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0.序章
「彼に贈りものをしたいと考えております。手伝って頂けませぬか?」
老人は言った。いつもの穏やかな笑みを浮かべて。
「直接お贈りしたら宜しいでしょう」
断ろうとした私に、彼は首を振ったのだ。
「私からでは、とても受け取ってくれません。さりとて、彼もそろそろ一人では厳しい頃です」
贈りものの意味をすっかり理解した。
「私とて同じことではないでしょうか?」
「いいえ、あなたが気に入った者ならば、彼も快く受け入れるはずです」
私を使ってくれるな、と思ったけれど。
確かにあの人が、この先も一人で生きていくことはとても厳しいのではないか。
「私が気に入るかどうか、分かりませんよ?」
老人は優しい声で笑った。
「気に入らなければ、気に入るようにして頂きたい」
「そちらが真の目的ではありませんか?」
二人でよく笑った。
この時の私は、老人との愉快な時間が、ずっと続くものだと信じていた。