転校生は謎だらけ!?
学校に入ってすぐに私たち二人は職員室にむかった。
その理由は、入室許可証を受け取りにいく為だ。
学校に連絡を入れてあるとはいえ、遅刻は遅刻だと水ちゃんが言うのでこうしているというわけだ。
「失礼します、一年二組の橋本です。 入室許可証をもらいにきました。」
そういって水ちゃんが入ってから、私も同じように職員室に入るときの言葉を言って、職員室に入った。
先生たちが授業でほとんどいない職員室で私たちに対応してくれたのは体育教師の古賀先生だ。
この先生、豪快な性格と大抵のことは笑って許してくれるということでほとんどの生徒たちから人気者だ。
「お仕事中にすいません。 古賀先生、入室許可証をいただけませんでしょうか?」
水ちゃんがことわりをいれてから先生に頼み事をする。
すると、古賀先生は自分の机から二枚の白い紙を取り出すとそれを持ってこちらにやってきた。
「ほら持ってけ。」
と、言って二枚の白い紙である入室許可証を手渡した。
私と水ちゃんそれを「ありがとうございます。」といって受け取る。
その後、職員室をでて教室へと向かっていった。
そして、一年生の階に着くと自分たちの教室に人だかりができているのをみた。
私たちは転校生とやらが来たんだろうと察して、近くにいた友達の清水桜、桜ちゃんに話を聞くことにした。
ちょんと桜ちゃんの肩をつついてみると、
「後にして、今忙しい。」
と、こちらも見ずに会話をし、また人だかりのほうへと注意を向けてしまった。
あきらめずにちょんちょんやっていると、こんどはこちらを向いて、
「だから、忙しいって・・・。 え、千夏ちゃん!?」
よかった今度は気づいてくれたみたいだ。
「転校生ってどんな人なの?」
と、聞いてみると。
「それよりも体は大丈夫だったの!?」
と、ものすごい勢いで心配されてしまった。
「だ、大丈夫だから。 揺するのをやめて。」
と言うと、ようやく肩を離してくれた。
すごい勢いで揺さぶられたので、頭がまだ少しくらくらする。
「それで、転校生ってどんな人?」
と、落ち着いたところでまた聞いてみる。
「ああ、そうだったね。 と言っても、名前と性別くらいしかわかんないよ?」
と、少し奇妙なこと言ってくる。
(名前と性別だけ? ここにいるってことは戦闘科だから戦闘スタイルを公開しなきゃいけないはずだけど)
戦闘スタイルとは大きく分けて四種類ある。
まず一つ目は一番多い“近接バトラータイプ”。
これは、その名の通りで近接系の『心器』や【精霊】を使ってガンガン攻めていく戦闘方法だ。 私や水ちゃんもこれに入る。
二つ目は、“遠距離ガンナータイプ”。
これは、遠距離系の『心器』使いや火力重視の【精霊】使いの戦闘方法だ。 ここにいる桜ちゃんや海崎君がこれに当てはまる。
三つ目は、“トリッキータイプ”。
これは、『心器』や【精霊】だけではなく、使える者はなんでも使って搦め手で攻めていくタイプ。 英雄の《水弓》などが当てはまる。
四つ目は、“サポータータイプ”。
これは、自分で攻めていきはせずに“バトラータイプ”や“ガンナータイプ”の補助や回復などをつとめるタイプ。
戦闘科に入った生徒は必ずこのどれかに当てはまる自分の戦闘スタイルを公表しなくてはならない。
(そのはずなのに・・・、まあ、とりあえず分かってる段階のものを聞いておこうかな。)
「それだけでもいいや。 とりあえず教えてくれない?」
聞いてみると、
「えーと、名前は富永一で性別は男だよ。」
と、素直に答えてくれた。
「富永? 聞いたことない名字ね。」
ここで今まで黙って話を聞いていた水ちゃんが会話に参加してきた。
「水樹ちゃん! よかった水樹ちゃんも無事だったんだね。」
水ちゃんの無事の姿を見て、桜ちゃんが喜びの声をあげる。
「ええ、心配してくれてありがとう清水さん。 転校生の件なんだけどそれは本名なのかしら?」
「本名? それってどういうこと。」
と、当然の疑問を桜ちゃんが聞いている。
私も疑問が頭に浮かんでいる。
水ちゃんは「簡単なことよ。」と言って、
「この学校は普通の学校と違って転校生なんて本来ならありえない。 ありえるとしたら相当な実力者か有名な人ってこと。 それなら私達でも名前を知っていておかしくないはずなのに、誰も名前を知らないってことは本名じゃない可能性があるってことよ。」
その水ちゃんの話を聞いて、「おおー」と私達二人は驚嘆していた。
すると桜ちゃんが、
「確かにそうだね。」
と同意し、私はこう提案してみた。
「それなら直接聞いてみればいいんじゃない?」
すると水ちゃんは、
「それもそうね、答えてくれるかはわからないけど放課後辺り聞いて見ましょうか。」
と言って教室に入っていった。
私達が教室に入ると、事情を知って心配して話しかけてくれるクラスメイトがたくさん集まってきた。
その中でも一番早く来たのが、うざいと思ってしまう程話しかけてくる平野駿だ。
この男のことはどうでもいいとして、私はクラスメイトに囲まれているなかでチラッと転校生のほうを見てみると、事情を知らないのかきょとんと首を傾げていた。
第一印象は、暗いというよりは明るそうなイメージでとても強そうには見えない。
(一体どんな人なんだろう?)
