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海嘯  作者: 日川文月
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一 ハワイオアフ島

2019年11月に書いたが、某国事情でボツにしたものでした。

自己満足で掲載します。

さしさわりのあるものは書き換えましたが、この小説は全てフィクションであり文中の登場人物や団体名は架空のものです。

「おすすめはハワイ、四泊五日のツアーがあります」

「ベタだな」

「そうね、それに綺麗な砂浜の海が見たいわ」

「あ、年々海洋ゴミが問題になってるって聞いたことある」

「ハワイに限らず、グァムやパラオでも同じですよ。

 ただハワイ州は観光価値保全のためにかなりの予算をかけて、

 クリーンアップしましたから、驚くほど綺麗になってます。

 これは世界各地のクリーン度評価表、ここ数年で急激に評価を上げてますよ」

「へえ、こんなのがあるんだ・・・日本は悲惨だな」

「沖縄に行くよりハワイの方が航空運賃は割安になりますよ」

「え~なんで」

「受け入れが多いので薄利多売という仕組みですね、ぶっちゃけ」

「なるほど」


旅行会社の担当が売り込みに必死だ。


「いいすね、新婚らしい」

「だよな、なんで俺たちは・・・」

「仕方ないじゃないですか、研究費また削られちゃってるんでしょ」

「だからって・・・」

「はい、ありましたよ、超破格値の片道切符が2枚、往復ならもっと安いのに」

「調査結果次第で予定が立たないの」

「はあ」

「明日の二十時か、ま・・・この航空会社大丈夫だろうね」

「さあ、あ、いえ、たぶん」

「ううう」

「先生、明日じゃあ準備しないと」

「ああ、じゃ、現金払いか・・・」

「すみません」


千葉県K市にあるTK大学大気海洋研究所の研究員、浅田玄樹准教授と小西治助手は、HY大学マノア校・ハワイ海洋生物研究所から応援要請があり急遽出かけることになった。

飛行機は成都・上海・羽田・ホノルルという路線を一日2往復している古い機体、夜出発してハワイホノルルには朝到着する。

「先生、大丈夫ですよね」

「うう」


無事到着して、バゲージをゲット、空港内のレストランでひとまず朝食、迎えに来る時間まで一休みした。

「お迎えにあがりました。マリア・オカダと申します」

「日系ですか?」

「ええ、アサダゲンキさんとコニシオサムさんですね?」

「はい・・・笑われるのは慣れてますから」

「う、うふ、すみません」


トヨタのピックアップにスーツケースを積み込み、後ろの座席へ、運転手は黒人系の青年だった。

「ジム君は学生です」

「オハヨゴザイマス、センセイタチユウキアリマスネー」

「え?」

「あの航空会社、結構落ちてるんですよ。

 ま、羽田まで来れたら当たりでしょうけど」

「ひ~」×2

「宿舎は大学構内にありますから後でご案内します。

 まずは我々の研究室でご説明したいと思います」


ワイキキにあるHY大学は海洋生物研究では先端的で海洋ゴミの解析に力を入れていた。研究室のグレイ・オーマン教授とスタッフと挨拶後のブリーフィングで歴史的なことから概要を聞き、ランチ、午後はいろいろ話し合った。


「・・・我々は海洋微生物学の研究機関なんですが」

「ええ、我々はそっちは門外漢で、当大学の微生物学関係の研究機関はあまり乗り気ではないんですよ」

「深海微生物分野に予算が振られています。

 高圧環境で生きている微生物から有用遺伝子が多く見つかっていますから」

「そうなんですよ、我々の予算が削られてそっちに回されている。とほほ」

「どうも変なんです。ゴミのサルガッソーと言われている地域で回収船が活動してますが、それだけでは漂着ゴミの急激な減少や、マイクロプラスチック量の減少が説明できない」


「そうですね、このあたりから落ち幅が変化している・・・例えば自然災害的なことはありましたか?」

「高潮や長雨の洪水は毎年起こってますし、火山の活発化の時期とはズレていて」

「回収船の活動は2020年開始で本格的には2021年でしたね。2019年の災害について詳しく調べてください」

「回収ゴミはどう処理してるんですか?」

「サンフランシスコで破砕処理をされてコンポジット、つまりは発電用燃料になってます」

「日本からもお金が出てますね」

「ええ、回収経費から採算は十分ではないので」

「とりあえず、マイクロプラスチック量の減少が顕著なこの地点で微生物調査をしてみますか・・・一応機材は持ってきています」

「ゴミや海水サンプリングはやっていますが?」

「コンタミがないように注意が必要で、海洋微生物用の培地も必要なんです」

「なるほど」

「微生物実験室を間借りできればさらに良いと思いますが・・・」

「手配してみます」

「ちょっと時間がかかりそうな気がします。なんとなく嫌な予感」

「え?」

「あ、今のは忘れてください」

「それでは、宿舎に案内を、着替えもさせずにすみません。五時にまた迎えに行きます。歓迎夕食会にしますので」

「それはありがたいです」


 ーーーーーーーーーー

「先生、マリアさんって美人ですよね、結婚してるのかな」

「おいおい、仕事に来てるんだぞ」

「え、ボクはハワイだっていうから手を上げたんすけど」

「ガク!明日からこき使うからな!」

「ううう」


「おまたせしました。あらアロハシャツ」

「いやあ、郷に入りては郷に従えで」

「近いですから歩いて行きましょう」

「はいはい」

「みんな忘れっぽいわ、2019年の災害では高潮とハリケーンでワイキキビーチからここらへん、大学まで水浸しになったことがあるんですよ」

「え~」

「ほら、あそこまで洪水、色が変わってるでしょ」

「あ、本当だ」

「図書館はもっと前の洪水で被害があったから対策がとれていたんですけど、かなりの被害があったのに・・・よく言えば前向きのハワイ気質ってあるんです」

「日本人もそうですよ、自然災害が多い国なので・・・」

「あ、そうですか」

「へこたれないところや、みんなで乗り切ろうって思うところ・・・」

「浅田先生は福島出身なんですよ」

「お、おい、言うなよ」

「あ!東北2011の?」

「大学生だったので・・・家族は命からがらでも無事でしたから」

「そうでしたか・・・」

「ほら、こうなっちゃうから言うなって言ってるのに」

「すみません」

「あ、そこの道をまっすぐすぐです」


店は二階、地元民が来る店で、本格的ハワイ料理、ビールで乾杯して注文、日本人の二人はみんなのおすすめを参考に頼んだ。

「あ、それから、海洋微生物研究所のナディア・カウアニを紹介するよ」

「ナディアです。よろぴく」

「うう」

「漫画オタクだって、本名は違うけどね」

「アハハ」

「実験設備の空いているところはあります。P2ですけど」

「大丈夫です」

「それじゃ、明日ここへ来てください」

名刺を交換した。

「はいはい、ビールおかわり」

「ボクモ~」

「あたしも~」

「ペースはや!」

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