五 電線音頭1
「セルロースは親水性で水に弱いけど疎水性にはできるか」
「セラミックの問題は堅いのと伸びないことです。
電線は主に金属、熱膨張で長ければ長いほど伸びますから」
「編む方向ならなんとか・・・コストはめちゃかかるけど」
「専用編み機を考えればいいんですよ。ヒントは伝統工芸にある」
「真田紐か」
「あ!シリコンは?」
「おお、主鎖に炭素がないシリコンがあったか」
「側鎖がどの程度なら大丈夫か確かめてみよう」
「はい」
「製品もあるな高いけど」
「ええ、メーカーに問い合わせてみます」
「遺伝子検査の方は?」
「サンプル一滴あれば一時間で陽性陰性がわかる簡易キットが開発できそうです」
「一滴で?」
「はい、陽性ならそこからどの種類が含まれるかも3日で精密同定できます。
確定はもう一滴を限界希釈法で分離しますけど一週間かかります」
「簡易キットは機械が必要?」
「いえ、TK大学と関係のある臨床検査薬メーカーが開発した乾電池で遺伝子増幅出来る機械があります。光るか光らないかで陽性陰性を判定できるんです」
「すごいなあ」
「プライマーさえ作ればキットが組めて、24テスト2万4千円ですって」
「必要なキット数が年間1万ぐらいだったら手作業で製造するそうです。
もっとなら5億の設備投資して10万キットで原価が半分になるそうです」
「100万キットなら?」
「へ?」
「それぐらい必要になる。
設備投資はこちらから融資すると言って進ませてくれ。
一週間以内に計画を確定させて」
「そ、それは」
「臨床検査薬以外なら認可もかからないだろうから早く進めるんだ。
最初は手作業でも良いが一年後には月10万キットが必要だ。
ただし24テストで1万2千円」
「大もうけでしょう」
「それだけ必要なんだ、あと守秘義務契約は厳重にね。
間違っても生菌は渡すなよ」
「え、ええ」
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「側鎖がメチル基だけなら大丈夫のようです。
電線メーカーでは樹脂さえあれば対応できるということなので、5タイプそれぞれ1kmサンプルを作らせます」
「出来たらすぐにホノルル市に空輸してくれ、かなりまずい状況らしい」
「ええ、尻を叩いて二ヶ月後に」
「一ヶ月後」
「ううう、努力します」
「努力させますだろ、金はなんとかするし」
「はい!」
「メーカーに製品があるか問い合わせて」
「2タイプならあるそうです」
「じゃそれ優先、じゃんじゃん送っちゃって」
「はい、ホノルルとは必要量を打ち合わせてます」
「グッジョブ」
スマホを置いて椅子にもたれかかる。
ここ三ヶ月めちゃ忙しくて家にも帰っていなかった。
「風巻先生!」
「は、はい!」
「ホテルを予約しました。今日はお風呂に入って貰いますから」
「あ、あの・・・」
「言わなくても結構です。総長からは黙って全面協力と言われています」
「そうか」
「さ、参りましょう」
「んんん?」
「場所をお教えしますわ」
「あ、、そうか、じゃあ、ええと、スマホだけで良いか」
「はい、こちらです」
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「あの・・・ここってどこ?」
「いわゆるラブホです」
「てか、なんで三田さんが一緒なの?」
「お風呂で溺れたら困りますので」
「う、う、うん」
「先生・・・」
「着痩せするタイプなのかな、めがねを外した姿も初めてだ」
「はあ、はあ、はあ・・・先生」
「お、おい、そこは・・・うひゃ」
「はあはあ、先生、抱いてください、はあああ」
「う!」
別の部屋には別のカップルがいた。
「マリアさん、つい・・・中に出しちゃって」
「いいの、浅田先生ってウブ」
「うう」
「大変でしたね、少し息を継いで・・・まだゴールまでは大変でしょ」
「そうだね・・・あの・・・」
「はいはい、チュウして」
「うへうへ」
努はジャン・ロック・ラルティーグになりなさいとラブホに連れ込まれた。
「ジャン、もっと動きなさいよ」
「だ、だって、三回目・・・」
「じゃあ上に乗るから」
「う!」
「うふんうふん、ジャン、愛してるわ」
「ナ、ナディア、エロすぎ!」
「いいでしょ、はあはあ、ああ、ああ、うふん」
「うう、うう、我慢・・・」
ラブホで三組が一休み、やっと光が見えてきた。
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「プラスチックを栄養源にすることで酸素消費は抑えてエネルギーを得られているから植物プランクトンが生き残れるという訳か」
「海水の精密分析で短鎖脂肪酸量が増えていることがわかっています。
これは他のバクテリアにとっても栄養源になりますからプランクトンが増加していますね」
「バランスはとれると言うことかな、海水の酸性化はどうなんだろう」
「そこは精密なデータが取れていません」
「ううむ、とにかく調査を進めよう」
手作業サンプルは三万キット完成した。