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ソロモンの怠惰  作者: Atria
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2章、悪魔の力、吹き荒れる嵐と嵐

二章、過ぎる嵐と透過の王

凛太「起きろバアル、そろそろ7時だぞ」

ほの暗い部屋に光の粒が入り込んでくる。

バアルは蜘蛛の手で眼を擦りながら体を起こす。

バアル「ご主人様、今日は…ふぁ…早いんですね」

バアルは欠伸をしながら話す。

凛太「当たり前だろ、寝てる時に昨日の男が来たら抵抗もできずに殺られるからな」

バアル「いつもこれくらい早かったらいいんですけどねぇ」

凛太「いつもは眠い、以上。アスタロトもういいぞ、助かった」

凛太は部屋にいる毒蛇に対して話かける。すると外からボウッと風が巻き起こる。窓から外を見ると3mくらいのドラゴンに跨がった天使が現れる。

アスタロト「主よ、目覚めましたか貴方様がお休みになられている間、何事も起こりませんでした」

凛太「そうか、苦労をかけたな」

アスタロト「いえいえ、私共は貴方様の使い魔故お気になさらず。」

アスタロトがそういうとその姿は次第に薄くなり消えていった。

バアル「いつの間にアスタロトを召還してたんですか?そもそも私がいるからご主人様の安全くらい守れますよ!」そう言いぷくぅっと頬を膨らませる。

凛太「召還したときお前は既に寝てたぞ。それと今日はお前にも頑張って貰わないといけないからな」

バアル「何か作戦でもあるんですか?」

先程、凛太に頑張って貰わないといけないからなという言葉に眼をキラキラさせながら聞いてくる。

凛太「いいか?今日の戦いはまずヴィネの権能(ちから)を使ってだな…」

~数十分後~

バアル「成る程、ご主人様はやっぱりめんどくさがりですねぇ」

やれやれと言わんばかりに首を左右に振る。

凛太「まともに戦っても勝てる気がしないからな」

バアル「そうですか?我々が居るのに?」

凛太「確かにお前達、ソロモンの悪魔は72(たい)居る。だから多種多様な能力、効果がある。でもな?それは不意を突くから強いんだよ。」

バアルはうーむとでも言いたげな表情をしている。

バアル「確かにそうかも知れませんね、ところでご主人様」

凛太「なんだよ?」

バアル「時計見てください」

凛太「ん?時計…ふぁ!?」

凛太が壁掛け時計を見るとその針は8時に迫っていた。

凛太「遅刻するじゃねぇか!!!」

バアル「やっぱりご主人様はちょっと抜けてますね!」

バアルがとてつもなく良い笑顔で毒を吐く。

凛太「くそっ!バアル早く来い!急ぐぞ!」

バアルが蜘蛛の脚をせっせと動かし肩に登ってくる。

家のドアをバタンと開けすぐに鍵を閉めて駐輪場までの数十メートルを走る。

凛太「急げ急げ!」

今日もあわただしく学校に向かう。

風が全身に当たり少し肌寒く感じる。

バアル「今日は冷えますねぇ」

などと呑気な事を言っているが無視して自転車をこぎ続ける。

ようやく学校に付くと人気(ひとけ)のない場所に移動する。

バアル「作戦開始♪」

凛太「ソロモンの名において命ずる、悪魔の王ヴィネよ、その権能以て我が眼となれ。」

ヴィネ「うぃーす!ご主人やっと呼びだしてくれたのかぁ!俺、頑張りますよ」

ヴィネはライオンの獣人で人とあまり変わらない見た目をしており、違いがあるとすれば頭のてっぺんにライオンの耳があるくらいだろう。

凛太「あ、あぁ」

想像と異なりチャラい。

ヴィネ「おぉ!バアル!久しぶりだねぇ!」

バアル「うぅ、私はいいですから早くご主人様の要件を聞いて下さいよ」

ヴィネ「解ったよ、ご主人、要件は何すか?」

凛太「お前の権能(ちから)を借りたい」

ヴィネ「いいっすよ、俺の千里眼で見えないモノはないですから!」

凛太「その千里眼を俺の右眼で使える様にしてくれ」

ヴィネ「わかりましたっす!少し右眼を閉じてても貰っていいですか?」

凛太「解った」

そういい右眼を閉じる。ヴィネの右手が金の粒子の様なもので覆われ俺の右瞼(みぎまぶた)に触れる。

金の粒子が俺の瞼に当たり吸い込まれていく。何秒くらいたっただろう、すぐに金の粒子はなくなり、俺の右眼の虹彩を囲む様にして金の輪を作る。

ヴィネ「千里眼の使い方は解りますか?」

ヴィネが少し不安そうに尋ねてくる。

凛太「一応教えてくれ」

ヴィネ「解ったっす!俺の千里眼は眼を開けてても閉じてても使えます。で、千里眼を使っている時はボウエンキョウ?だったかなそれを覗いてる感じです。ご主人が望めば高度、向き、場所が簡単に変えられます。頭の中で念じるだけっす!どうですか?簡単でしょ?」

