第8話 貧乏子沢山という言葉がある
ニコル13歳 ガーラント20歳。
オレはガーラントの借家に住んでいた。日中はガーラントは見習い騎士として、王城にて稽古に励んでいる。
そうすると借家には奥さんしかいない。
奥さんが日の高いうちから若い男を部屋に連れ込み、男に自らの乳房を吸わせる濃厚なシーンにも遭遇してしまうわけだ。
「あぶぅ、あばぶぅ」
「はーいよちよち。ちゃんとおっぱい飲もうね~」
若い男(0歳)に授乳プレイ中の奥さん(18歳)。
一般的にはプレイではなく、食事とよぶかもしれない。
「あっ、ニコルさん。お鍋ふいてますよ」
「はいはい、鍋をかき回してっと」
「ニーコぉ、あそぼーよぉ! ねーねー! あそぼーあそぼー!」
オレとのプレイ(お遊戯)をせがむ若い娘(2歳児)。
ズボンが引っ張られてよだれと鼻水が擦りつけられて最低だ。
この2歳児も成熟した肉体を持て余している奥さんの乳にむしゃぶりついて、濃厚なレズプレイをして欲しいんだが。
さすがに2歳となれば、食事はおっぱいではない。騒ぐし歌うし踊るし暴れるし、まったく手がつけられない。
オレはわがまま放題のガキの世話をしながら、家事を手伝っていた。
こんなことをするためにガーラントに仕えているわけじゃないんだが。
いずれ著書をかける身分になったら、子供が急病になってもオレが家を支えたエピソードとして加える事にしよう。ただの子守じゃサマにならん。
「ほんと、ニコルさんがいてくれて助かります」
「こんな事をするために、オレはいるわけじゃないんだすけどねぇ」
授乳しつつオレを褒めてくれる奥さんへ、オレは冷淡に対応した。
「ニコルさん、ずっといてくださいね」
「やです」
さっさと自分の家を持ちたい。あと嫁さんがほしい。
「そんな事いって。ニコルさんは子供が大好きだからぁ。ねー♪」
「ねー♪」
奥さんと幼女が、示し合わせたように笑いあった。
「嫌いです。つーか、オレだって世間的にはまだ子供でしょ」
オレは13歳だ。働いている奴もいるけど、遊び呆けているやつだってまだまだいる。
「うふふ、じゃあこの子のご飯終わったら、おっぱいのみます? 子供のニコルさん♡」
「……」
オレは目を見開いて奥様を見てしまった。奥さんはニコニコと微笑んでいる。
そして授乳中の乳房が見える。
き、き、きたぁぁぁ!!!
若い奥様(18歳)が、生真面目で働き者な少年を誘惑するシーンだ! 本屋で立ち読みしたエロ小説でみたことある!
まじ? まじで?
奥様のお名前はイゼットさん。銀色の髪をしたけっこうな美人さんだ。いや美少女だ。2人子持ちだけど、まだまだ十代。お肌ぴちぴち。子供生んでるからおっぱいも大きい。
ばっちりです! ぜんぜんいけます。むしろ積極的に行きたいです!
問題は手を出したことがばれたら、ガーラントからぶち殺されかねないところだけど。でもなんというか、相手からのお誘いですから。
添え膳をくわぬは男の名折れよ!
「は、はい。その。よろしかったら、えーーーと。お、おねがいします!!」
オレの童貞を、貰っちゃって下さい!!
「じゃあ煮物ができたら、瓶を持って牛乳を買いに行ってくださいね」
「……はい」
ぎゅ、牛乳?
奥さんの乳ではなく? 牛の乳?
「牛のおっぱいは栄養がいっぱいですよ。子供のニコルさん」
変わらずニコニコしている奥さん。絶対に意味がわかっていっている。
かーらーかーわーれーたーーー!!
くすくすと奥さんが笑った。母親の上機嫌を感じた赤ん坊も、楽しそうに笑う。そしてオレに鼻水をくっつけている幼女も。親子に笑われているみたいだ。
くそーー!
ぶち殺すぞこの女ぁ! 主君のかみさんだからって、調子乗るなよ。オレはいざとなれば、女だって平気殴れる男なんだぜ!
「ねーねー、ニコおじちゃんは、まだおっぱいのむの? こどもだなー。ヴィヴィはもうおっぱいのまないんだよ」
鼻をたらしている2歳児に子ども扱いされた。屈辱だ。全部、奥さんのせいだ。
とか思っていたら、天罰があたったらしく急に奥さんが胸を抑えてうずくまった。
どうも最近、奥さんの体調が良くない。ザマァとか思いもしたけど、そうも言っていられない。
お金がないといっていやがる奥さんを、無理矢理に医者に連れて行った。
医者の診断の結果。
「ご懐妊です。旦那さん、しっかり支えてやりなさいよ」
支えてやれと、医者に言われてしまった。
「あらー、またできちゃった。……ニコルさん。今後ともよろしくお願いしますね」
子供を宿した若い女に頭を下げられてしまった。医者の目の前で。
なんでオレが孕ましたみたいな流れになっているんだよ! オレはきっちり童貞なんですけど!
「お断りします! オレはベビーシッターになるために来たわけじゃないことは、ご存知ですよね」
「こんなに手のかかる子供を3人もお世話出来ません~。シクシク」
じゃあ避妊しろよ!
非難する目つきの医者と看護婦の視線がきつすぎて、とりあえずオレは嘘泣きをする奥さんをつれて家に帰った。
その日はとりあえず3人でお祝い。肉も酒もお菓子もない、宴と呼ぶにはささやかすぎるお祝いだった。料理は晩御飯そのままだ。
つまり『宴』と銘打っているだけで、普段の夕食と何も変わらない。
「金が、ないからなぁ」
見習い騎士ガーラント(3人の子持ち)が、しみじみと言った。
それから1年後。
ガーラントの肩書が変わった。騎士ガーラントとなったのだ。見習いがとれた。
「金が、ないなぁ」
給金が増えたはずのガーラントは、相変わらず超貧乏だった。
剣術と勇猛さでは並ぶことのないガーラントも、平和な時分はまったくやることがない。手柄の立てようがない。
ガーラントが手柄のない下っ端の騎士のままでは、オレも手腕の発揮しようがない。
ちなみにガーラントよりも、オレは困窮していた。
学校の奨学金の支払い最速早のように来ている。
仕えるべき主君を間違ったかもしれない。
ども、作者です。名前変えているんで活動報告かけないから、あとがきに雑文を書きます。
あと5話分くらいはストック溜まってますんで、そこまでは毎日アップ出来ると思います。残りはGWの頑張り次第でしょうか。それでわ。




