冒険者ギルド
投稿ストップして申し訳ございません。
今日からまた再開しようと思います。
一言で、一言で言わせてもらう。
この店すごい。
会議室に向かう際、店の中を通ったとき少し見ていたのだが、まじでヤバイ。
なんだよここ。お城みたいな内装してやがる。
馬鹿でかいシャンデリアはあるわ、壁に絵画は飾られてるわ、宝石めっちゃ売ってるわ……
「ほんと店主からは考えられないような店だよなぁ……」
「なんか言ったか?」
あ、ヤベ……
「い、いやぁ。店の内装凝ってるなぁって……」
「そりゃうちの嫁が監修してるんだからよ。なめてもらっちゃ困るぜ?」
そりゃそうか。
こんな店主にそんなことできるわけないもんな。
……と、口には出さないでおこう。
コンコン……ガチャ
「あなた、お茶が入りました。」
そう言ってミラさんが紅茶を持って部屋に入ってきた。
「どうぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
目の前に置かれたカップからは、少し離れているのにもかかわらず、とてもいい香りが漂っていた。
「うちの紅茶はうめえぞ! なんせ主力商品だからな!」
主力商品か。
たしかにこの香りなら分かる気がする。
「じゃあ、いただきます。」
そう言って俺はカップを傾けた。
口に入れた瞬間、広がるのは甘い風味。
甘みはすっきりとした爽やかな甘さで、紅茶の香りを決して邪魔しない。
そんなに紅茶を飲まない俺でも分かる。
「うまい。」
「だろ? そりゃうちの嫁が入れたんだ、うまいに決まってる!」
「ふふ、あなたったら。」
ミラさん(美女)とハイルさん(野獣)はすぐ愛のフィールドを作る。
うん。仲がよろしくて何よりですね。
しばらく紅茶を楽しんだ後で、ハイルさんが話を切り出した。
「さて、カイン。肝心の報酬の件だが……」
そう言うとハイルさんは机の上に皮袋とブレスレットを置いた。
「これは……?」
「まずは金貨三十枚。」
「さんじゅっ……!?」
「そしてこれが魔道具だ。あんま値段は言いたくはないが、金貨十枚はするものだ。」
合計金貨四十枚。
正直バカなんじゃないかと思う。
「そんな……こんなに受け取れませんよ!」
「いや! これくらい受け取ってもらわなくちゃメンツが立たねぇ! 一応お前はこの商店の主人の命の恩人なんだ。黙って受け取ってくれ!」
そう言って彼は頭を下げた。
そして俺も結局
「はあ……わかりました。これはありがたく受け取っておきます。だから顔をあげてください。」
そう言って俺は皮袋を受け取った。
「ところでこの魔道具はどんなものなんですか?」
「ああ、それは魔力を貯めることのできる魔道具だ。」
「魔力を……?」
「ああ。それには魔力を貯蔵するという習性を持つ魔物の魔石が使われているんだ。大きさとは裏腹に膨大な魔力を貯めることができる。ただし、貯めた魔力を解放できるのは一度きりだ。一度解放すると割れて使い物にならなくなっちまう。」
一度きりかぁ。考えて使わないとな。
「ありがとうございます。大事に使います。」
「おう、そうしてくれ!」
そう言った後、ハイルさんとミラさんは立ち上がって、
「この度は夫を救ってくれたこと、改めて感謝いたします。」
「改めて礼を言わせてくれ。」
「「本当にありがとう(ございます)。」」
なんだかすごく照れ臭い気持ちになった。
話も終わり、部屋から出た俺は店の出口に向かった。
俺は見送りに来てくれた二人に向かって、
「今日は本当にありがとうございました。またこの店を利用させてもらいます。」
そう言った。
「おう! また頼むぜ! そん時はしっかりサービスしてやっからよ!」
「はい。楽しみにしてますね!」
僕は振り向き、店を出た。
少し日が傾いてきた頃だろうか。
外は活気に満ち溢れている。
そんな街中を歩きながら、カインは次の目的地、冒険者ギルドへ向かう。
ハイルさんの店から大体十分くらい歩いただろうか。
目の前には高い立派な建物が建っていた。
看板には大きく"冒険者ギルド"と書いてある。
扉をギィと鳴らし、中に入った。
中はとりあえず広かった。
全体的に吹き抜けになっていて、真ん中には螺旋階段があり、そこから二階に行けるようになっている。
正面には受付カウンター、右には買取カウンター、左には何やら紙がたくさん貼ってある掲示板がある。
俺はそのまま真っ直ぐ歩いて、受付カウンターの空いているところに入った。
「こんにちは! あれ? 見ない顔ですね。新人さんですか?」
そう言ったのは目の前にいる受付嬢のミミさんと言う人だ。
背は低め、長めの髪をしている。
そしてでかい。何が、とは言わないがとりあえずでかい。それだけは分かっていてほしい。
「あっはい。今日この街に来たもので、身分証を発行してもらいに来ました。」
「あっそうなんですね! わかりました! ここで身分証を作ってしまうと冒険者として登録されてしまいますが大丈夫でしょうか?」
「え? そんな決まりがあるんですか?」
「はい。商人としての身分証が欲しければ商人ギルドに、鍛治師としての身分証を欲しければ鍛治師ギルドに行かなければなりません。」
「そうなんですか……あの、ところで冒険者って何をするんですか?」
「え……それも知らずにここへ?」
「はい……お恥ずかしながら自分の師匠にとりあえずここに行けと言われたもので……。」
「なるほど。わかりました。そういうことならご説明させていただきます。