凛太「まぁ、それなりには解った。ありがとうな」

ヴィネ「その千里眼は俺の召還を切っても発動したままなので終了したい時はまた声を掛けて欲しいっす!」

凛太「解った、じゃあ一回召還を終了させるぞ?」

ヴィネ「ういっす、ご主人の健闘を祈ってます!」

ヴィネはそう言い残し景色に溶けていった。

バアル「ヴィネはチャラっぽいから苦手です」

制服の袖の中に隠れてた(ヴィネは見えてる)バアルが再び肩まで登ってくる。

バアル「悪い悪魔じゃないんですけどねえ」

凛太「悪い悪魔って重複してないか?」

バアル「そんな事はどうでもいいんですよ!ともかく彼のお陰で千里眼を使えるので早く黒ローブを探しましょう!」

意気揚々とバアルは手を振る。

凛太「作戦通りに動くぞ」

教室に向かって歩き始める。

凛太は常に千里眼を発動し、上からの視点で学校周辺を見渡す。

バアル「あのーご主人様、時間過ぎてないですか?」

凛太は少し立ち止まりプルプルと震えだす。

凛太「やべぇ!!!」

急に全速力で走り始める。予鈴のチャイムが鳴り響く。教室まではあまり遠くなく、ギリギリ間に合った。

先生「既にみんな知ってるかも知れないが昨日から岡部が行方不明らしい、何か知ってる奴は居ないか?特に辻本、お前は岡部と仲が良いから何か知らないか?」

凛太「し、知りません」

唐突に振られてビックリしながら答える。

先生「まぁ、何か知っていたり、岡部を見掛けたらすぐに教えてくれ。」

凛太を含めた生徒達が返事をする。

授業が始まってからは凛太は寝るような体勢をとりずっと千里眼で黒ローブの男が居ないか見続ける。


~数時間後~

昼食を終え、昼下がりのとても眠たくなる時間帯にうとうとしながら遂にその姿を捉えた。

そして、学校中に非常ベルの音が鳴り響く。

ジリリリィンと脳内にのこる様な不快な音を立てる。

先生「みんな落ち着け、誤作動だろう」

校内放送「不審者が我が校に侵入しました。生徒達は慌てずに先生の指示に従いましょう。」

無機質な機械音声が流れる。

その無機質さは生徒達を恐怖に陥れるには十分過ぎた。

凛太「バアル、来たぞ。黒ローブは今、学校の玄関だ!」

バアル「解ってますよ!それにしても大胆に突っ込んで来ましたね。」

凛太「…嘘だろ?」

バアル「どうしました?」

凛太「あの黒ローブ、校内警備員をこ、殺しやがった…」

バアル「まぁ、そうでしょうねぇ」

バアルは仕方ないと言った風に溢す。

凛太「狙いは俺だろうな、バアルここを離れるぞ!」

バアル「やっと殺れるんですね!」

凛太「無力化だけだからな?」

バアルはチェッとでもいいたげな表情で周りを見る。

侵入者に怯えている他の生徒に聞こえない様にバアルと話す。

バアル「では、始めますよ?」

凛太「あぁ、始めてくれ」

バアル「吹き去る嵐の慈悲よ霧散せよ、<慈悲の霧散>」

バアルの掌から放たれた白色のとても薄い光が体に吸い込まれていく。数秒後に凛太達の姿は見えなくなった。

バアル「私の<慈悲の霧散>は外界から自分達の姿を見えなくする効果があります」

凛太「効果時間は?」

バアル「最長で30日くらいですかね、まぁそんなに要らないでしょう。またこの魔法にはいくつか注意点があります。」

凛太「どんなのだ?」

バアル「1.見えていないのは姿だけなので音や匂いはそのままです。2.魔法解除(ディスペル)されると効果が消えます。3.神格が私より上の者には効果がない事。このくらいですかね」

凛太「だいたい解ったが3つ目のはどういう事なんだ?」

バアル「私の神格はソロモンの悪魔の中では"王"最高の神格ですが別の神話や神話生物の方が高い場合があります。その場合効果が薄いか全く無いです。ちなみに御主人様の眷属である我々は通じてこの効果を無視できます。」

