06話 自覚
不定期更新となります。読んでくれている方すみません…。その分楽しんで頂けるよう頑張ります!
雷の音だけが沈黙に水を差す。大きく鳴り響く雷鳴に匹敵するぐらいに凛華は叫ぶ。
「答えろ、如月!何故仲間を襲った!」
「俺の力を誇示する為だ。」
「まだ強さに溺れているのか!」
より一層雷鳴は激しさが増し、次第に風も吹き出す。まるでこれから嵐が来るかのようにも感じ、草木が煩いくらいにざわめく様子は、そこで起こる事象を野次馬しにきた人のようにも錯覚する。
「俺はまだ力に満足しておらん。強者を倒して示すのみ。お前らも倒し俺の強さを証明する!」
その声とともに姿が消えたかと思えば凛華の眼前で手刀を振り下ろす。凛華もすぐさま刀を鞘から引き抜き受け止める。それと同時に後ろから美奈子が扇子を振り攻撃を仕掛ける。風の刃、カマイタチと言えばいいか。まるで凛華はそれが来るか知っていたように身を屈め避ける。如月は身を空中で捻り避ける。が、すぐさま凛華が追撃をする。美奈子の支援も相まって如月は攻撃を避けるに精一杯のようだ。如月が距離を取ったと同時に空を引っ掻くように手を下す。何かを察知したように凛華は刀を縦に受けるように構えると同時に、大きく金属音が鳴る。しかし、側からは何も見えない。手を振るたびに鳴り響く。美奈子は支援すべく風の刃を飛ばすが途端に姿を消す。見えない刃で攻撃しているように思える。すると攻撃を受け止めていた凛華が急に態勢を崩す。それと同時に容赦ない見えない刃が凛華の頬をかすめる。援護のため美奈子が攻撃を仕掛けるが距離を置いて凌ぐ。どうやら凛華の足に何か刺さったようだ。それを引き抜くと頰から垂れる血を拭い言う。
「護神刀か。髪の毛にも満たない細さの糸と針だな。」
「ご名答。よく覚えていたものだ。暦神ともなると出し惜しみすることもあるまい。」
とは言え、劔の目には何も見えない。如月は空を掻いて糸を操っていたようだ。見えない糸が凛華達に襲いくる。
「お姉様、糸の方はお任せください。私が退けますのでその間に間合いを詰めてください。距離を詰めればお姉様の間合いです!」
こくりと頷けばすかさず反撃に出る。相変わらず攻撃は見えないものの、流石暦神の末裔で鬼と戦ってきた猛者だ。凛華に襲いくる刃が美奈子の攻撃によって弾かれている。如月もすかさず吹き針を飛ばすが、凛華は見えてるかのようにそれを遇らう。そして間合いに入り、一閃。金属の触れ合う音と同時に如月は大きく吹き飛ぶ。
「くっ…、仕留め損ねたか。」
「流石ですお姉様。この調子いきましょう!」
体を起こす如月に暇も与えず、更なる追撃をする。凛華の刃が間合いに。勝負が決まったかのように思えたが、凛華は刀を振り上げたまま振り下ろそうとしない。
「影術、縫い影にてお前の影を縫い付けさせてもらった。影は本体と一心同体。影が動けなければお前も動けん。」
身を起こし、静かに歩みよれば拳が凛華の腹に沈む。声なくして崩れそうになる凛華に回し蹴りをして吹き飛ばす。追い討ちをかけようとする如月に美奈子が近寄らせまいと竜巻を発生させ、そして美奈子は駆けつける。
「大丈夫ですか、お姉様!?」
「え…ええ、大丈夫。それより如月の奴、まだ他に何か技を隠し持ってるかも知れない。十分に気をつけて。」
「おっと、休む暇なぞ与えんぞ。」
いつの間に来たのだろうか。美奈子の技によって距離を置いていた如月が彼女達の後ろにいる。その声で振り向くが美奈子に掌底を打つ。すぐさま凛華の刀を振るがそれをいとも容易く避ける。吹き飛ぶ美奈子は、空中で態勢を直せば扇子を何度も振り風の刃を無数に撃ち込む。糸で容易く凌げば、如月は間合いを詰め追撃に出る。それを知ってたかのように美奈子が蹴りを繰り出すが受け止められ、地面へと投げられる。凛華は美奈子をキャッチする、がそこに見えない刃が襲いくる。彼女達は受け止めるが、凌ぎきれず2人の体は次々に傷が刻み込まれていく。体力がそろそろ尽き、態勢が崩れ出す。そこへ如月がトドメを刺しにくる。
