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吸血できないなら吸血鬼やめっちまえ。  作者: 七光 輝
プロローグ
7/15

7話 暴力〈ビュロンス〉

「あーあ、天海さん死んじゃった 。

自我を失って天海さんを食い殺すとか

最悪だな、お前は。

ここに連れてきたお前が悪いんだよ、彰。

お前が天海さんを殺したんだよ。」

「わかってるよ、そんなこと。

言われなくてもわかってる。

殺しちゃったんだな、俺。

ごめんな、天海さん.......!!!」

「悲しいか?悲しいよなぁ.......

だったらいっそ

そのまま一緒に死ねええええ!!!!」


ドーーーーーン


章は怒りに任せ、俺をめがけて

雷を落としていく。

凄まじい落雷をかわしながら

俺は天海さんの冷たくなった

身体を抱えて運び、

そっと部屋の片隅に下ろし、

怒り狂う章に聞いてみた。


「なぁ、そこまで俺が憎いか?」

「憎いさ。お前さえいなければ、

お前さえいなければ......!」

「なんだ、俺さえいなければなんだ?

なんにもない俺の何が欲しいんだ?

親父によって管理された生活か?

双子の兄弟によるいじめの毎日か?

それとも、このバケモノじみた

力が欲しいのか?教えろよ、なぁ!!

お前の気が済むなら何だってくれてやるよ!!!!

だからもうやめてくれ!!!!!」

「そうだなぁ、そういえばなんだろうな。

雑魚でなんも出来ないバケモノのお前に

俺は何がしたいんだろうな。

俺もよくわかんねえけど、

強いて言うならたまたま?

目障りだから?気に入らないから?」

「そんな理由で....?

俺がお前に何したって言うんだよ......

何が気に入らないんだよ!!!!!!」

「別にどうもされてないよ?

たとえて言うなら、

そこに蟻が歩いてるとして、

その蟻を踏み潰すのに理由なんて

考えたことある?

それと一緒、そんな感じ笑」

「章.....いや、お前.......

どこまで人をバカにするんだよ.....

絶対に許さねええええ!!!!!」


その瞬間俺の中で何かが

弾けた気がした。

今まで張り詰めていたものが弾け、

自分の中に湧き上がる

何かを感じた。

吸血衝動とはまた違う、

明らかな

「暴力」「殺意」「残虐」への

渇望だった。


「.....!」

「なっ....?!」


一瞬で間合いを詰めて

俺は章を殴り飛ばした。


「てめ...ぐはっ...!」


喋らす間もなくひたすら殴った。

殴っては蹴り飛ばし、投げつけ、

思いつく限りの暴力を振るった。

その動きには型、流派などない。

ただひたすら暴れ、

子供かと言いたくなるハチャメチャな

戦い方で章を痛めつけていく。

章もかなり早くかわしているようだが、

それでも俺のスピードにはついてこれず、

一切の反撃と回避を許さなかった。


「もう許して...ぐはっ!!!」


こんな気持ちは初めてだ。

惰性で生きてきたこの人生、

初めてこれほど気分が高揚し、

怒りに震えている。

血が騒ぐって

こういうことなんだなって思う。


「くそが...雑魚の分際で....ゴホッ!!!!!」


圧倒的な力の差だった。

正直自分にこんな力があったんだって思うと

改めてすごいなって思ってしまう。

冷静に自分に関心できるほど、

あまりにも章が弱く感じた。


「なんで....!なんで効かないんだよ!!!」


章は俺の攻撃に合わせ、

ひたすら放電や落雷を俺に浴びせた。

しかし、本当の意味で

全く効いていなかった。

焼きただれていたはずの皮膚も

いつの間にかキレイさっぱり治っており、

放電や落雷で火傷や傷を負っても

すかさず治っていく。


「これが吸血鬼の力か...!

すげえ!!すげえよ章!!!!

今ならお前に全く負ける気がしねえ!!!!」

「調子に....ゴホッ!!!!!」


喜びながらも章を殴る手はやめない。

殴り繰返しているうちに、

気がつけば章は動かなくなっていた。

帯電もすっかり収まり、

髪も毛先だけが白く残ったままだった。


「うっ.....うっ.....」

「ハハハハハ!!!!!!!

どうしたんだよ章!!!!!!

死んじゃうぞ?!いいのか?!」


章はもはや呻くことしかできなかった。

抵抗の意志など全くなかったが、

それでも俺は手を止めなかった。

止まらなかった、という表現の方が

正しいだろう。

溢れてくる暴力への喜びに、

拳はひたすら振るう()()()()()()

求めていたからだ。


「だれ....か.....助け.....て......!!!」

「ぐはああああああ!!!!!」


章の密かな嘆願に応えるかのように、

章の身体は光を放ち、俺を吹き飛ばした。


「な、なんだ....?」

「いやぁ...お見事な力です。

あなたに目をつけて正解だったようです。

面白い双子ですね、決めました!