凛太「成る程、じゃあそろそろ行くか」

バアル「そうですね!」

凛太は二階の教室の空いていたドアから学校の入り口、もとい黒ローブが居るところに急ぐ。

廊下を出来るだけ音が立たない様に走る。

そして階段で一階に降りる時に悲鳴が聞こえた。

「「「きゃぁぁぁあ!!!」」」

「「「うわぁぁあっ!!!」」」

凛太「急ぐぞ!!!」

バアル「はーい」

バアルは何処かに遊びに行く様な感覚で答える。

一階につくと其処は血溜まりと先程まで人だったモノが散乱してる。

凛太「嘘…だろ…」

凛太は廊下に膝を着き溢す。

バアル「あちゃー死んでますねぇ」

バアル「さぁ、御主人様っ!早く黒ローブを倒しましょう!」

凛太「そうだな」

震える脚を叩いて立ち上がる。

凛太「ソロモンの名において命ずる、悪魔侯爵アモン、その権能以て焼き穿て。」

アモンが現れ凛太に一礼する。

アモン「主の為に戦いましょう。何をすれば?」

凛太「地雷みたいなのを炎で作れないか?」

アモン「出来ますとも、ですが何しろ炎なので隠すのが大変かと…」

凛太「バアルがいるだろ?」

バアル「ふっ、お任せ下さい!」

アモン「バアル殿の魔法なら隠せますな、ではやってみましょう。」

アモン「燃え尽きよ、<灼熱の殲滅槍>」

太陽を連想させる様な円盤状の地雷が出現する。

それが廊下を埋め尽くす。

バアル「吹き去る嵐の慈悲よ霧散せよ、<慈悲の霧散>」

再びバアルが魔法を唱えると地雷は存在しなかった様に消える。

凛太「なぁ、コレ、俺達にも見えなく無いか?」

バアル「…そうですね☆」

凛太「そうですね☆じゃねぇよ!間違えて踏んだら焼け死ぬわ!!!」

バアル「むぅ、なら目印でも付けますか。アモン、貴方には地雷が何処にあるか解りますよね?」

アモン「勿論でございます、と言いたい所ですがバアル殿の魔法が強過ぎる故に解りませぬ」

凛太「…どうすんだよ、これ」

バアル「どうしましょうか」

凛太「一回魔法解け。」

バアル「魔力が無駄になりますよ!!!」

凛太「魔力と命、どっちの方が大切なんだ?」

バアル「魔力ですね!」

眩しい位に良い笑顔で答えてくる。

凛太「ソロモンの名において命ずる、バアルよ」

バアル「解りましたから!それやめて下さいぃい」

ひぃぃいい。とでも言わんばかりに怯えてから詠唱を始める。

バアル「邪なる力、幻想は霧散せよ。<幻想の霧散>」

バアルの解除魔法(ディスペル)は地雷を再び見える様にした。

凛太「さて、目印付けるか」

地雷のある所に胸ポケットに入っていたペンで目印を付けていく。

凛太「よし、このくらいでいいだろう。」

アモンの作った地雷、全てに目印を付け終わり移動を始める。

凛太「あいつは今、体育館の方向に進んでいるみたいだ、行くぞ」

バアル「少し待って下さい。」

凛太「なんでだ?早く行かないとまた犠牲者が増えるんだぞ!!!」

凛太は思わずバアルを怒鳴り付ける。

バアル「魔力が減っている状況で敵の居る場所にいく方が危険です、すぐ終わりますから待って下さい。」

凛太「…早くしろよ」

バアル「アモン、貴方も魔力補給を」

二柱(ふたり)は血溜まりに手を着ける。

そして30秒くらいたった頃に手を離す。

バアル「お待たせしました。」

凛太「急ぐぞ!!!」

凛太はバアルを肩に乗せ体育館に急ぐ。

それを追ってアモンが走り出す。

凛太「くそ、あいつ体育館の中に入って行ったぞ、今は3年生が体育の授業中のはず、校内放送で逃げていればいいんだがっ!」

凛太の右眼の虹彩を囲む金の輪が更に強く光る。

ようやく体育館に着く。息を切らしながら慎重に中に入っていく。

むせ変える様な異臭と共に人の腕や脚、肉片が飛び散っている。

凛太「…」

バアル「御主人様?」

凛太「遅かったのか…?」

バアル「これは仕方ない事ですよ、早く黒ローブを倒さないと!犠牲者が増えるだけですよ!」

アモン「主よ、早く止めに行きましょう!」

凛太「俺の、俺のせいだ皆、死んだのも俺のせいだ…」

膝から崩れ落ちる、下には血溜まりがあり、血飛沫が飛び、制服のズボンに染み込んでくる。

バアル「そんな事はありません!」

凛太「俺が昨日、逃げなければ、死ななくてもいい人が…罪もない人達が死んだ。俺のせいで!俺のせいで!」

両目から透明の液体が滲み(にじ)出てくる。

バアル「そんな…そんな事はないです!しっかりしてください!死者が増えるだけですよ!」

アモン「一旦、先程の所まで引き返しましょう、こんな時に黒ローブが来たら確実に殺されます!」

バアル「アモン、貴方の背に御主人様を!」

アモン「解っておりますとも!」

アモンは凛太の制服の背中を軽く噛み器用に自身の背中に乗せる。

そして先程とは比べものにならない程、早いスピードをだし、地雷地帯に戻る。

バアル「アモン、どうにかなりましたね」

アモン「主はぐったりと成されているが早く立ち直らせなければ、そのうち見つかり殺されますぞ」

バアル「あぁ!解ってますよ!そんな事は!」

アモン「我は辺りの警戒に行って参ります。」

バアル「くれぐれも離れ過ぎない様に!」

アモン「解りました」

バアル「御主人様!黒ローブが来ますよ!殺されますよ!」

凛太「…」

バアル「聞いてますか!?殺されますよ!」

バアルは小さな手で凛太の胸ぐらを掴む。

バアル「御ー主ー人様!聞いてるんですか?返事位してください!」

バアルは凛太を揺らす。が凛太からの反応は無い。

バアル「………」

バアル「馬鹿野郎!!!失礼を承知で言わせて頂きますがね、人が死んだくらいで心折れてるんじゃ無いですよ!たしかに関係の無い人、罪も無い人が死んだかも知れない、ですがね、悪いのは御主人様じゃなくて殺した奴なんですよ!このまま貴方が殺されるまで黒ローブに虐殺を続けさせるつもりですか!?そうなったら関係の無い人がまた殺されますよ!それでいいんですか?もし、本当に虐殺されるのを待つなら私は本当に貴方を軽蔑しますよ!!!」

