表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

悪夢の日

初めまして、ろうとです!

実はこの小説が初投稿作品なので、とても拙い文章ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いに思います。

それでは、どうぞ!



「はぁっ はぁっ はぁっ はぁっ」


 少年は駆けていた。

 燃え盛る村の中を。

 襲いかかってくる大量の魔物を斬り伏せながら。


「お父さん!お母さん!」


 いつのまにか、雨が降り出した。

 土砂降りだった。


 どしゃっ!

 少年は足元のぬかるみで足を滑らせ、地面に転がった。

 膝を擦りむき、全身泥だらけになりながらも、少年はひたすら走った。

 膝がどれだけ痛んでも、息がどれだけ切れようとも。

 自分の家を目指して。父と母の無事を願って。


「あっ!」


 少年の視界の左端に、自分の住んでいた家が映った。

 少年は力を振り絞って、さらに全力で走った。きっとみんなは生きている。

 そう信じて。


 少年はドアを思いっきり蹴破り、家の中へと入った。

 家の中は水浸しになっていた。

 見上げると、そこには屋根がなく、真っ黒な空が見えるだけだった

 ここも襲撃されたのだと気づき、少し不安になった。

 すぐにそんな考えは捨てた。

 少年はひたすら探した。

 一緒に過ごしてきた家族を。大好きな家族を。

 家の中には誰もいないことがわかり、残すは庭のみとなった。

 少年は庭に出た。

 庭は父に稽古をつけてもらった場所。

 母と一緒に遊んだ場所。

 僕の、大好きな場所。

 庭に飛び出すと、雨が一層強く降り出した。

 庭には、不気味な雰囲気が漂っていた。


「あぁぁぁ……」


 少年は絶望した。

 たしかにそこに父と母はいた。……悪魔に、胸を貫かれた状態で。

 少年は、ただただ立ち尽くすことしかできなかった。

 悪魔は、こちらを見るとしばらく考えてからニヤリと不気味な笑みを浮かべ、父と母をこちらへ投げてきた。

 ごろりと転がる父と母の体。

 僕はとっさに駆け寄った。

 まだ生きているかもしれない。

 そんな希望を持って。


「お父さ……お母さ……」


 すると……


 ボゥッ!!!


 悪魔はその手に黒い炎を生み出した。離れていても分かるほど強力な炎を。

 全てを燃やし尽くすほどの炎を。

 そして悪魔はその炎を持った手を大きく振りかぶった!!

 狙う先には、父と母がいる。


「やめて……やめ……やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 ニヤリ


 悪魔が笑った気がした。


 ドゴン!!!!


 父と母は悪魔の生み出した黒い炎に直撃し、あっという間に灰と化した。


「あああぁぁぁぁぁぁ…………」



 もうここには、大好きな父と母はいない。

 いるのは、ひとりぼっちの自分と、自分から全てを奪った悪魔。村も、家族も、全部。


 何も考えられない。

 あるのはポツンと残った無力感のみ。

 僕はただただ父と母だったものを見つめていた。

 そんな僕を見て、期待はずれだとでも言いたげに、悪魔は振り向き、そのまま去っていった。


 聞こえるのは、土砂降りの雨の音。

 自分の周りには、大量の瓦礫と灰のみ。


 雨は……まだまだやみそうになかった。





 僕の住んでいた大好きな村は、僕一人を残して、消えてしまった。

























 ………………どれくらい経っただろうか。

 あんなに土砂降りだった雨も、いつのまにか止んでいる。

 村の火は消えて、何も聞こえなくなっていた。

 ふと周りを見渡すと、そこには一本の剣が落ちていた。


「お父さん……」


 それはまさしく父が愛用していた剣だった。


「うぅぅぅ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」


 少年は泣いた。ただひたすら泣いた。

 剣を持った途端、まるで感情を取り戻したかのように泣いた。

 憧れの父をなくした悲しみ。愛しの母をなくした悲しみ。大好きな村をなくした悲しみ。

 そして何よりも何もできなかった自分の無力感と、あの悪魔への憎しみが、込み上げてきた。

 少年の手には父の形見の一本の剣。

 少年は誓った。


「絶対に殺してやる」


 あの悪魔への復讐を。







「チカラガホシイカ?」


 ふと、そんな声が聞こえた気がした。


「ツヨク、ナリタイカ?」


 いや、聞こえる。

 はっきりと頭の中に直接聞こえてくる。

 少年は、その問いかけに迷わず応えた。



「強く……俺は、強くなりたい。

 僕から全てを奪った、あいつに復讐するチカラが欲しい!」


 そう言った瞬間、目の前が強く光った。


「うわっ!!






 ……ここは?」



「よく来たな。力を欲する者よ。」



 顔を上げると、そこには赤い、炎のように燃え上がった鎧を着た人と、黒い不気味なローブを着た人がいた。


「ここは狭間。神の世界とお主らの世界を結ぶ場所。」


「はざま……」


 周りには何もなく、ただただ白い世界が広がっているだけ。


「貴方は私たちの呼びかけに応えた。力を欲した。だから私たちは力を与える。」


「力を……」


 そう言って二人は、赤と黒の玉をそれぞれ取り出した。

 するとその玉は、僕の方へ引き寄せられ、体の中へと入っていった。

 その瞬間、たしかに僕の中に何かが流れ込んでくるのを感じた。


「今、お主に与えたのは火魔法と黒魔法。どちらも奴を倒し得る力を秘めている。」


「復讐を達成できるかどうかは貴方次第よ。頑張ってね。」


 そう言って彼らは立ち去ろうとした。


「あの!貴方たちは一体誰なんですか?!」


 そういうと、彼らは振り向き、


「我は火を司る神バルク」


「私は闇を司る神ダスタル」


 と言った。


「火と闇の神様……」


 彼らはニッコリと笑い、


「「期待しているぞ(わ)」」


 そう言い残し、彼らは背景に溶け込むようにして消えた。



 少年の心には、力強い黒炎が、静かに燃え盛っていた。



読んでいただき、ありがとうございました!

本日は、もう一話投稿する予定なので、そちらももし良かったら読んでみてください!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