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ソロモンの怠惰  作者: Atria
1/3

1章、出会いの指輪

序章

バアル「朝ですよ!朝ですよご主人様っ!朝なんで起きて下さい!」

凛太「んんっおはよう、バアル」

春の暖かい陽光が部屋に差し込む。

バアル「おはようじゃありませんよ、もう8時ですよ、学校に遅刻しますよ?」

そういうとバアルは蜘蛛の手をブンブンと振る。

凛太「危ないだろ、学校に行く準備するから退いてくれ」

洗面所に行って顔を洗い、寝癖を直しながら歯磨きをする。その間ずっとバアルが話掛けてくる。

バアル「ご主人様って朝に弱いんですね、我が主ながら恥ずかしい」

凛太「しふぁはないふぁろ」

バアル「何って言ってるか解りませんよ」

そうこうしている内に身支度が終わる。

凛太「行くぞ、バアル」

そう言ってバアルに手を伸ばす。すると、バアルは手から肩に登っていく。

バアル「出発進行~♪」

俺は駐輪場に停めてある自転車で登校している。

バアル「風が気持ちいいですね~」

凛太「…そうだな」

息を切らせながら自転車をこぎ続ける。

学校に着く頃には既に遅刻していた。


一章、不審な失踪

「辻本、辻本凛太ァー、あいつ今日も遅刻か?」

先生らしき人物がそう呟いた瞬間に教室のドアが引きずる様な音を立てて開かれる。

「はぁはぁ、せ、セーフ」息を切らせながら教室に飛び込む。

先生「…残念だったな、ギリギリアウトだ」

凛太「そ、そんなぁ…」

先生「まぁ、いいから席に座れ」

促されるまま窓際の自分の椅子に座る。

凛太「なんでこんな事に…」

一人でそう溢す。

バアル「それは御主人様が朝に起きないからでしょ」

バアルが少し睨む様に見てくる。

はぁー。とため息を吐く。

この蜘蛛の胴体を持った生き物はバアル。

彼の有名な「ソロモン王」に使えた悪魔の一柱(ひとり)で元豊穣の神で今は地獄の第一の王と呼ばれている蜘蛛の胴体を持ち人に知恵を授けてくれるらしい。





俺とこいつの出会いは単純だった。

下校している時に突然、目の前に現れた。そして

バアル『汝は選ばれた』蜘蛛の胴体を持ち家位の大きさの生き物が厳粛な声色で俺にそう言った。

凛太『…』俺は言葉を失った。数秒後に悲鳴を上げるのは当然だった。

~数分後~

バアル『あのー落ち着いて貰っていいですか?』

呆れた様に遠い目で俺を見る。

凛太『お前は誰だ?そもそも生き物なのか?俺になんの様だ?』

バアル『そんなに同時に質問されては困ります。』

バアル『一つずつ回答していきましょう。』

バアル『まず、私はバアルと申します。私は地獄の第一の王と呼ばれています。貴方は選ばれました。』

凛太『だいたい…解った』

バアル『私はソロモン王に使えていました。』

凛太『で、選ばれたって何に選ばれたの?』

バアル『おおっと、そうでしたね、貴方はソロモン王に選ばれました。』

凛太『は?』

バアル『ですから、ソロモン王』

凛太『ソロモン王に俺がなるの?』

バアル『正しくは我々72柱の悪魔達を使役できる様になります。』

凛太『代償とか無いの?』

バアル『そうですね。特には有りませんが貴方様には神威を上げる使命があります。この指輪を差し上げましょう。その指輪を身につけると我々の使役方法や能力等々がわかります。』