凛太「…」

バアル「あぁ、もう!先に謝っときます、すいません!」

バアルは蜘蛛の手を握り締め凛太の左頬を力一杯殴り付ける。ベチッと少し鈍い音が鳴る。いくら体を小さくしていても本質は悪魔なのでかなり痛い。

凛太「痛っ!」

凛太の左頬が内出血し(あざ)になる。

バアル「やっと口を開きましたね」

凛太「なぁバアル、俺はどうすればいいんだ?こんなに人を殺してしまった。」

バアル「殺してなんていません、殺したのは黒ローブです。御主人様が本当にこの人達を殺したと言うならもう否定はしません」

凛太「なら、どうすればいいんだよこんなに、こんなに巻き込んで殺してしまった」

バアル「簡単ですよ、元凶…黒ローブを倒すんです、それが死んでいった人達への手向けです。」

凛太「…力を、力を貸してくれるか?」

バアル「何を今更、仰います当然ですよ」

凛太「有難う」

凛太は制服の袖で目元を拭い、両頬をペチッと叩く。

凛太「バアル、お前のパンチ、かなり痛かったぞ」

バアル「うっ…申し訳ありません。」

バアルはまずい!とばかりに顔色が悪くなる。

凛太「お陰で目が覚めた。俺がやらなきゃもっと大勢の人が殺される。それだけは止めないといけない、例えこの命に代えても!」

バアル「流石は私の御主人様♪やるときはやるんですねぇ、いつもはぐうたらなのに!」

凛太「最後のは余計だぞ」

バアル「えへへ」

バアル「そろそろアモンを呼び戻しますか」

凛太「何処に行ったんだ?」

バアル「御主人様を守る為に辺りの警戒に行きましたよ」

凛太「迷惑をかけたな。」

バアル「本当ですよ!アモン、戻りなさい」

バアルが風に言葉を乗せてアモンに送る。

少したってからアモンが帰ってくる。

アモン「バアル殿、主を立ち直らせる事に成功したんですな?」

バアル「ふふん!どうですか!やってやりましたよ!」

アモン「主、その左頬の痣は?」

凛太「バアルに叱られた」

アモンは何かを察した様に頷く。

凛太「アモン、迷惑をかけたすまなかった、そして有難う」

言い終わると凛太はアモンに頭を下げる。

アモン「主よ、顔をお上げ下さい、我は眷属。主を守る(もの)です。さぁ、黒ローブを倒しましょう。」

凛太「あぁ、黒ローブを倒そう」

バアル「さて、どう動きますかね」

凛太「黒ローブはこっちに向かって来ているみたいだ、防火シャッターを閉じて他の教室に行けない様にしよう、念のために教室全てにバアルの魔法をかけよう。出来るか?」

バアル「当然ですよ!私にお任せ下さい!」

バアルは凛太の肩から降りて二階三階の教室に向かって走り出す。そして魔法を掛けていく。

それが終わる頃に合わせて防火シャッターを降ろす。警報音がなり響き、シャッターが閉まる。

凛太「よし、出来る事はやった、後はアモン、二階への階段を埋め尽くす位にさっきの地雷を頼む!」

アモン「お任せ下さい!」

凛太「アモンにはもうひとつやってもらう事があるから魔力は残しとけよ!それと俺は先にバアルと屋上に行く、黒ローブが来ても戦わずにこっちにこい!」

アモン「解りました」

バアルは魔法を掛け終わり凛太の元に戻ってくる。

バアル「掛け終わりました」

凛太「有難う、屋上に急ぐぞ!」

階段をアモンに任せ、凛太達は屋上に続く階段を走り抜ける。屋上への扉は鍵が掛かっていたがバアルの風で鍵を破壊し屋上に出る。

凛太「バアルは其処に居てくれ」

バアル「解りましたが私は何をすれば?」

凛太「奴の契約した悪魔はパズズ、風の魔神だ」

バアル「ほぉ、私と似てますね」

バアルは慈悲と嵐の神という側面も持っており、また豊穣の神と記される場合もある。

凛太「だから状況に応じて自由に動いてくれ」

バアル「了解です」

日が少しずつ傾き始めた頃、空気を焼く音が響く。

それと同時にアモンが屋上に到着する。

凛太「アモン、地雷仕掛け終わったか?」

アモン「くまなく設置しましたよ!魔力も残っております。」

凛太「今、さっき廊下の地雷にかかったこれで終わればいいんだが…」

凛太はヴィネの千里眼を通じて黒ローブを探す。

凛太「チッ、あいつ空気で膜を作って防ぎやがった」

凛太「アモン、(そら)に向かって出来るだけ大きな火柱を上げてくれ」

アモン「全てを穿つ灼焔(しゃくえん)よ、その熱以(もっ)て焼き切れ、焼き穿て、貫けぬモノはなく、極光の果てに終焉をもたらせ。<穿ち貫く終焉の極光>」

アモンは口を最大まで開き、残っている全魔力を

その魔法に注ぎ込む。

アモンの口の少し上に出現した赤の塊は熱く、離れているのに汗をかきはじめる。そして眩い光と共に全てを焼き尽くす火柱は(そら)に撃ち放たれる。大気が焼け、辺りを白く、真っ白に埋め尽くす。その火柱は段々と光と熱を失っていき、完全に消える。

