あの後どうなった???
「う、うん?」
目が覚めるとそこは見たことのある白い部屋だった。
ハッとして起きあがると、そこには寮のことならなんでもできる救護医兼管理人の畑先生がいた。
「やっと、目を覚ましたかい。 カプセルまで使わなきゃ危なかったから心配したんだよ。」
カプセル、それはある医療器具の名前で使用者の細胞と体力を使うだけでどんな大怪我もなおしてくれるが、一日に一回しか使えない。
「そっか、私あの後気絶しちゃったんだ。」
と、目が覚めたばかりであまり働かない頭で記憶をたどっていくと、
思い出されるのは昨夜の光景だ。
(確か水ちゃんの後ろに・・・)
そこまで考えて私は最悪の可能性を想像した。
「水ちゃん、水ちゃんはどうしてるんですか!」
と、我を忘れて大声で先生にさけんでしまった。
幼なじみの安否を気遣っていると先生はなんてことないように、
「落ち着きな、橋本ならそこにいるじゃないか。 ほれ。」
そういって窓際の方を指さした。
するとそこには椅子に座り、壁によりかかって寝ている水ちゃんの姿があった。
「水ちゃん!」
その声が聞こえたのか水ちゃんは閉じていたまぶたをすっと開けた。
「千夏? よかった目が覚めたのね。」
そういって伸びをすると完全に目が覚めたようだ。
「無事でよかったわ。 一時はどうなることかと思ったけど、畑先生からもう大丈夫だって聞いてから急に眠くなっちゃって。 体はだいじょうぶ?」
「うん、わたしは。」
「そう、それならよかった。 畑先生、学校の方はどうなっていますか?」
そういえば今日は、転校生がくる日だった。
(いったい、どんな人なんだろう?)
「学校のことなら心配いらないよ。 先生方には連絡をいれてあるし、転校生とやらがくるのも五時間目らしいしね。 今、学校は昼休みだよだから急いでいけばまにあうんじゃないかい?」
その先生の言葉を聞くと、水ちゃんは立ち上がって、
「なにからなにまでありがとうございます。 それで、どうする千夏? 私はどっちでもいいわよ。」
そう先生にお礼を言ってから、水ちゃんは私の方を向いた。
「う~ん、じゃあ行こっか。 体はまだだるいけど転校生も気になるし、あの後どうなったかも道中聞きたいし。」
そういって私は立ち上がり、身支度を整える。
今日は確かノートなどがいる授業はなかったはずだ。
「千夏がそういうなら私も。 先生、学校には登校すると連絡を入れておいてくれませんか?」
そう言って水ちゃんも準備をする。
「連絡はしておくけど学校までの道は気をつけるんだよ。 昨日あんなことがあったばかりなんだから。」
先生は遠回しになにかあったら逃げろと心配してくれている。
「ご心配ありがとうございます。 ですが、次はしっかりと状況を判断して行動するようにしますので。」
水ちゃんも言外に次は負けないと言っている。 こう見えて私の幼なじみは結構負けず嫌いなのだ。
「そうかい、あれだけぼろぼろだったのにそれだけ減らず口がたたけるなら大丈夫だね。 気をつけて行ってくるんだよ。 高橋もカプセル使ったばかりなんだから無理しないように。」
畑先生はやれやれと首を振りながらそう言った。 ここ三ヶ月で水ちゃんの性格がだいぶわかってきているみたいだ。
「先生、水ちゃんがボロボロだったってどういうことですか?」
と、私は気になる単語を耳にして少し焦ったようにたずねた。
「ああ、そんな心配する程でもないよ。 見た目がボロボロだっただけさ。」
その言葉を聞いてひと安心した。
そのわたしの様子を見て先生が、
「あんたたちも仲がいいね。 まるでつき合ってるみたいだ。」
とからかい気味にいってくる。
「そんなわけありませんよ。 それではいってきます。」
私はやや苦笑しながらそう言った。
「ああ、いってらっしゃい。」
寮の管理人さんでもある畑先生は朝の掃除をしているときなどにこうやってあいさつすればこうやって返事をしてくれる。
「畑先生も相変わらず心配症ね。 大丈夫だって言ってるのに。」
ため息をつきながら水ちゃんはそう言った。
私は苦笑しながら、こう言った。
「そりゃあ心配もするよね、自分のところの寮生がボロボロでかつぎ込まれてきたら。」
「それもそうだど・・・、何度も言ってるんだからそうしつこく聞く必要ないのに・・・ブツブツ」
と、まだブツブツ言ってる
私は話題を変えるように聞きたかったことを水ちゃんに聞いた。
「そういえば私が気絶した後どうなったの?」
すると水ちゃんは急に真面目な顔になって、
「あまり信じられないかもしれないわよ。」
と言ってきた。
私は少し驚いた。
リアリストである水ちゃんは信じられないようなことは言わないのだ。
私が驚きながら先を促すと、
「実は・・・」
