殊系だ。

ワイドの正式名称は〝拡大馬番号(かくだいうまばんごう)二連勝(にれんしょう)複式勝馬(ふくしきかちうま)投票法(とうひょうほう)〟という。ま、要するに馬連の有効範囲を3着までに緩めた優しめの買い方って考えれば分かると思うゼ」


 ふむふむ、馬連の簡易版ですか。複勝よりも当てる頭数が多い分少しだけ難しくなりますが、馬連よりは順位に余裕がある分簡単って位置付けなんでしょうね。


 当てやすくなった分、きっとオッズも低めに設定されていることでしょう。


 となりますと、馬連じゃなくてワイドだったら当たってましたのにーとか、逆に1着2着に来るなら馬連にしておけばもっと儲かりましたのにーとかとか。

 プラスの意味でもマイナスの意味でも購入馬券の駆け引きが生まれてきそうな予感ですの。


 当てやすさを選ぶのか、それともリターンを選ぶのか。その辺の買い方調整が収支を左右するということですのね。


 難解なレースは手広く当たりやすいものを買えばいいですし、自信のあるレースはガチガチに固めたドンピシャ狙いの買い方をするという作戦も選べそうです。


 もちろん全ては自己責任で、の話ですけれども。

 どおりで皆さんが頭を悩ませているわけですの。



「ちなみに枠連に関してはアレだ。騎手の被ってる帽子の色で1着と2着を当てればオッケー。例えば7-8なら7枠オレンジと8枠ピンクが1着2着に来れば当たりって感じだナ。両者の順番も問われない」


「馬連の枠バージョンということですの?」


「ああ。人気馬が馬群に沈んでも同じ枠の穴馬が来てくれさえすれば当たりになるから、馬連の保険買い的な手としても使えるだろう。

もしくは実力や人気が近そうな馬が横並びしてるときなんかに有効だ。どちらかが来ればイイんだからナ」


 へぇ。なかなか面白い買い方ですの。慣れてきたらこちらも買ってみることにいたしましょう。


 カメレオンさんが得意気にお続けになられます。


「もちろんピンクが1着で、もう片方のピンクが2着っていう8-8なんて買い方も選べはするが、そんときは馬連でよいのでは? と疑ってみるとイイ。両方のオッズを見比べて、より美味しい方を買っておけば若干お得ってコト」


「ほえー……!」


 これが戦略的馬券購入術……ッ! とでも言うのでしょうか。より簡単に確実にお金を増やす為に、効率的かつ効果的に購入馬券を選択する……ッ!


 とはいえ人生初の馬券購入は小難しいことを考えたくありませんの。一回牽制のボール球を投げるくらいは構いませんが、基本はど真ん中のストレートで勝負したい気が満々ですの。


 ……となりますと。

 買い方はもうアレしか残されていないですわね。



「それでは、改めて投票カードの書き方をお教えいただけまして?」


「いいだろう。買う馬はもう決めてるのか?」


「ええ。最初ですので気になった子の単勝と複勝をそれぞれイイ感じに」


「ンならベーシック一択だな」


 手渡された三枚の紙の中から黄緑色の用紙を机の上にひらりと置いてみます。えっと、確かベーシックというとコレのことを言っておりましたわよね。


 つい先ほどまでは目と頭を使って脳内予想を巡らせておりました。今度は手を使って予想を具現化させる番ですの。


 ただ、この丸のうちいったいどれをどのように塗り潰せばよろしいんですの? ざっと見た感じ丸が400個くらいありますの。まるでプチプチ梱包緩衝材みたいにギュウギュウに丸が連なっておいでです。


 そもそも塗り潰し用のペンはどちらに……?



「ほいコレ、クリップペンシル」


「あ、タイムリーなご対応感謝いたしますの」


 たった今彼から手渡された記入用具は先っちょに鉛筆の芯だけが付いている簡素な鉛筆です。上部が何かを挟めるような形状になっておりますので、気軽に新聞にもくっ付けておけそうなデザインです。お手頃でありがたいシロモノですの。


 よく見てみれば紙束のすぐ横に纏めて置いてありました。実際に手に握りしめてみますと、特有の小ささが私の手にピッタリフィットしてくださいます。塗り潰しも難なく行えそうです。



 ではっ、改めまして、いざ記入とまいりましょう。


 さぁさぁご指示と解説をっ!

 引き続きよろしくお願いいたしますのっ!

 

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