そういうとバアルは俺に向かってシンプルなデザインで金の指輪を投げてくる。それを受けとる。

凛太『神威って?』

バアル『神威とは貴方様のこの宇宙での権限になります。まぁ、その辺はまた後で良いでしょう。』

バアル『では指輪を指に嵌めてこう言って下さい。我はソロモン、悪魔を束ねる王なり、と』

凛太『嫌だ』

バアル『えぇっ!?何故ですか?』

凛太『俺は平穏に暮らしたいから。』

バアル『えっ…ちょっ』

凛太『じゃあな、バアル』

バアルのいる方向とは逆を向いて歩き出す。

バアル『貴方、指輪受けとりましたよね?それで契約は成立してます。』

凛太『は?ふざけんな!』

指輪を投げ捨てた。…が

投げたはずの指輪が戻ってきて俺の中指に嵌まる。外そうとしても外れない。そして、ソロモンの悪魔達の詳細な情報が流れ込んでくる。

バアル『これからよろしく御願いしますね。御主人様♪』

凛太『嫌だぁぁぁああー!!!』


と、こんな感じに俺は72柱の悪魔を束ねる王となった。

ちなみに一般的に姿は人に見えないらしい。

今、バアルは俺の命令で体が蜘蛛位の大きさになっている。

席に座ると少しして授業が始まる。

俺が窓から外を見ていると隣の席に座っている親友の岡部大希が声を掛けてくる。

大希「お前、今日も遅刻したのか?」

凛太「仕方ないだろ、朝に弱いんだよ。」

大希「でも夏と秋は早いじゃん?」

凛太「春眠暁を覚えずって言うだろ?冬は寒いから布団から出たくない。」

大希「成る程な」

軽い雑談を交わす。春の暖かい風が教室内に吹き込む。

凛太「ふぁぁ、眠っむ」

大希「おいおい、遅刻した上に授業中に寝るのは流石に不味いぞ?」

先生「おい、辻本と岡部、うるさいぞ静かにしろ!」

大希「す、すいません」

凛太「…Zzz」

先生「おい、辻本何寝てんだ」

先生が片手に持っていた教科書で軽く頭を叩く。ペシッとかそんな感じの擬音が似合う様に軽い一撃だった。

凛太「… Zzz」

先生「駄目だこりゃ、誰か辻本が起きたらノート見せてやってくれ。」

先生が諦めた様にため息を吐く。



そんなこんなで退屈な授業が終わり放課後になった。

バアル「御主人様~」

バアルが少し高いトーンで話掛けてくる。

凛太「何だよ?」

バアル「私が御主人様に使えてから神威が全っ然上がってませんよね?」

凛太「あぁ、上げる気が無いからな。」

バアル「何でですか、上げましょうよ。」

凛太「絶対、ロクなことに成らないだろ」

バアル「えー神威上がっても特に悪い事は無いですよ。ただちょっと世界滅ぼしたり、宇宙複製したり。其の程度しか出来ませんよ?」

凛太「そこまで出来たら十分上げる気にならねぇよ、それに神威とやらについて詳しく聞いてないし。」

バアル「神威とは宇宙での権限。これを上げると様々な力を得ることができます。空も飛べる様になりますし、瞬間移動とか宇宙の法則無視できますよ。肝心の神威を上げる方法なんですが…」

凛太「ですが…なんだよ?」

バアル「言ったらそれ絶対避けますよね?」

凛太「そうだな、絶対避けるな。でも、言え。」

バアル「えー嫌ですよ、上げ無いんでしょ?」

凛太「ソロモンの名において命ずる、バアルよ真実を伝えよ。」右目が熱をおび、虹彩が薄い金に光る。契約を結んで(勝手に結ばれた)から従者である、悪魔達は大体言うことを聞く様になっていた。

