05話 境界、鬼、そして役目
学校で鬼が出た件以来、不思議なくらいに1週間平穏な日々が続いていた。今日は前の続きを読むべく凛華にお願いして、また爺さんの家に行くところだ。だが気になると言えば、別に2人がいいとかじゃないんだが、何故お前も来るんだ。
そう、お前とは美奈子とのことだ。凛華の腕に抱きつきながら歩いているが、身長も相まって最早親子といった感じだ。付いてきた理由はと言うと
「もし、2人きりでお姉様に何かあっては困りますので、私が付いて行かせていただきますわ。」
とのこと。居ようが居なかろうが目的は変わらない。なんせ情報を得るにはそれを見るか、聞くしかないのだが聞くともなると面倒だ。凛華が言ったように、百聞は一見にしかずだ。そもそも自分が置かれている状況が既に面倒だ。
漸くして目的地に着くと相変わらず凛華は息切れしてない。なんせ最近まで暮らしてたのだから、慣れていて当然であろう。劔と美奈子は息を切らしている。そんなことは御構い無しに凛華は家の中へと進んでいく。疲れた足を引きずりながら追随していく。
改めてきて思うのは部屋が多い。この中1人ずっと居るとなると気が狂いそうだ。書籍の部屋前に来たがまだまだ奥に続いていて、奥が気になるが今回の目的はそうじゃない。好奇心を抑えて促されたところへと座る。換気のためだろうか、扉は解放され美しい日本庭園が見える。それが一層静けさを際立たせる。
早速という感じで本に手をかける。奥に消える凛華達を横目に机の上に本を広げる。前回の続きだ。さてさて、今日はどんなことが知れるだろうか。探求心だけが動かしていた。
〜鬼とは〜
黄泉月に従っている民のことを指す。種類は様々だが十二ノ暦神の末裔同様、能力を持っている者もいる。黄泉の復活の為、十二暦ノ神の末裔を喰うことで黄泉の抜け殻に力を注いでいる。境界の世界と黄泉の世界に存在し、境界の世界が崩壊することで現世にも出現する。十二ノ暦神の末裔はそれをなんとしてでも阻止しなければならない。鬼によって殺された者は現世で存在していれば謎の病によって死ぬことが確認されている。
〜結界〜
神在月が黄泉の抜け殻がある世界と現世を隔離する為に作られたもの。所謂境界の世界を指す。鬼が出現したときに損害を減らすべく鬼に対抗できる者、即ち十二ノ暦の末裔以外は結界の効力により時間共に存在が一時的消え、危険が無くなったと同時に出現するようになる。この状態を神隠しと言う。神護町を中心に八方の区域に護神の力を宿した杭を打ち、神護町に寄らせないようにすること。鬼の妖気で杭が酷い侵食をした場合、結界の効力が薄まる為すぐに十二ノ暦の者が浄化を行うこと。また杭付近に侵入した鬼は速やかに排除すること。
〜境界の世界〜
現世とは再生した世界で、黄泉の抜け殻がある世界、つまり黄泉界との妖気の影響を受けない為に結界として作られた世界である。此処が鬼との防衛戦となり、もしこの世界が鬼によって滅ぼされた場合、現世と黄泉界とが交わり混沌の世界となる。黄泉の力が一定以上戻った場合、十二ノ暦神の末裔は境界の世界にへと呼ばれる。例外として末裔であっても護神の力を自覚してない者は呼ばれることはない。またこの世界はある程度現世に干渉しておりリンクしている部分がありこちらで起きた内容は平行して進むものとされている。
〜十二ノ暦神の末裔〜
各々が役割を持ち、黄泉月とその傘下の討伐、抑制、封印のどれかを行うものとする。基本的に末裔の1人がその力を受け継ぐこととなり、その者が使命を果たすこととなる。その者が亡くなった場合に他の後継者が現れるまでその力は自覚しない。またそれぞれの暦ノ神は護神刀を持つことで真の力を出せるが、神在家のみ効力を発揮しない。神在家はその他の暦ノ神が神忠を誓うことによって真の力出すことができる。
〜神忠〜
神在家に他の暦神が下につくことを指す。神在家以外の暦神の者が誓約の儀式をによりその力同等のものが使用することができる。また誓った者は護神刀が神打になり護神の力を最大限に引き出すことが可能。神忠のやり方として、大前提としてお互いの信頼を得ること。そして暦神同士の共鳴と…
大きな音と同時に空は閃光が走り、無理やり世界から引き戻されてしまう。先程までの快晴が嘘みたいに曇天で雷が鳴っている。途中までしか読んでないが疲れたしひとまず整理する。つまり黄泉月が一定の力を取り戻しそれによって俺は呼び出されたってわけか。だがなんで力を自覚してないのになんで俺は呼ばれたのか。それにリンクしているってことはこちらでちゃんと生活してないと現実世界でも反映されるってわけだな。それも逆に然りってことだったりするのかな。あと俺の家系は何やら重要な位置に属しているらしい。しかし他の神の協力を得ないことには強くはなさそうだな。おまけに凛華や美奈子のような護神刀はあっても効力を発揮しないらしい。となると素手…?何にせよ死ぬわけには行かない。用心せねば。
気分転換もでもしに外にでも行くか。今回もかなりの時間が経ったのであろう。流石にこんなに暗くなっても気づかないなんてあり得ないことだから。背伸びして外に出た時だ。
「こちらに来ないで劔君。」
その声はいつものように静かなものではなかった。既に臨戦態勢の凛華と美奈子。鬼でも出たのか?だがその違和感はまるでない。その視線は2人ともある一点にあった。このには宙に浮いた黒装束の男。鬼のような異形な姿は見受けられない。そいつは腕を組みながら、2人を睨みつけるかのように見つめている。
「少しばかり問いたいことがある、如月。」
どうやら、知り合いのようだ。名前からして暦神の者であろう。しかし凛華はまるで敵対するかのように強い口調で物申す。だがそんな強い口調でも何一つとして如月は動じない。それどころか存在だけでこちらが気圧されそにもなる。直感的にこいつは只者ではないと素人でも分かる。如月をまるで鼓舞するかのように空を伝う閃光と音は次第に頻度を増やしていく。今から何かが起こる、そう予感した劔の思いは見事的中するのであった。