凛太「アモン、大丈夫か?」

アモンはふらつきながら凛太の横に座る。

アモン「魔力が足りませぬ、一度休ませて頂けませんか?」

凛太「あぁ、有難う」

アモンの姿は徐々に薄くなり消えていった。

凛太「さて、俺も準備するか、ソロモンの名において命ずる、悪魔侯爵レラジェ、その権能以て全てを狩り尽くせ」弓を持った青年が現れる、俗に言う狩人の姿だろう。動きやすい服装に全身を覆える様なマントを羽織っている。

レラジェ「…獲物は?」

凛太「そろそろくる。足を狙ってくれ。」

レラジェ「…」

レラジェは凛太の命令を聞くと黙り、眼を閉じる。瞑想をしているのだろうか全く動かなくなる。

バアル「レラジェは変わっていますからねぇ、職人みたいな感じなので今はあまり話しかけない方がいいですよ。」

凛太「解った。奴はそろそろ三階に来るぞ、アモンの光を見て急いで来ているみたいだ。」

バアル「御主人様、力の解放をしてもよろしいですか?」

凛太「ああ、頼む。」

バアル「慈悲を纏え、願え、過ぎる嵐等はなく。破壊を象徴する嵐は、我、我は過ぎ去らぬ、過ぎぬ嵐に震えろ」

バアルが唱え終わると激しい嵐と共にその姿を変える。それと同時に透過魔法が効果を失う。

右手に槍を持ち、左手には剣を持っている。

先程までバアルは凛太の肩に乗る位の大きさだったが力を解放したバアルは男性の姿で凛太と同じ位の大きさになった。

バアル「主よ、我の武具を受けとるが良い。」

バアルが自分の剣を腰にある鞘に納めると凛太に向かって掌をかざし、辺りに風が巻き起こる。飛んできた木の枝に魔力を込め風で削っていく。

風の魔力を十二分に受け取った木の枝は枝ではなく一つの神器へと変化していた。

バアル「嵐の剣とでも呼びましょうか、即興なのであまり強くないと思いますが」

凛太「有難う、これで俺も戦える。」

凛太「来るぞ!」

屋上のドアが吹き飛び黒ローブとパズズが屋上にくる。

黒ローブ「よぉ、やっと会えたなぁ、この前は逃げられたが…あの光、お前だろ?」

凛太「何人殺した?ここに来る迄に何人殺した?」

黒ローブ「多すぎて覚えてねぇよ」

凛太「もういい、お前を倒す」

言うと同時に嵐の剣を振り下ろす。風が巻き起こり、黒ローブを襲う。

黒ローブ「パズズ、殺していいぞ?」

パズズ「アヒャヒャヒャヒャ、殺す殺す!」

パズズの起こした嵐と剣の風がぶつかり合う。

風同士が互いに共鳴し辺りを包み込む。

凛太「レラジェ!!!」

レラジェ「疾く駆けよ、我に射抜けぬ物などない、腐り落ちろ<腐敗の疾矢>」

風の間を抜けパズズの鷲の脚に突き刺さる。

パズズ「アガッ…痛ぇ!!!」

パズズは矢の刺さった痛みで悶える。が本当の痛みはこれからだ。矢の刺さった部分から全身に広がる様に腐敗していく。

パズズ「ッ!ァァァァァァア」

悲痛な叫びが響く。

黒ローブ「パズズ、どうした!?脚が腐ってるぞ…」

パズズ「一閃の…かぜよ…<断絶ノ裂風>」

パズズは自身の腐り行く脚に鎌鼬を撃ち放つ。鎌鼬はスルッとパズズの腐り行く脚に吸い込まれる。ズシャっと言う音と共に紅い飛沫が飛び散る。パズズの脚が落ち、血を垂れ流す。腐っていたので痛覚もなく、血のみがポタポタと落ちる。

パズズ「殺ス殺ス殺ス殺ス」

黒ローブ「パズズだけが戦力と思うなよ!死ねッ!」

黒ローブが懐から銃を取り出しすぐ引き金を引く。バンッ!という音がなり、銃弾が放たれる。

黒ローブと凛太の距離はそれほど離れておらず、凛太に避ける事が出来ないと思っていたので思わず笑みを溢す。

銃弾が凛太に当たる直前に勢いを失い銃弾が地に転がる。

バアル「そんな玩具(がんぐ)で我が主を殺そう等と幼稚な事を」

黒ローブ「お前の一匹の悪魔しか使役出来ないんじゃないのか!?」

凛太「残念だったな、俺は72(にん)の悪魔と契約している。そのうち同時に使役できるのは確認が取れてるだけで3柱、バアルは常召だから数に含まれない。さぁ、後2柱は何処にいるかな?狙われる恐怖に震えろッ!」