そして、これはその内の一つ。従者である悪魔から真実を伝えさせる。この他にも召還等が出来る。

バアル「神威を上げる方法は2つ。一つ目はこの宇宙に仇なす者の排除。二つ目は同じ神威を持つ者と戦闘し、勝つ事。」

凛太「一つ目を詳しく。」

バアル「宇宙に仇なす者は俗に言う犯罪を冒す者でいいでしょう。その者を殺害またはその悪行を辞めさせる。この二つです。」

凛太「今の俺の神威について。」

バアル「いま、貴方様の神威は初期値、1でございます。我が主として恥ずべきです。」

やれやれと言わんばかりに掌を空に向け首を振っている。

バアル「今までも常召(じょうしょう)の私以外召還なされませんし。」

少し寂しそうに呟く。それを横目に俺は契約の効果を解除する。

凛太「バアル、もういいぞ」

バアル「もー御主人様、都合のいい時だけ権限を使わないで下さいよー使うなら神威を上げる為に使って下さい。」

凛太「断る、余計な事に首を突っ込みたくないからな。」

バアルの溜め息が風に掻き消される。

風は止むことなく吹き荒れる。可笑しいと思いつつ帰路を歩き始める。すると、3mほど前だろうか、黒いローブの様な物を羽織った人が親友の岡部を担いでいる。

(な、なんだあいつ…それにあれは岡部か?)

黒ローブが腕を上げ何かを呟くと風が吹き荒れ、岡部の姿が見えなくなる。

黒ローブ「誰だ!!!」

凛太(岡部は何処に…やべっ、見つかった)

黒ローブ「おい、パズズあいつは神威持ちか?」

すると、ライオンの頭と腕、鷲の脚、背中に4枚の鳥の翼とサソリの尾を持った生き物が現れる。

パズズ「ああん?あぁそうだぜ、あいつは神威持ちだ」

凛太(余計な事を…)

凛太「な、なぁ、俺に戦う気はない、だから戦闘は止めないか?」

黒ローブ「なんだよ腰抜けの甘ちゃんかよ?せっかく神威を上げるチャンスなのによぉ、戦わない奴がいるかっての」

黒ローブが腕を振り下ろすと同時に突風が巻き起こる。重い衝撃と共に俺は軽々と吹き飛ばされる。

凛太(よし、逃げよう。)

即決だった。腰抜けと思われてもいい、腑抜けだと思われてもいい、今は逃げる事が最優先だった。

凛太「バアルっ!バアル!!いないのか!?」

先ほどの風で吹き飛ばされたのかバアルの姿も返事も聞こえない。

凛太「ソロモンの名において命ずる、悪魔侯爵アモン、その権能以て焼き穿て。」

焔の渦が出来上がり、一匹の赤銅色の狼が現れる。

アモン「主よ、ようやく神威を上げる気になりましたか、良いでしょう、ソロモン王の悪魔でも最強と名高い戦闘能力の…」

凛太「肩書きとかいいから早く」

少し焦りながら急かす。

アモン「仰せの通りに<灼熱の災禍>」アモンの口から1mくらいの赤い紅い球体が吐き出される。黒ローブの発生させた突風とぶつかり視界が一気に燃え上がり朱に染まる。

凛太「ぐっ…」

熱風と衝撃波が体を襲う。

視界が元に戻ってくる。

黒ローブ「…なんだ、今のは?」

黒ローブのローブが焼け焦げ全身が見える様になった。

ローブ男「けっ、そいつがお前の従者か?俺のとは相性が悪りぃなぁ」

凛太「なぁ、戦うのを止めないか?」

ローブ男「…答えはノーだ!お前を殺すまで、やめねぇ。やれ、パズズ」

男の目は血走っておりやはり会話で説得できそうにない。

パズズ「<貫き穿つ風槍>」

パズズと呼ばれた生物が右指全てに風の槍を作りだす。

パズズ「死ね」

無機質な言葉と共に風の槍が解き放たれ俺を殺す為に殺到する。

凛太「アモン!」

アモン「解ってますよ<炎下の舞踏>」

シュゴッという空気が焼ける音と共に炎で出来た人の様なモノが出来る、俺を守る様に自ら風の槍に刺されにゆく。当然、爆発した様に燃え上がる。

ローブ男「チッ、キリがねぇ」

凛太「なぁ、お前そういや、うちの高校の生徒を拐ってたよな?何をするつもりなんだ?」

戦闘から気を反らす様に冷や汗をかきながら問いかける。

ローブ男「さぁ?何をするんでしょうかねぇ?」

ローブ男はケラケラと笑う。

ローブ男「見られたのは想定外だったが、次で殺す」

男とパズズから濃厚な殺気が漏れ出す。

凛太「ソロモンの名において命ずる、悪魔侯爵シャックスその権能以て全てを盗め」

薄い青色の鳥が、シルクハットと杖を持って現れる。

シャックス「私に盗めぬモノなどありません主よ、どうぞお使い下さい。」

凛太「シャックス、あの男とパズズの全感覚を盗め」

シャックス「はい、仰せの通りに」

シャックスが間髪開けずに飛び出していく。

ローブ男「どうした?あの狼の姿が見えないが、諦めて死ぬのか?精々苦しまなくていいようにしてやるよ。さぁ、パズズ殺…?あがっ目が見えねぇ、音も聞こえねぇ、どこだ?どこだっ!?俺は何処にいるんだ!?」