時を遡ること昨日の夜、私は倒れた千夏を見て戦闘中でありながら敵に隙をみせてしまったの。
気づいたときにはもう遅かった、腕を振りかぶるはぐれ魔族を見て「ああこれは死んだな」と現実逃避気味に死を覚悟していると突然はぐれ魔族が後ろに飛んで下がったの。
「何事!?」とはぐれ魔族の突然の行動に正気を取り戻した私は当然疑問を浮かべた。
けど、答えは一本の矢と共にとんできたわ。
そこで私は察した、「ああ、この矢をよけたんだな」と同時に直前まではぐれ魔族の頭のあった場所に飛んできたその矢を見てもう大丈夫だと思った私は、緊張していたんでしょうね。 その場で腰を抜かしてしまった。
そうやってしばらく腰を抜かして見ていると相手が悪いと悟ったのかはぐれ魔族は逃げ出したの。
それを見て私は矢を放ってくれた人にお礼を言おうとおもって震えながら立ち上がって、矢が飛んできた方向を見ると誰もいなくなっていたの。
そのことにしばらく呆然としていると、寮の方から人がたくさん来たからその人たちに千夏のことを頼んで私も寮に戻った。
そして、さっきの状況に至るという訳よ。
と、水ちゃんは話を終えると開口一番に
「信じられないでしょ。」
と自虐気味に言った。
確かにそんなどこの白馬の王子様!? と、思わずつっこんでしまいそうな内容だが、私は水ちゃんの言葉を首を振って否定すると、
「ほかの人が言ってたり、実際にそこにいなかったら信じられなかったかもしれないけど、嘘をつかない水ちゃんの話だし私もそこにいたわけだしね。 だから、信じるよ!」
そういって微笑んだ。
私の言葉に水ちゃんは一瞬驚いたような顔をすると、すぐに微笑み返してくれた。
「そうね、千夏は私のことをいつも信じくれてたわね。あんな心配必要なかったわね。」
その水ちゃんの言葉に照れていると、いつの間にか学校に着いていた。
照れ隠しに「学校に着いたね」と水ちゃんに言おうと振り向くと、水ちゃんの頬がうっすら赤くなっていることに気づいた。
そして、水ちゃんのその様子に心当たりを思いだし、いたずら心に火がついた私は少しからかってみることにした。
「あれ~、水ちゃんほっぺた赤いよ~。」
私のその言葉に水ちゃんはドキっとすると、すぐにいつものすまし顔に戻り、「何のことかしら」と、とぼけてくる。
だが、私は知っている。
幼い頃から厳格なお父さんに育てられ、武術の道を歩んできた水ちゃんは少女マンガのようなシュチュエーションに憧れていることに。
だから、私は攻め続ける
「あれれれ~、本当に心当たりないのかな~?」
「ないわね。」とあくまで認めない水ちゃんに私は更にワルノリする。
「ああ、私にも白馬の王子様が現れ」
「千夏?」
昔水ちゃんが言っていたセリフを言おうとしたら底冷えするような声が聞こえてきた。
どうやら、ワルノリが過ぎたらしい。
「そこまで千夏がやろうとするならしかたないわ、こっちにも考えがあるから。」
その言葉に私は首をギチギチ言わせながら回すと、
「考え?」
と、わかりきっている答えを聞いた。
すると、案の定と言うべきか私にとっての禁句が、
「ええ、アイドル高橋千夏は寝相がとても悪いうえ部屋の片づけすらもできないと写真付きで」
「すいませんでした。」
言い切られる前に土下座していた。
そう、私はアイドルなのである。
それ自体は学校の人ほとんどが知っているが、それのせいで学校では八方美人を演じている。
八方美人を演じている学校に私が普段は結構抜けていてずぼらな部分も多いなんて知られたら、私の学校ライフが音をたてて崩れ落ちてしまう。
それだけはなんとしても回避せねば。
いや、アイドルといっても最初は軽い気持ちでやっていたものだ。
人気になりたいとか思ってやっていたわけではない。
ただ、歌うのが好きだったのと自分でもうまいなーとか思ってたらいつのまにか歌姫とか呼ばれるまでになっていた。
それだけならまだよかったが、自分のことなんて知らないだろうと思って入学したら学校のほとんどの人が知っていて、特別な眼差しとか向けられたときには心が折れかかった。
だが、女子は普通に接してくれているので現在もアイドル活動は続けている。(男子の一部がきもいけど)
私はあわてて話題を変えるように、
「転校生ってどんな人だろね!!」
と、何度目になるかわからない転校生トークにした。
そのとき、水ちゃんに白々しい目で見られた気がするが見なかったことにした。
「そうね、どんな人かしらね。」
と、テキとーなあいずちをうちながら水ちゃんは学校に入っていった。
「待ってよー!」
私も後を追いながらこれから会うであろう転校生について考えていた。
すいません、主人公出せなかったです。
次必ず出すんで期待しててください。
四日に一回は更新します。
それでは