アヌイーの娘と花屋
「リク、ソラやっと見つけたぞ！！」
王城の執務室で、俺と宰相の息子ソラが気に入らない婚約者どもの話しをしているところに、騎士団長の息子のアラシが、ノックもせずに突然飛び込んで来た。
「なんだ？騒々しい！
部屋に入る時はノックしろといつも言っているだろう！？
で、何を見つけたんだ？」
ソラが五月蝿そうにアラシを睨みながら、注意した。
「すまん！だがそれどころじゃ無い！
タイガが城下で見つけたんだ！！
アヌイーの女の子を！！」
なんだって！？
あれだけ探して見つからなかったアヌイーの女の子が城下に居ただと？
「なんだって！？それは本当か！？」
「あゝ本当だ！城下の下町で花屋に住み込みで働いているそうだ。
『神殿の布教活動の途中で見つけた。』と連絡があった！」
下町の花屋で住み込み？
今まで貴族階級と、それに連なる家しか探していなかったから見つからなかったのか？
「平民の先祖返りなのか？」
ソラの疑問も当然だ。
俺もそう思った。
「まだ調査中だが、近所の者の噂じゃ元は貴族家に居たらしいぜ！」
なるほど…
おそらくその貴族家の庶子なのだろう。
もし彼女が本当にアヌイーなら、王家で保護してやらなければならない。
「とりあえず、タイガの報告を待とう。」
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(数時間後……)
「で…彼女は本当にアヌイーなのか？
何故今まで見つからなかったのだ？」
俺の立て続けの質問に、タイガは落ち着き払って答えた。
「まず、彼女はアヌイーで間違いないよ！」
やっと見つかったか！
コレであの女と結婚しなくて済むぞ！！
それにしても貴族家に居たらしいのに、何故今まで見つからなかったのだろうか？
「彼女の名前はサクラ。
やっぱり高位貴族の庶子らしいよ。
何処の家かまでは教えてくれなかったけど、今まで相当な苦労をして来たようだね。」
では尚更、早く保護してやらねば！
あゝ早くその娘サクラに会いに行きたい。
「僕もただの神官見習いとして会っている段階だから、会うとしたら王族なのはまだ秘密にして置いた方が良い。
あまり緊張させたら可哀想だろう？」
そ…それもそうだな。
タイガの言う事にも一理ある。
「では何時頃なら会える？」
「そうですね～。
次の礼拝の日に、身分を隠して僕の友人という事で会いしましょう。」
確かに俺達とタイガは友人だ。
嘘ではない。
「彼女、勤めていた花屋でも酷い扱いを受けていてね、暫く神殿で預かる事にしたのです。」
「なっ！それは本当か！？
貴重なアヌイーを虐げるなど有り得ない！
そんな店は王都から追い出した方が良い！！」
いつもは冷静なソラが、真っ赤な顔で激こうした！
俺も同じ意見だ。
「安心しろ！その花屋は既に本神殿との取り引きを即刻中止した。
もちろん、王都中の小神殿にもふれを出したから、近い内に店をたたんで王都から出て行く事になる。」
え？
だ…大丈夫なのかそれは？
(大丈夫じゃなかった。)