男が全感覚を奪われ今、自身がどうなっているか解らずに喚き散らす。パズズも同様に色んな方向に風の槍を撃ち放すが全感覚が盗まれているので風の槍は壁や地面に当たると霧散していった。

凛太「シャックス、逃げるぞ!」

シャックスは頷きその場を後にする。

走って逃げながらシャックスに尋ねる。

凛太「シャックス、全感覚を盗んで要られる時間はどのくらいなんだ?」

シャックス「凡そ1分程度です。但し一つの感覚のみなら10分以上持つでしょう。」

凛太「そうか、また頼む」

シャックス「はい、では」

シャックスの姿が金の粒子となり消えていく。

凛太「そういやバアルはどうしたんだ?」

家についてから考えるか。

~数分後~

凛太「ソロモンの名において命ずる、王バアルよその権能以て我に知恵を授けよ。」

蜘蛛の胴体を持つ見知った悪魔を呼び出す。

バアル「ご主人様♪たまには召還されるのもいいですね♪」

凛太「おい、たまには召還されるのもいいですね♪じゃない。お前召還するまで何処に居てた?」

バアル「突然の突風に吹き飛ばされて木に引っ掛かってました☆でも、召還してくれるって信じてましたよ?」

凛太「はぁ…なんで呼び出したんだろ」

割りと本気で後悔しつつ、バアルに問いかける。

凛太「なぁ、バアル。神威持ち同士の戦闘は珍しいモノなのか?」

バアル「ん~?そんなことは有りませんよ?」

凛太「そ、そうなのか?」

バアル「今も何処かで起こってると思いますよ、ホラ、ニュース見てくださいよ。」

凛太「失踪事件…もしかして黒いローブを羽織ってた奴か?」

バアル「かもしれませんねぇ、さぁ!ご主人様っ解決しましょう!」バアルがここぞとばかりにビシッと蜘蛛の指?を俺に向ける。

ニュースキャスター『なお、失踪したのは県内の高校生の岡部大希さん(17)です。』ニュースの情報が脳内に響く。

凛太「…そうだな、解決するか。大希が拐われたし」

バアル「ふぁっ!?ご主人様どうしたんですか!いつも乗り気じゃないのに!」

凛太「なんだよ、悪いか?親友が誘拐されたのに、一度誘拐現場に居合わせたのに、助けないのは親友としてどうかとも思うし、それにこれで解決出来たら誘拐された人達も見つかるだろ?」

バアル「もぉ~素直じゃないですねぇご主人様は♪」

バアルが嬉しそうに手を叩く。

凛太「うるせぇ」

バアルの返しに素っ気なく返す。

バアル「で、どうやって見つけて殺すんですか?」

凛太「殺さない、無力化する。」

バアル「えー血が見れると思ったのになぁ…」

凛太「しょんぼりしても駄目だ。相手も人なんだから」

バアル「作戦とかあるんですか?」

殺さないと聞いて少しつまらなさそうに聞かれる。

凛太「ある。まず、あいつは俺の制服から高校の場所を知っただろうし明日にでも攻めてくるだろう、それを返り討ちにする。」

バアル「成る程、でも来なかったらどうするんですか?」

凛太「簡単だ、ヴィネの権能(ちから)を借りるんだよ。」

バアル「それなら行けますね」

それから数十分作戦を練り、明日に備えた。

バアル「ご主人様、明日は早く起きて下さいね。」

凛太「へいへい」

そうして少し早めに就寝した。

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