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(スズランside)
神殿に花を納めていた、わたくしの家…チン侯爵家が経営する花屋があの馬鹿の所為で、危うく倒産するところだった。
『行く所が無い』と言う白犬の娘を、親切に住み込みで雇ってあげたのに、あの馬鹿が見ている前で態と花の入ったバケツをひっくり返し、殆ど台無しにした!
かなりの損害額なので、激怒した王都本店の店長が注意していたら当然、婚約者殿が乱入しその娘を庇っただけではなく、『店との取引を中止する!』と言って、本当に神殿と家の花屋との全取引を辞めてしまった。
その報告を聞いた時、その小娘と婚約者殿を締め殺してやりたくなりましたわぁ~!
馬鹿だ、馬鹿だとは思っていたけど、そんなお粗末なハニートラップに引っかかるなんて!!
神殿に納めるお花を育てるのに、いったいどれだけの人達の労力が、掛かっていると思っているのでしょうか?
しかも、その時のその娘の言い訳が……
『そんな!?わざとじゃないのに、そんなに言わなくても…ぐすん…… 。』
態とじゃないなら、どうやって店中の花の入った桶をなぎ倒せるのかしら?
当然、その小娘を庇った我が婚約者殿に損害賠償請求をしましたわ!
神殿に納めている花は殆ど、我が領地が産地ですからね。
それを駄目にした、責任は取って頂かないと。
まさかとは思いますけど、その小娘に目が眩んで、婚約者であるわたくしの家が何の商売をしているか、忘れていた訳ではありませんよね?
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(タイガside)
な…何だこの多額の賠償金額請求書は?
《タイガ様へ
貴方様が保護された、元従業員のサクラさんが破損した植物と備品、ガラス温室の修理費、我がチン侯爵家と神殿の一方的な契約解除に対する損害賠償を請求を致します。
彼女は『態とではない。』と言っている様ですが、とてもそうは思えません。
態とではないのなら、どうして奥のガラス温室のガラスが割れて、中にあった植物が、寒さで殆ど枯れているのでしょうか?
3棟あったガラス温室が全てです。
彼女が破壊しているのを、目撃した従業員も多数います。
更に止めようとした従業員に、怪我を負わせ、店内に置いてあった花を薙ぎ倒したのです。
どう言い訳をなさるおつもりですか?
それに態とじゃなければ、何をしても許されると思っていただいては困ります。
今月末迄に大金貨18枚(日本円で1億8千万円相当)をお支払い下さい。
(チン・スズラン)》
大金貨18枚…冗談だろ?




