11話 感知〈リレヴァトーレ〉
「魔界?!」
彼女が発した言葉に驚きつつ、
彼女に自分の置かれてる状況について
詳しく聞いてみた。
まず、自分が魔界の「ヴァンピューレ」という
魔物の国の中の
《失われた都》という場所にいるとのこと。
魔界には様々な魔物の種類が住んでおり、
その構造は階層状で上に行けば行くほど
住んでる魔物が少なく、力も強いらしい。
その魔界の最下層の最果てに
「求血種」たちが住まう
「ヴァンピューレ」があり、
「ヴァンピューレ」の西側に、
《失われた都》があるらしい。
「ところアキ...いや、あんた!なにものなの?!」
「アキラって呼んでくれないんだ...」
「名前を聞いただけなのに何か勘違いしてない?
恥ずかしいし図々しいわよ?
あんたなんか「あんた」で十分よ!」
美女に名前を呼んでもらうという
淡い理想を早々にぶち壊されたが、
気持ちを切り替えて自分について考えてみる。
「あれ、俺ってなにしてたんだっけ?」
「もしかしてあんた、自分のこと覚えてないの?!」
「いや、名前は憶えてるんだけど、
それ以外は全く思い出せないんだ。」
自分の名前が「御影彰」ということだけは確かだが、
どこに生まれ、どこから来て、
何歳なのか、家族はいるのか、
などの自分に関することが全く思い出せない。
「記憶喪失というよりも、
生まれたばかりの赤ちゃんって思えば
記憶がないのも説明はつくけど
自分の名前があるものね。
そもそもどう見ても赤ちゃんには見えないし...」
彼女はそうブツブツと呟きながら
俺のことについて深く考えてるようだ。
確かに、何かの子供と考えるのも無理ではない。
彼女曰く、俺は鎖でできた卵から
出てきた?生まれた?らしいし、
魔界では一部の魔物は産卵もするとのことである。
別に珍しいことではないそうだ。
「それにあんた、うちの血も飲んでたし
求血種で間違いはないと思うんだけどねぇ...」
彼女はそう言うと俺の顔をじっと見つめて、
自分に引き寄せてまじまじと俺の顔を見た。
「にしてもすごいきれいな顔だわ...
男って言われなきゃ絶対に気づかないわよ。」
「な、なぁ。そんなに女に見えるのか??」
「女そのもの...うん??」
俺の顔を嘗め回すようにみて褒めたかと言えば、
彼女の表情は一変して、
「ねぇ、口を開けて!!」
「な、なんでだよ!?恥ずかしいわ!!」
「いいから見せなさいよ!!」
「な、なにすんっ...!!」
彼女は鬼気迫った表情で俺の口を無理やり開けると、
「?!」
「いてえなぁ...いきなりなんだよ。」
彼女は驚いて真っ青になりながら、
俺の口から手を離し、
まるで熊にでも遭遇したかのように
ゆっくりと後退りながら俺と距離を離す。
「あんたそれ...」
「な、なんだよ、俺の口の中に
なんかおかしいものでもあったのか??」
「化け物...!!」
「は?!」
彼女はそう言うと必死になって
俺から逃げようと走り出した。
「おい待てよ!!話を聞いてくれ!!
何があったのか教えてよ!!!」
「いやあああ!!近づかないで!!!
誰か助けて!!!誰かあああ!!!」
彼女を追いかけるも、
彼女は助けを呼びながら全力で
俺から逃げ続ける。
「はぁ、はぁ、待てって...!!
話を聞けよ...!!」
「いやあああああ!!!!」
自分の足がまだ思うように動かず、
四苦八苦しながら彼女を追いかけても
全く追いつかない。
普通の男性であれば余裕で追いつく速さでも、
まるで歩きたての小鹿の様な足取りじゃ
どれだけ頑張っても追いつけやしないだろう。
「待てって言ってんだろーが!!!!」
理由もわからずいきなり怖がられ、
体が思うように動かず、スタミナもないから
苦しい中で走って追いかけてる自分に
全く応じてくれない彼女への
イライラがたまり、
怒りを露わにして大きく叫ぶと、
じゃらじゃらじゃらじゃらじゃら
「な、なんだこれ?!」
自分の後ろに大きな魔法陣が展開し、
その中から無数の鎖が飛び出して、
彼女に向かって飛んでいく。
「いやああ!!ぐっ...!!
