正体は
「これは依頼失敗か?」
「いいえ、モンスターキャットの巨大な角か、牙か、爪を採取して持っていけば大丈夫よ。」
「そうなのか。」
どうやら討伐依頼内容に記載されてる魔物の部位を持っていけば依頼完了するらしい。
「けど、おかしいわ。この森のボスに勝てる魔物がいるわけないし。」
「なら、他の冒険者が先に来て倒したんじゃないのか?」
「それはないと思うわ。それだとこの依頼は無くなってるはずよ。同じ依頼は複数掲示されないから。」
「そうなのか。」
「可能性は2つね。1つは冒険者じゃない人が討伐したか。まぁ、この可能性はあまり考えられないわね。」
そうだろうな。モンスターが住処にしている森にわざわざ人が入るとは思えないからな。
「もう1つは、モンスターキャットより強い別種の魔物がいるかね。多分この可能性で間違い無いと思うわ。最低でもCランクの魔物がいるわね。モンスターキャットはDランクでも上級の魔物だから。」
「フレアはBランク冒険者だから、Cランクだった場合なら問題ないな。」
「そうね。けど、もしBランク以上の魔物が出た場合はカイトだけでも逃げて。Bランクからかなり魔物のレベルが変わるの。最低でもBランク冒険者が3人以上のパーティーを組まないと魔物1体に全滅する可能性があるから。」
そうなのか。Bランクからはそこまで変わるんだな。やっぱり俺のイメージとはちょっと違うんだな。だが……
「Bランク以上に遭遇した場合俺も戦うぞ。」
「え!?」
フレアは驚いた顔で俺を見る。がすぐニコッと笑顔を向ける
「ありがとう。そう言ってくれるだけで嬉しいわ。」
そう言った後真剣な表情になる
「けど、そうなった時は本当に逃げて。この世界に来たばかりの人を死なせるわけにはいかないわ。」
俺は運が良かったな。最初に出会った人がフレアのような人で。だからこそ逃げる訳にはいかない。元の世界では使わなかったが、この世界なら遠慮なく俺の力を使えるしな。
「俺は逃げない。女を置いて男が逃げ出せる訳ないだろ。」
フレアは少し怒った顔になって
「格好つけるのもいいけど、死んだらどうするのよ……」
「まぁ、Bランク以上の魔物が出ると決まった訳じゃないだろ……」
グラァァァア
突如聞こえた魔物の雄叫び。明らかにモンスターキャットとは別の声だ。声のした方は上空だ。そこに翼の生えた巨大な魔物ぐるぐる円を描きながら飛んでいる。
「あれは……ド、ドラゴン!」
フレアが目を見開いて青ざめた表情で上空の魔物を見ている。
「ドラゴンってランクはどうなんだ?」
「Sランクの魔物よ。実物は初めて見たわ。」
「そっか、なら俺も戦う。」
キッとフレアが俺を睨みつけて怒鳴った。
「逃げろって言ってるのがわからないの!」
俺はフレアを見つめ静かに答えた。
「逃げないって言ってるのがわからないのか?」
はぁーと息を吐いた後小さい声でフレアは
「……勝手にしなさいよ………」
その顔はどこか嬉しそうに見えた。
グラァァア
ドラゴンが再び雄叫びをあげる。
「多分私達に気づいているだろうけど、なぜ何にも仕掛けてこないのかしら?」
ドラゴンは常に俺たちの真上を飛んでいる。
「よし、ちょっと話しかけてみるか。」
「え!?話せるの?ドラゴンと?どうやって?」
「テレパシーで話す。」
フレアの頭には沢山の⁇が浮かんでいた。
「言ってなかったが俺は超能力者なんだ。
俺の戦う術は超能力だ。ってもわからないか。」
「わかるわよ。魔法とは別の力のことでしょ?前に召喚されて来たおじいさんがそんな話をしていたわ。」
「そうなのか。別の力かどうかはわからないがまぁそんな感じだろう。」
「でも、本当にいるのね。超能力者なんて。おじいさんがいないようなこと言ってたのに……」
俺の力のことをフレアに伝えたので、俺は意識をドラゴンに集中させる。
『おい、ドラゴン俺の言葉がわかるか?』
ドラゴンが飛び回るのをやめた。
『なんだ!?誰だ!何処から声が聞こえるのだ!?』
ドラゴンが人の言葉を話せるのは俺のイメージ通りだった。
『俺はお前の下にいる。お前の頭に直接声を送っている』
ドラゴンが俺たちの方をひと睨みする。
『ほぉう。貴様面白いことをするな。魔物に話しかける人間を初めてみるぞ。』
まぁそれはそうだろうな。普通魔物に遭遇したら真っ先に討伐するか、逃げるかのどちらかだろうからな。
『人間、なぜ話しかけて来た?』
『お前が俺たちに気づいているにもかかわらず攻撃をしてこないからその理由を聞こうと思っただけだ。』
『アハハハ。そんなことで話しかけて来たのか。面白いな人間。』
面白いことなんか1つも言ってないが………
『お前達を攻撃しないのは何もされてないからだ。モンスターキャットのボスはこの俺に威嚇して攻撃して来たから葬ったまで。』
『そうなのか。』
『ドラゴンは無益な争いはしないからな。だが、攻撃して来て欲しいのなら話は別だぞ。』
再びドラゴンが俺たちを睨む
『いや、いい。あまり戦いたくないからな。』
俺はフレアに視線をやり会話の内容を話した。
「そうよかったわ。それならライフに行きましょ。ギルドに報告しなきゃだし。」
俺たちがライフへ向かって歩き出した時、
『人間、気が変わったぞ。我の攻撃を防いでみろ。』
ドラゴンがテレパシーで言葉を送ってきた。
少しでも多くの人に読んでもらいたいです。