黒ローブ「ふっ、ふざけるなぁぁあ!!!パズズ!!!」

黒ローブは取り乱し、パズズに頼る。

パズズ「狂乱の嵐よ、遮る者共、愚かな生命を全て破壊しろ、死ね、叫べ、苦しめ、お前達に待っているのは凄惨な死のみ<狂嵐>」

バアル「嵐で戦おうとは惨めですね、我が慈悲を受け入れれば良いものを、苦を望むなら与えてやろう」

バアル「過ぎ去る慈悲を追う者に苦を、嵐と共に現れる雷撃に撃たれ其の生を絶て、最早我に慈悲などない<雷神と嵐神の宴・屠絶>」

パズズの全てを破壊する嵐とバアルの生を絶つ雷と引き裂く嵐がぶつかりあう。

風が強く、立っているのもやっとな屋上に雷撃が降り注ぐ、屋上の床が少しずつ砕けていく。

パズズ「はっ!偉そうにほざいていた癖に押されてるんじゃねぇのか?アヒャヒャヒャヒャ!」

バアル「…」

凛太「うぉおおおおおお!」

凛太はバアルの風に向かって嵐の剣を振り下ろす。轟音と共に嵐が巻き起こる。

バアルの嵐が勢いを増す。雷撃が黒ローブを狙撃する、がギリギリの所で避けられる。

凛太「レラジェ、今だ!」

レラジェ「疾く駆けよ、我に射抜けぬ物などない、腐り落ちろ<腐敗の疾矢>」

先程と同じ様に撃ち放つ。バアルの風にのり極限まで加速しパズズに向かっていく。

黒ローブ「!パズズ避けろぉおおおお!!!」

バアル「間抜けですね、少し黙って貰いましょう。」

バアルの指が少し動く。すると一部の気流が変わり、レラジェの放った矢は黒ローブに向かう。

その速度は人程度では到底避けられる物ではなく。バアルのコントロールによって右脚の脹ら(ふくらはぎ)に突き刺さる。

黒ローブ「ッあぁぁぁぁあ!!!」

痛みに悶え苦しむ。血すらも腐り始め異臭を放ちながら垂れ流し、黒ローブの脚はみるみると腐っていく。

バアル「主よ今です。」

凛太「あぁ、そっちは頼んだ!」

動けない黒ローブを捕らえるのは簡単ですぐに取り押さえる。

黒ローブ「や、やめろ、こ、殺さないでくれ!」

高圧的だった先程に比べ涙ぐみながら懇願(こんがん)する。

凛太「お前は何人の人を殺した?」

黒ローブ「ひっ…」

凛太「レラジェ、お前のナイフを貸してくれ」

レラジェ「…」

レラジェは近づいて来て無愛想にナイフを手渡す。

凛太「有難う、さぁこれを切り落とそうか」

凛太は黒ローブの脚にナイフを突く仕草をする。

黒ローブ「や、やめてくれぇ!」

凛太「やめたら全身が腐り落ちるぞ、それでもいいのか?」

黒ローブ「…悪魔め!」

凛太「お前に言われたくねぇよ!!!」

凛太は叫びながらまだ腐り始めていない膝の上をナイフで思いっきり突き刺し切りつける。ナイフは神器なのか骨もスパッと切れる。

黒ローブ「…!!!」

声に成らない悲鳴を上る。

凛太「左は切ったから次は右だな」

凛太は黒ローブに語りかけるが黒ローブは失神したのか返事がない。

凛太「このまま死なれても困るぞ、今、起こしてやる!」

右にも同様に切り落とす。

黒ローブ「うぐぁぁぁあ!」

眼を見開き叫ぶ。

凛太は辺りを見、バアルとパズズの戦いが決着したのを見ると黒ローブに話しかける。

凛太「起きたか、お前に聞きたい事がいくつかある。取引だ、全て答えたらお前とお前の悪魔を助けてやる。」

黒ローブ「ほ、本当か?わかった命は助けてくれ!」

凛太「嘘を付いたら解っているよな?」

凛太はナイフを黒ローブの首元に突きつける。

黒ローブ「も、勿論解ってる。」

凛太「、ソロモンの名において命ずる、悪魔公爵、ダンタリオンその権能以て全てを見抜け」

ダンタリオン「我はダンタリオン、全ての嘘を見抜く者也」

幾多の顔を持つ悪魔、ダンタリオンは人の嘘や、物事の流れを読む事ができる。

凛太「ダンタリオン、力を貸してくれ」

ダンタリオン「仰せの通りに」

ダンタリオンは手を腹の前に置き深くお辞儀する。

凛太「さて、まず一つ目、拐った人は何処にやった?」

黒ローブ「この町から少し離れた海岸沿いの倉庫だ」

凛太はチラッとダンタリオンを見るが特に反応が無かったので真実なのだろう。

凛太「二つ目、人を拐って何をするつもりだった?」

黒ローブ「人柱にしてもっと高位の悪魔を召還するつもりだった。」

凛太「召還してどうするつもりだったんだ?」

黒ローブ「教団に入れて貰うつもりだった」

凛太「教団?なんだそれは?」

黒ローブ「神威を使う者だけが入れる所だ、そこでは神威や悪魔の力を使い放題で世界を滅ぼしたりしようという奴らの集まりだ、教団は二つある、もう一つは神威や悪魔の力を悪用させるのを防ぐ目的の教団だ」

