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写本屋には変人が集う  作者: 春風由実
第三章 かわるもの
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0.序章~記憶の嘘


「これからは華月と名乗りましょう」


 私にとってそれはとてもおかしなことだった。

 名前が変わることについておかしいと感じたのではない。


「どうしてその名なの?」

「お気に召しませんかな?」

「そうではないの。買った人から家名を貰うと聞いていたから気になっただけ」

「そうですなぁ。しかし私はこの名が良いと思うのです」


 思い出すほどに、老人は笑っていたのだろうか。

 今ではあの穏やかな笑顔ばかりが頭に浮かぶも、どの言葉も笑って言っていたはずはない。


「あなたがそうしたいなら、それでいいよ」

「では今日からあなたは華月です」


 老人の前で自然と笑えたのは、この時が初めてだった。

 気を許したわけではなく、ただ安心していたんだ。

 元の名を呼ぶ人はもういない。それは当時の私にとって悲しいものではなかった。


 老人はきっと、私の笑顔を違うように受け取っていただろう。

 それも今は確かめようがない。



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