あなた方2人ともお連れしましょう♪」

「章.....?」

「《焔雷穿(トネールライン)》」

「?!」


章の指先が小さく、だが強い光を発した

その瞬間、細い何かが俺の胸を貫き、

俺は意識を失った。



「まずい.....!」


彰の影の中でグレオは密かに観察していた。

2人を戦わせ、どれほどまでに吸血鬼としての

力を引き出せているか見極めるためだった。

まだ覚醒直後ということもあり、

"持っている方"もすぐバテるかと思いきや、

危うく"持てる方"を殺しそうになったため、

意識不明だった"持てる方"に影から憑依し、

身体を操っていたのだった。


「はぁ....はぁ......

少々本気を出させてもらいました。

こうでもしないとあなたを

行動不能にできないしょうからね....。

大人気なくてすみませんね?

あなた方どちらも壊せないんですよ。」


《焔雷穿》は《雷焔侯爵(トネル・マーキス)》と呼ばれるグレオが放つ

雷系魔法の中でも最強クラスを誇る代物。

その威力は「魔竜(ダークドラゴン)」をも

一撃で屠り、町を1つ跡形もなく

消し飛ばすことが出来ると言われている。

グレオはそれほどの魔法を収縮し、

彰の心臓を射抜いたのだった。

それでも、彰を完全な死までは

至らせることができないため、

"あくまでも"気絶させたのである。


「しかし、"純血"はやっぱ違いますね....

"血筆(ペン)"なしじゃさすがに

魔力が持ちません...。

多少無茶はしましたが、

これで良い検体が手に入りました。

このガキ共の血を使えば

当家も安泰ですし、

アストレアもこれで完全に.......ん?!」


グレオは彰の元に《転送魔法(ポータル)》を開こうとした

その瞬間、その《転送魔法》の横で

別の《転送魔法》が開いて鎖が飛び出し、

彰の身体はを絡め取ったかと思えば

そのまま引きずり込んでしまった。


「《空虚なる牢獄の鎖(リアン・エスパーソ)》だと....?!」

「ゴホゴホッ....悪いな、坊主 、あの子は渡せん....!」


そう告げたのは今にも死にそうな、

先程章に倒されたはずの了であった。


「おやおや、まさか寝転がってた

死体があなただったとはね....

空虚大公(エスパス・アーク)》リオ!!」

「くっ.....その魔力量じゃ....

あの封印は破れまい......

残念だったな、クソ坊主.......」

「たしかに、今の状態では

彼を追いかけることもできませんが、

あなたを殺す程度ならできますよ。

まったく、余計なことしてくれますね、先生。」

「やっぱりお前が血の媒介をあいつに与えたのか...!

雷系の血性はお前にしか流れてなかったはず...」

「ええ、因子が陰性になっていただけではないかと

思いましてね?強力な他因子を流して

少し刺激を与えてみれば、まぁ大当たり!

まさか、最強の魔王の子が

ただの人間に生まれるわけないじゃないですか?

あなたもそれを疑っていたはず、

なのに検証はしなかった。

何故でしょうかね?」

「くっ....お前には関係の無いことだ....!」

「概ね、先代魔王とあのお方を重ねてしまった、

そんなとこでしょうか?」

「うるさい!!黙れ!!!!そんなヤワな理由で...!」

「まぁいいでしょう、今となっては

そんなことはどうでもいいのです。」


グレオはそのまま了の元まで歩くと、

うつ伏せ状態から足で仰向かせ、

胸元を足で踏み抑えながら指を向けた。


「まさか、先の大虐殺以来

どこに姿を消したかと思えば、

人間界でガキの世話をしてたなんて....

血鬼因子もこんなに薄れて、

目も当てられませんよ....」

「へへ、時代の流れってのは

移りゆくもんなんだよ.......

我々のような過去の遺物よりも

今の若き産物のお前らが時代を

作っていくの.....ぐはっ!!!」


グレオはそのまま了の胸をさらに強く踏み、

指先に魔力を込めた。


「うるせえよ、この死に損ないが。

何か言い残すことは?」

「うぐっ......."器"はくれてやる...!

だがこれだけは覚えておけ...!

力ってのは、さらなる力を求める...!

そして全てを飲み込み、蹂躙する...!

飽くなき純粋な力を、誰にも止められない....!!!」


「くだらないですね。

あのガキは絶対に見つけて殺します。

あなたの思い通りにはさせませんよ。」

「ゴホゴホッ...




アストレアに栄光を!(ヴィヴ・アストレア)》」




そして了は光線で胸を貫かれ、

息を引き止めたのであった。


「我々も帰るとしましょうか。

大物は逃がしましたが、あなたは手に入りました。

頑張ってもらいますよ?出来損ない君♪」


章の身体を乗っ取ったグレオは

影に溶け込むと、そのまま消えてしまった。





後日、この事件は落雷による

一家の火災として報道された。

現場は激しい焼け跡や血痕が残る中、

遺体は何一つなかったらしい。

唯一残ったものは脱げ捨てられた

女子高生のローファーシューズが1組と

現場から去っていく特定不可能な

足跡があったという。

いつもありがとうございますm(*_ _)m

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