凛太「なるほど、では三つ目、お前を解放する大切な質問だ、今すぐにパズズと契約を切れ」

数秒の沈黙…

凛太「おい!何か答えろ!」

凛太はナイフを握る手に一杯の力を込めて首の皮を少し切る。紅い筋ができ少しずつ垂れていく。

黒ローブ「断る!俺はお前とお前の仲間全員を血祭りに上げてやりたい!!!」

いつの間にか右手に銃を持っており、凛太の腹部に向けて銃を向ける、それに合わせて凛太は右に避ける。

黒ローブ「この借りはきっちり返してやる、泣き叫んでももっと苦しめて殺してやる!」

銃を持っている反対の手を杖の様にして体を支える。

黒ローブ「パズズやれ!!!」

パズズ「くはっヒャヒャヒャヒャ」

壊れた機械の様に笑う。

パズズは自身の体を風の槍で貫く。

黒ローブ「主よ現れよ!生け贄はここにある、俺と契約を結べ!!!」

バアルも不意を突かれバアルがパズズの首を撥ね飛ばした時には既に遅かった。

バアル「体育館に行ったのはこの為かッ!」

体育館が閃光に包まれ爆音と共に体育館が破壊される。

ティアマト「我が名はティアマト、原始にして混沌、大海は我のモノなり、してこの様な贄を大量に捧げ我と契約を結びたいと申す者はどいつじゃ?」

彼女は原初の創造における混沌の象徴であり、女神で海を司どっている。

黒ローブ「俺だ!早く力を寄越せ!」

ティアマト「汝かふーむ…神に物を頼む態度ではないのぉ?」

黒ローブ「ぐっ…貴女様の力を俺にお与え下さい」

ティアマト「…汝は趣味に会わんのぉ、心の奥底に憎悪と渇望を感じる」

黒ローブ「ふ、ふざけるな!生け贄を用意したのは俺だぞ!力を寄越せ!」

ティアマト「話にならぬ、そこの少年、汝は…ふむ契約を交わし終えている様じゃな、なら我は契約できぬ」

凛太「な、なぁこのまま帰ってくれないか?」

ティアマト「退屈しそうじゃ、解った帰ってやろう。」

黒ローブ「待て!」

ティアマト「また汝か、しつこいぞよ」

黒ローブ「我が魂の響きに答えよ、音を聞く者を手駒に!<契約の儀>」

黒ローブは強制的に契約を結ぶ。

ティアマト「………」

黒ローブ「神威よ我に答えよ!神装・ティアマトォォオオオオ!!!」

ティアマトの姿がぼやけ、鎧と三叉槍(トライデント)に変化し黒ローブが身に纏う。

凛太「な、なんだ!?」 

黒ローブの周りに血が大量に集まる。

黒ローブの存在しない脚に塊となり脚になる。

黒ローブ「大海を統べる王に膝間付け!<大いなる生命・大海>」

三叉槍を一閃すると何処からともなく大量の水が溢れだし屋上を埋め尽くす。

凛太達は水に流され吹き飛ばされる。空に投げだされ重力に従い落ちていく。

バアル「主よ!」

バアルが凛太を抱き抱え(だきかかえ)地面に降りる。

凛太の身体には生傷が大量に出来ておりズキズキと痛む。水流で体がダメージを受けていた。服も擦り切れて肌が剥き出しになっているが剥き出しになっている肌からも血線が走っている。

