異世界に産まれる、その前に(1)
異世界にいく前の話です。重要です(^ ^)
気がつくと、蓮は色彩が白に統一された場所に来ていた。蓮はまず自分の有り体を観察した。そして自分の身体の輪郭が黒い線で引かれれているのみで、他には何の特徴もないことに驚いた。
「訳がわからん。寝ているのか、起きているのか…。それともそのどちらでもないのか、何もわからん。」
「そうでしょうね。」
一人の女性が蓮に向かって近づいてくる。それは明らかに女性であるとわかる表象を持っていた。
「貴方は何ですか?いえ、失礼。どなたでしょうか?もしかしたら、この状況を説明できるのですか?」蓮は女性に丁寧な口調で話しかけた。普段から蓮は女性に対して丁寧な言葉遣いを心がけているからだ。女性は蓮の質問にはっきりと答えた。
「私は貴方の知りたいことの幾つかの点なら答えることはできるでしょう。なぜなら、それを説明するために私はここにいるのですから。私は堕ちた神、メテエド。異世界と異世界の狭間に存在し、そこに堕ちてきたものを導く役割の神です。」
蓮はたいして驚くことなく、メテエドの言った言葉の意味を反芻していた。メテエドは蓮の質問に答えただけでなく、蓮の置かれた状況をも説明していたからである。
「すると、俺は地球のある世界から堕ちてきて、今はその狭間にいて、これから貴方に違う世界へと導かれるということですか?」蓮は推測をメテエドにぶつけてみた。ほとんど確信を持って。
「ええ、その通り。私は貴方を導きます。他にも質問がおありでしょう?話してごらんなさい。」
メテエドはおそらく蓮の思っていることをある程度予測しているようだ。蓮はそれなら質問の全てをぶちまけようと肩を緩めた。
「では、遠慮なく…。まず1つ目に、堕ちるということは死ぬということとは違うのでしょうか?ちなみに俺は違うように感じています。2つ目に、何故俺は堕ちてしまったのでしょうか?そして最後の3つ目に、異世界に導かれるとはどういうことでしょうか?」
メテエドは微笑んで、ゆっくりと眠たくなりそうな声で説明を始めた。
「1つずつ丁寧にお話ししましょうね。大切なことですから…。1つ目のことなんですが、堕ちることと死ぬことは全く違います。貴方の感じている通りです。堕ちるというのは、過去・現在・未来において自己の存在及び自己に関する事象の欠損が前提となっています。そしてその存在は存在未満となり、狭間を彷徨うことから始まります。このように死とは違うのです。」
一呼吸を置いてメテエドはさらに話を続けた。
「2つ目の質問に答えましょう。貴方が堕ちてしまったことには理由がございません。貴方はただ堕ちるべくして堕ちたのです。強いて理由を挙げるなら、この狭間があったから、と言えるでしょう。」
まだ狭間での話は続きます。