冒険者とは、主に魔物の討伐を専門としている人たちのことです。仕事の流れとしては、まず付近に魔物が出現すると、それが依頼としてこのギルドに届きます。その依頼はクエストとして左手にあるクエストボードに貼られていきます。それを皆さんが受け取って、クエストにある魔物を討伐するという流れですね。クエストには契約金と報酬金という制度がありまして、契約金は依頼を受ける時に払っていただくものになります。これはクエストの成果にかかわらず必ず払っていただきます。そしてもしクエストを成功させることができると、報酬金というものが支払われます。これはクエスト失敗時には支払われませんのでご了承ください。そして、クエストによってあることのできた素材などは、全て冒険者のものになります。ギルドで素材を売るもよし。自分の装備に活用するもよし。自分で保管するのもよしです。以上が冒険者の主な仕事になります。」
結局自分の実力次第か。
面白そうじゃないか。
「わかりました。冒険者で登録をします。」
「はい! 了解しました! それではこちらの紙に必要事項を記入してください。あと、発行料に銅貨二枚いただきますがよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です。ところでこのスキルの欄は書かなくちゃいけないんですか?」
「ああ、そこは任意で大丈夫です。書いてあるとそれに合わせたクエストを提供できるというだけですから。」
「わかりました。」
それを聞くと、俺は名前と年齢、役割の欄に記入して提出した。
「はい、確認させていただきます。……カインさんですね。えーと役割は魔剣士ということでよろしいでしょうか?」
「はい。大丈夫です。」
「ありがとうございます。それでは登録料として銅貨二枚いただきます。」
そう言われたので俺は袋から金貨一枚を取り出した。
「これでもいいですか?」
「はい。大丈夫ですよ。お釣りを持ってくるので少しお待ちくださいね。」
そう言って彼女は奥の方に走っていった。
周りを見るとみんな何人かの集まりで動いているなと思った。
俺もいつかそんな風になれるのかなぁと少し羨ましく思った。
「すいません。お待たせしました。」
彼女はそう言ってカウンターに白銀貨九枚と、銀貨四枚と、銅貨八枚を出した。
「こちらがお釣りになります。お確かめください。」
そう言われたので枚数を確かめてから袋にしまった。
「それではギルドカードを作っている間に、少し説明をいたしますね。」
「はい、お願いします。」
「まずは冒険者ランクについてです。冒険者には全部で五つのランクがあります。下から初級冒険者、銅級冒険者、銀級冒険者、金級冒険者、そして黒級冒険者です。これらは、黒級冒険者とそれ以外という二つのグループに分けることができます。
まず一つ目の違いは、依頼の受け方です。普通は先程言った通りの手順でクエストを受けるのですが、黒級冒険者になると、主に国からの名指しの依頼を受けることになります。そしてそれは滅多にない代わりに必ず受けなければなりません。」
なるほど。国の最終兵器みたいなものかな?
「二つ目の違いは、昇級の仕方です。金級冒険者までは主にギルドが実力を認めた者が昇級していくことになりますが、黒級冒険者には国が実力を認めた者がなります。」
やっぱ国が大きく絡んでくるんだな。
「そして最後は……実力です。」
「実力?」
「はい。黒級冒険者の人たちを一言で言うなら、化け物です。それ以外の冒険者とは圧倒的に格が違います。その証拠に今現在の黒級冒険者の人数は……四人です。」
「四人だけ……」
「はい。それだけの実力が必要というわけです。」
そのとき、奥から別の人がカードをもってやってきた。
「はい。お待たせしました。こちらがカインさんのギルドカードになります。」
そう言って白色のカードを手渡された。
「カインさんは初級冒険者からのスタートです。クエストの成功を重ねるごとにギルドからの評価が上がり、一定に達すると昇級試験を受けてもらいます。それに合格すると次のランクに上がることが出来るわけです。」
「わかりました。頑張ります。
「はい、頑張ってください!」
「さて、最後にここの施設の紹介をしますね。ここは三階建てになっていまして、一階にはここ、受付とクエストボード、そして素材買取カウンターがあります。二階は酒場になっていますのでお食事等をお楽しみいただけます。そして三階にはここのマスターであるギルドマスターの部屋があります。まあ、それくらいですね。」
「はい、わかりました。」
「何か質問はございますでしょうか?」
「あの、ここの近くにあるオススメの宿を教えて欲しいんですけど……」
「ああ、それならここから歩いて五分ほどの場所に"銀の鹿亭"という宿があります。安くてご飯の量も多いのでおススメです!」
「ありがとうございます。行ってみますね。」
「はい! 是非どうぞ!」
そう言ってその場を去ろうとしたのだが、
「あっそうだ。すいません。これをギルドマスターに渡してもらえますか?」
そう言って俺は師匠から預かった手紙を渡した。
家を出る前、師匠は俺に「冒険者ギルドのマスターに渡しとけ」と言われたのだ。
「はい? 何でしょうか?」
彼女は手紙まじまじと眺めた。
そのまま裏側を見たとき、急に目を見開いて、
「あ、あの……カインさんの師匠さんってなんておっしゃるんですか……?」
「え? あ、レイスと言いますが……それが何か?」
するとミミさんの目に涙がたまっていき……
「ギルドマスターぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
と、叫びながら三階へと大慌てで走っていってしまった。
「………………は?」