バアル「主よ、ご無事ですか?」

レラジェ「…」

ダンタリオン「主よ!」

凛太から返事はなく、ぐったりとしている。バアルは耳を凛太の心臓に当てる。ドクンドクンと音を発しており、生きている事は解る。

バアルは凛太を揺すり続ける。

黒ローブ「何処に行ったぁ!殺してやる!殺してやる!」

黒ローブは正気を失い同じ事ばかり言っている。

バアル「主よ目覚めよ、目覚めよ!」

凛太「ッ!痛ッ!」

バアル「目覚めましたね」

凛太「どうなってる?」

バアル「あいつ神威の力で何かした様だ」

凛太「くそ、どうすれば…」

バアル「あの状態だと我でもどのくらい持ちこたえれるか…」

???「力を貸してあげようか?」

上空から声が聞こえ、それを追う様に上を見る。

???「ん?きゃぁっ変態!!!」

凛太「えっ?」

突然過ぎて何が起こっているか解らなかったが上にいた人物が下に降りてくる。

???「スカートの中を覗くなんて変態!」

一人の少女が凛太の前に降り立つ、制服を来ているので学生だろうが凛太と同じ学校ではない。

外見は黒の長髪に何処かの学校の制服、凛太より20センチくらい低い身長の少女。

凛太「いや、あれは事故だろ!じゃなくて、さっき声をかけたのは君か?」

少女「そーだよーで、力貸そうか?君じゃあれに勝てないよ」

少女は黒ローブを指差す。黒ローブはこっちに気づいていないらしく、ま反対の方向に水流を撃ち込んでいる。

凛太「ダンタリオン、どうだ?」

ダンタリオン「悔しい事に嘘は言っておりませんね」

凛太「君は誰だ?」

少女「さぁ?誰でしょうね、世界一の美少女?」

凛太「…」

少女「うわぁそんな目で見ないでよ~冗談だよ!」

少女「うーんあれうるさいから先に潰してくるね、また後で!」

凛太「待て、君一人でも危ない!」

少女「君がいる方が危ないよ、まぁ其処で待ってて」

凛太「あっちょっと!」

バアル「仕方ありません待ちましょう。この姿も疲れてきた」

バアルはそういい、いつもの姿に戻る。が戦闘も出来る様に本来の大きさになっている。

凛太「レラジェ、ダンタリオン有難う休んでくれ」

レラジェとダンタリオンは景色に溶ける様に消えていった。

少女SIDE

少女「んー神威を悪用するのはやめてくれないかなぁ?」

黒ローブ「誰だお前!俺に逆らえる奴なんていない!はやくあのガキの居場所を言え!」

少女「ガキ?あぁ彼か、彼は見処あるよ君見たいなカスと違ってね」

黒ローブ「殺すぅ!!!」

少女の解りやすい挑発に黒ローブは激昂する。

少女「もぉ品がないなぁ、ま、後悔することね、私と対峙した事を、そんな子供みたいな神装(ちから)だと私には勝てないよ、その程度で逆らえない者が居ないと傲慢に成ってるならね」

黒ローブ「その頭、撥ねてやるよ!」

少女「……………………神装………」

少女の言葉は風に遮られよく聞こえない。

直後、少女の周りに雷が渦巻き髪の毛が金色かがる。手には雷の塊を持っている。スパークと共に轟音、閃光。空を埋め尽くした。

凛太SIDE

轟音と共に閃光が空を駆けて埋め尽くす。

眼も開けていられないほどの光。

数秒後に光はなくなった、それと同時に熱と風が吹く。

少女が空に停滞しており黒ローブの姿が見当たらない。少女の雷は地面を破壊しておりその中に黒い塊がある。凛太はそれに近づく。黒い塊が何かハッキリ見える場所にくると肉の焦げた匂いがする。その黒い塊は先程まで生きていた黒ローブだった。

凛太「…」

手だったであろう所には三叉槍が刺さっていた。

少女「ふー終わった終わった。さて、君には聞きたい事もあるし、ちょっと来て貰おうかな?」

凛太「く、来るな」

少女「助けて貰った人に言う事じゃないねぇ、それにこんな美少女からのデートのお誘いだよ?泣いて喜ぶべきだと思うよ?」

少女はにこにこと笑う。

凛太「…なんであそこまでやった?君なら無効化できたはずだ!なんで、なんで殺した?」

少女「うるさいなぁ、別にいいでしょ、あいつも人を一杯殺したんだし」

凛太「でも、殺したから殺すのは違うだろ!」

少女「うるさいよ~で?来てくれるの?まぁ断っても来て貰うけど」

凛太「行く訳ないだろ!バアル。」

バアル「吹き去る嵐の慈悲よ霧散せよ、<慈悲の霧散>」

一人と一柱の姿が消える。

凛太「バアル逃げるぞ!」

バアル「解っていますよ!」

小声で話す。

少女「はぁ、本当に逃げれると思ってるの?」

少女の雷の塊が震え雷撃が発射される。

雷撃は凛太の足元に落ちる。

凛太「!?」

少女「意味ないよ、その魔法は私には効果ないわ」

凛太「神格がバアルより上なのかッ!」

少女「もういいやちょっと痛いけど我慢してね♪」

言い終わると同時に視界を白い光が埋めつくし、刹那、首に痛みが走る。

凛太「あがっ!」

凛太は虚空に意識を手放した。

少女「んー君は殺してもいいんだけど…どうする?彼を助けて殺されるか、一柱(ひとり)で逃げるか、おとなしくついてくるか」

バアル「解りまして。おとなしくついていくのでご主人様の命を奪わないで下さい。」

少女「賢い(ひと)は好きだよ、さぁ行こうかついて来てね。」

バアルは黙って頷く。

少女は凛太を背負い「重いー」と文句を言いながら歩いて行く。それに黙ってついていくバアルだった。



昼下がりに始まった戦いは夕方まで続き太陽が暮れ始め傾く。

学校には警察が集まり突入する。すると大量の死体と生き残った生徒達と教師たちは保護され無事家に帰された。警察はテロと断定し犯人である黒ローブを探したがその姿はなかった。破壊された体育館や屋上付近に居るのかと思われ探したがあったのは黒い塵だけだった。


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