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プロローグ

新年の勢いでやった。反省はしてる。

 学校からの帰り道のことだった。

 田んぼに囲まれた暗い田舎道を歩いていると、交差点を渡ろうとする小学生の女の子が見えた。

 その女の子に、突如車のヘッドライトが浴びせられる。


「危なっ…………くねえな」


 田んぼから道に上がったトラクターがヘッドライトをつけただけだ。

 俺はとっさに飛び出して少女を助けたりすることもなく、手を上げて道を横切るしつけの行き届いた小学生を見送った。街灯の少ない暗い道ではあるが、小学生はヘルメットをかぶって反射板をあっちこっちにつけている。車にひかれる心配はなさそうだ。そもそも車通りも少ないし。


「あーあ。転生モノだったら、100回くらいは女の子を助けて死んでるな」


 だが実際、ひかれようとしてる子どもをそんなにうまく助けられるもんだろうか?

 「危ない!」って言ってるあいだにたいていはもうひかれてると思うんだよな。車より速く動けるやつなんていないし。


「ゴミみたいな人生だったけど最後に人助けができてよかった……なぁんてな。まだ高校生だからそこまで人生悲観してねーけど」


 そんなことをつぶやく俺を、突如、目がくらむほどのまぶしい光が包みこんだ。

 同時に、俺の身体がふわりと浮く。


「な、なんだ⁉︎」


 俺が上を見上げると、夜空に円盤のようなものが浮かんでいた。


「円盤型のUFO⁉︎ ナンデ、UFOナンデ⁉︎」


 全俺が総ツッコミする中、俺はUFOから放たれた光で、上空の円盤へと引っ張り上げられる。


「もしかして:キャトルミューテーション⁉︎」


『我々ハ宇宙人ダ』


「し、しゃべったぁっ!」


『名前はまだない』


「夏目漱石~っ!」


『近くにいるイヌを狙ったのだが目標から外れた。全俺から謝罪しつつトラクタービームを解除する』


「宇宙人とネタがかぶった! って、ちょっと待て、ここで解除されたら⋯⋯」


『五点着地すればダイジョブ』


「だいじょばねえよ! うああああっ!」


 俺の身体が1000メートルくらいの高さからフリーフォールを開始した。

 暗くて地面がよく見えなかったのは不幸中の幸いだったかも知れない。

 脳天からの着地を決めこんだ瞬間、聞こえるはずのない頭の砕ける音を聞いたような気がした。






 気がつくと、俺は暗闇の中に浮かんでいた。


「……ん? ここは? 何がどうなって……」


 頭を振りながら言う俺に、闇の中から光の塊が現れた。


 十代半ばくらいの女の子だ。

 青い髪をおさげにまとめ、ヘーゼル色の瞳をした、ちょっとあどけない感じの美少女だった。

 よくわからないヒモ飾りのついた、丈の短い白のワンピースを着てる。

 胸はデカい。大事なことなのでもう一度言う。胸がデカい。

 あと、ふともももむっちりしてて、そっちのフェチにも対応してる。

 足は裸足にサンダルだ。


 そんなあざとい格好をした美少女が――爆笑してる。


「トラックと見せかけてトラクターに轢かれた!と見せかけて宇宙人のトラクタービームで死んだなんてマジウケるwww」


 せっかくの萌え方向特化なビジュアルなのにしゃべりがギャルっぽいとはなんて残念な美少女なんだー(棒)


「いや、完全に滑ってるだろこれ!」


 状況がぶっ飛びすぎててイミフである。


「あーおもしろかったwww

 笑わせてくれたお礼に異世界に転生させてあげよっか?ww」


「どういう理屈だよ!」


「神は暇だから面白い人間は見逃さないのww」


「待て、リアルで異世界に放り出されるとか悪夢でしかないんだが。モンスターなんかと戦いたくないし、風呂にもろくに入れないし、薬も病院もないし、きわめつけにネットもないんだろ? ストレスマッハで死ねるわ。いや、ストレス溜まる前にまず死ぬわ」


「大丈夫、なぜかスマホは繋がるからwwスマホさえあればたいていのことはなんとかなるっしょwww」


「テンプレか! あといちいち語尾に草生やすな!」


「www」


「うぜえ!」


「ま、そんなわけでどーんと異世界行っちゃお?ww あたしはここで見守ってるからwww」


 そこはかとなくダメっぽい女神がそう言うと、俺の身体をまばゆい光が包み始める。


「そうは行くか! 死なばもろとも、テンプレ通りおまえも道連れにしてやる!」


「わひゃああww捕wまwっwたwww」


 というわけで、俺は草を生やし続ける女神様とともに、異世界に転生することになったのだった。

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