劔にとってはまるで漫画の世界だ。鬼は勿論、今見た超越した戦い。興奮など覚えず只々怯え、呆然としていた。何が起こっているかも分からない、何もできない自分が情けなくて仕方なかった。足が震えて彼女の戦力にもなれない。鬼を赤子をひねるように相手取る彼女達ですら敵わない相手。俺はどうしたらいい。
「劔君逃げて!私達が食い止める!例えここで滅びようとも貴方を絶対に逃すから!」
は?何言ってんだよ。
「私達は大丈夫ですので。劔先輩は逃げてくださいな。貴方に心配される程私達は弱くありませんし、そこにいたら邪魔で仕方ないですで。だから…逃げて、劔先輩は絶対に死んではならないお方なのですよ。」
ちょっと待て、何らしくないこと言ってんだよ。強がりじゃねーか。あんなにボロボロになってまで俺を逃がそうとして。何でそこまで俺にする。俺が死んだら世界がどうのって言われても分かんねーよ。俺はそんなことどうでもいいんだよ。くそつまらない毎日でいい、楽しいことがなくていい、平凡で平和な毎日が戻ってくればそれでいいんだ。何でこんに面倒なことが起きるんだ!
「はは、泣ける話だ。神在家の者だな。まだ自覚もしてない雑魚を何故そこまでして守ろうとする。ましてやお前らみたいな雑魚がだ。守れるとでも?守れるはずがない!強くもない雑魚が一人前に大口叩くな!」
傷だらけの彼女達に追い討ちをかける。最早虫の息だ。
くそ…くそ……くそ!考えろ!彼女達じゃ敵いっこない相手に俺なんかが何ができる!
「ビビって何も出来ないか。よかろう。こいつらを始末したら次はお前の番だ。神在家を討ったともなれば俺の強さも一層輝く。さらばだ、同胞達よ!」
鋭くかざした手を引き下ろし、トドメを刺しにかかる。
切り裂く音に血の飛沫が大きく上がる。
「え…、何で…?」
はは、やっちまった。情けねえ。役立たずの俺がこんなことしたって何も変わるわけねーのに。けど彼女達を置いて逃げるわけには行かねーよな。俺も男だ。ダサい真似なんかできねーよ。面倒くさがりの俺がここまでしたんだ、少しくらい惚れられてもいいよな…。
凛華達の前に覆いかぶさるようにして劔は身を盾にして庇っていた。流れ出す血の量が攻撃の鋭さを物語る。
「雑魚が死に急いだところで何も変わらん。」
「劔君、劔君しっかりして!劔君!」
「なんできたんですの!この馬鹿!」
おいおい、2人して何泣きそうな顔してたんだ。せっかく庇ってやったんだ。敵はすぐそばにいるぞ。俺に構ってる場合じゃないだろ。けど段々眠く……。
何も見えない、音すら聞こえない。底なしの闇に沈んでいくような感じだ。呆気ない人生だった。ハッと目が覚めて夢だといいんだがな。今回は勝手が違うようだ。先程まで感じていた切り裂かれた痛みと熱さ、今は何も感じられない。只々沈む感覚だけがわかる。
ちょっと待て、俺はこのまま死んでいいのか?彼女達は!?圧倒的な強さを前に勝てたのか!?
大きな悲鳴と共に飛んでいた意識が戻る。凛華を抱き泣いている美奈子が見える。それを見下すかのように見る如月。
俺が彼女達を守らねば!
「お前たちの努力も儚いものだ。無駄死にしたあいつが報われんな。恨むなら己の弱さを恨むがいい。」
「やめろぉおおおおおお!!!」
刹那吹き飛ぶ如月。凛華達の前に立つのは劔、だがいつもと違う。体から白い光を放っている。血の混じった唾を吐き、如月は言う。
「自覚したのか…。このタイミングで…!」
「俺にも分からん。ただ今ならお前をぶっ飛ばせる!」
「面白い!俺をもっと楽しませてくれ!」
今自覚した劔と強さを誇示する如月の戦いが始まる。