放して!!!放してよ」
無数の鎖はあっという間に彼女を捕らえ、
まるで意思があるかのように
俺のもとへ手繰り寄せていく。
「いやあああ!!!いやああ!!!」
「落ち着いて!!何もしないから!!
話を聞いて!!」
鎖に捕らえられても彼女はパニックで
泣き叫ぶ事を止めず、
必死に逃げようともがき続ける。
「ああ、もう!!」
「んん?!」
あまりにもうるさいし、騒ぐから落ち着かせようと
無理やりに彼女を抱きしめた。
「なにがあったのか知らないけど、
何もしないから!ね?話そう!!
何があったか教えて!!」
彼女にそう告げると、
腕の中で密かに泣いていることに気づいた。
しばらくしたら彼女は落ち着き、
やっと話を聞いてくれた。
「もう大丈夫、落ち着いたから放してちょうだい。」
「いいけど、本当に大丈夫?
そう言ってまた逃げたりしないよね?
正直もう疲れすぎて動けないよ。」
「大丈夫よ、いいから放して。
詳しいこと話すわ。」
ここで初めて自分も冷静になって、
彼女に巻かれた鎖をまじまじと見つめる。
「何してんのよ。早く解きなさいよ。」
「それがさ..、俺もわかんないのよ、へへ」
「とぼけないでよ!!
あんたが動かしてるんでしょ?!
なんでわかんないのよ?!」
「わかんないよ!!ムカついてかーっとなって
気づいたらこの鎖が出てきたんだよ!!
俺の意思じゃないよ!!」
「はぁ、何それ?
まぁいいわ、このまま話すわ。」
彼女は諦めてそう言うと、
俺の口の中で見たものについて話始めた。
「自分の歯触ってみなさい、
上下に2本ずつ鋭い牙が生えてるでしょ」
「本当だ。でも吸血鬼なんだし、
普通は牙が生えてるんじゃないの?」
「はぁ?何言ってるの?
普通の求血種は牙なんて生えないわよ??」
「いやでも、俺の知ってる吸血鬼は生えてるぞ?
それで血を吸ったりするんじゃないの??」
「はぁ?!なんて恐ろしいことを...
やっぱりそうね、確かにあんたは吸血鬼よ。
でも求血種じゃないわ。」
「...どういうこと??同じでしょ??」
「あんたは吸血鬼。求血種の成れの果てよ。」
「吸血鬼??なんだそれ??」
「簡単に言えば、化け物。
ヴァンピューレじゃ他種族よりも
恐れられてる脅威よ。」
「その、レヴナント??とやらと
求血種じゃ何が違うんだよ?
同じ血を啜って生きてるだろ??」
「いや違うわ、牙の有無こそが
吸血鬼と求血種の最大の違いよ。」
「わけわかんないよ。詳しく教えてよ。」
「そうね、でも長い話になるわ。」
彼女がそう告げると、巻き付いていた鎖が
徐々に解き始め、展開された魔法陣の中に
吸い込まれるように消えていき、
やがて魔法陣も消えた。
「吸血鬼と求血種を語るにはまず、
違いが生まれる原因となったある血族から
話さなきゃいけないわ。
かつてこの《失われた都》を統べていた
呪われた血族、
「アストレア家」について話すわ。」
「アストレア...ぐっ!!!!」
「大丈夫?!ねぇ!!大丈夫?!」
俺はその名を聞いた瞬間、激しい頭痛に襲われた。
社会人生活が忙しすぎて、
趣味に時間を設けることができず、
気づけば1年経ってしまいました(´;ω;`)ウゥゥ
これからは随時更新していきますので、
よろしくお願いします!!