弐
「大丈夫?」
馬車に近づき、檻の中のエルフの美少女二人に声をかける。
二人はドレスを着て、頭にはティアラまでつけている。
どう見てもお姫様だ。
見た目は17歳と14歳の姉妹って感じ。
エルフ姉妹はびくっとして檻の中で身を寄せ合った。
「得体の知れない術を使う男に怯えてるわね」
リゼルが言った。
「ま、怯えてても一緒なんだけどな。ほーれ、催眠おじさんだぞー」
俺はゲスく言って二人に念を飛ばすが、二人のティアラが光って俺の念を弾き飛ばした。
姉のほうが俺のことをきっと睨む。
「ヤベ。失敗した。これ好感度上がらなくなるやつだ」
「奴隷ハーレム願望持ちの催眠術師なんてそりゃごめんよね」
「そーすっとどうすっかなぁ……。
あ、奴隷商人なんているんだから、テンプレなら奴隷魔術とかあるはずだよな」
「反省しないわね。サイコパス乙」
「転生した途端、急に割りきりよくなって葛藤なく人を殺すやつなんて、まちがいなくサイコパスですよ!」
俺は矢を生やして死んでる御者台の奴隷商人の持ち物をごそごそあさる。
「お、あったあった。奴隷の首輪。取説がついてるな。どれどれ……
『マスターの血液を一滴垂らして奴隷の首に付けるだけ』!
くぅ~お手軽だね! こんなもんあったら社会崩壊しとるわ!」
俺は歯で小指を噛んで、さっそく首輪に血を垂らす。
「うはww躊躇なしwwマジ引くんですけどww」
「催眠だと支配しきれないみたいだからな」
俺は、草を生やしまくってる女神を振り返り、その首に奴隷の首輪をはめた。
リゼルの顔から血の気が引く。
「えっ……何してくれちゃってんの⁉︎ マジに⁉︎」
「マジマジ」
「いやぁぁぁっ! こんな萌え豚の肉オナホになされるなんて絶対いやぁぁぁっ!」
「もも萌え豚じゃねえし!」
「肉オナホは否定しないなんていやぁぁぁっ!」
「それはまぁ、俺も男だし。異世界だし。なんで転生なんてさせてくれちゃってんのマジキレそうなんですけど!とか思ってるし」
「じゃあ元の世界に帰すわよ⁉︎ それでいいでしょ⁉︎」
「帰せんのかよ。いいこと聞いたぜ。俺の好きな時にあっちに戻って、好きな時にこっちに来るんでもいい? 正直に答えろよああん?」
「いいですぅ! できますぅ!」
「よっしゃ、いつでも帰れるテンプレになったぜ! あ、帰してくれても奴隷化は解かないからな!」
俺がガッツポーズをしていると、
「……あの、そろそろわたしたちのことも思い出してくれないでしょうか?」
檻の中からエルフ姉が言った。
「すまんすまん。首輪つけるから待ってな」
「さりげなく非道なことを言わないでほしいですが……それはもう諦めました」
「えっ、もうあきらめちゃうの? 『くっ、殺せ』とかやんなくていいの?」
「これほどの力を持つ相手なら、奴隷でもウェルカムです」
「引くわ、マジ引くわー」
「ぶっちゃけ、一緒に世界征服しませんか?」
「野心家エルフ!」
「エルフ、迫害されてますし。人間より優れてるはずのエルフが迫害されるなんておかしいと思いませんか?」
「だよなー。長寿で魔法も弓も使えるエルフが文明レベル中世の人間に負けるわけないよなー。ふつうに戦えば勝てるはずなんだよなー」
ということで、俺はエルフ姉妹も奴隷にした。
奴隷なんてとんでもない!なんて人道主義だったり、無駄にオクテで手を出さなかったりなんてことはもちろんなく、その場でリゼルもろとも腰が立たなくなるまでやりまくった。
異世界転生に感謝を!