と、考えているなか平野のうるさい声が聞こえていたが完璧に無視して、転校生のことを考えていた。
そして、待ちに待った放課後。
現在、帰ろうとしていた転校生こと富永君に質問しているところだ。
「ねえ、少しいいかな?」
私が声をかけると、
「はい、何ですか?」
と、敬語でこちらの要求に応じてくれた。
水ちゃんが、
「同い年なんだから、敬語じゃなくていいわ。 それよりも聞きたいことがあるんだけど、いいかしら?」
「ああ、そう。 なら、答えられないことはことは答えられないって言うけどそれでもいいなら。」
と、口調を変えてこちらの話を聞いてくれた。
「まず、一つ目はあなたどうやってここに転校してきたの?」
「ああ、それはまだ答えられない。」
(まだ・・・?)
と、私が疑問に思っていると同じ事を思ったのか桜ちゃんが、
「まだってどういうこと?」
と聞くと、
「言葉通りの意味だよ、まだ答えられない。」
その言葉を聞いた水ちゃんは次の質問持ちかけた。
「そう、それならいいわ。 次の質問いいかしら?」
「どうぞ。」
「あなたの名前は本当の名前なの?」
その言葉を聞いた富永君が一瞬、ほんの一瞬だけ表情を固くした。
だが、すぐにもとに戻ると
「どういうことかな?」
「言った通りの意味よ。 あなたの名前は聞いたことがない、この学校に転校できているってことはあなたは誰でも知っているくらい有名な人の可能性があるってことよ。」
すると、富永君は「ふ~ん」と言うと、
「質問はそれだけ?」
と、聞いてきた。
「ええ、今のところは。」
水ちゃんがそう答えると、
「そうだね、その質問に答えて欲しいかい?」
逆に、そう聞いてきた。
私達は顔を見合せて戸惑い、かろうじて「ええ」と答えた。
「そっか、なら俺と勝負しないかい?」
と、聞いてきた。
「「「勝負?」」」
思わず、ハモってしまうほど戸惑った。
「そう、勝負。 俺に勝ったら何でも一つ質問に答えてあげるよ。」
「こっちが万が一負けた場合は?」
と、当然の疑問を桜ちゃんが聞いた。
「そうだなあ~、それじゃ俺がさっき言ったことをみんなに言えるような時が来るまで俺のことを詮索するのをやめてくれるだけでいいよ。 あ、他の人に聞くのもなしね。」
そんな拍子抜けするほど簡単な条件を提示してきた。
「えーと、それだけ?」
と、私が聞くと、
「うんそれだけ。 で、どうする?」
という富永君の問いに、
「対戦するのは誰かってこと?」
と、対戦するのは前提条件で私は聞いた。
「え、いや戦うのは三人でいいよ。 戦うのかどうかを聞いたつもりだったんだけど、戦うのは決定事項だったんだね。」
と、苦笑い気味に言ってきた。
すると、水ちゃんは私達に目だけで「どうする?」と聞いてきた。
私達二人はそれだけで秘密を知れるなら、と了承した。
「一応聞いておくけど、三対一なんて正気? 私達が絶対に有利よ。 それでもいいの?」
と、当然の疑問を水ちゃんが聞いた。
「ああ、それは全然いいよ。 で、戦うのはOKってことでいいかな。 それならいつやろうか。」
富永君のその時間の問いに水ちゃんが、
「それじゃあ、明日の昼休みスタジアムを予約しておくからそこでやりましょうか。」
「対戦方式はどうする、 電脳?それとも実戦?」
「じゃあ電脳で。」
「そっか、日程も決まった事だし俺は帰ることにするよ。」
と言って、富永君は「じゃあね」と言って帰っていった。
富永君がまるで風のように帰って行った後、私は明日の戦いのことについて考えていた。
桜ちゃんの「一体本当はどんな人なんだろうね」という言葉に、
水ちゃんが、
「それは明日勝つまで考えないようにしましょう。 それよりもとりあえずは明日に備えて帰りましょうか。」
と言い、私達三人は解散することにした。
解散して教室まで戻るなか、
(一体どんな戦い方するんだろ)
という考えが私の頭のなかを閉めていた。
一方その頃、富永一は、
「いや~明日が楽しみだな~、まさか怪しいって思うだけじゃなく俺の名前にまで疑問を持つくらい頭が回る子がいるなんて、どんな戦い方なんだろうな~。」
と、とても無邪気な笑い声をあげていた。
いや~ようやく主人公だせました。
次回初バトルです。 ご期待ください。
それではこれからもよろしくお願いいたします。