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騎士様の知恵袋  作者: ギロチン
16/20

第16話 手柄を立てたら出世できる!・・・・・・なんていつから誤解していた?

ニコル16歳 ガーラント23歳



 色々と大変だったが、戦果は素晴らしいものだった。

 騎士団でも勝てなかったゴブリンの集落を、たった一人で壊滅させたんだ。なんだかもうおとぎ話のような英雄伝説である。

 ガーラントとオレの出世街道は、ここから始まる。


 はずだった!


「手柄を声高に叫ぶのは、俺の主義に反する。俺が手柄を上げたのはその場の誰もが知っている。だからそれでいい」


 ガーラントが信じられないことを言った。


「は?」


 オレは受け入れることが出来ず、目を丸くするしか出来ない。


「ゴブリンを壊滅させる任務は、『ご婦人のための長盾』騎士団のものだ。俺はその参加者の一人。それでいい」


「よくないだろ! オレとお前でゴブリンを倒したんじゃん。『ご婦人のための長盾』騎士団は大失敗しただろ」


 正確には戦ったのはガーラントだけだけど。でもオレだって頑張ったんだ。

 手柄をオレたち二人で独占して何が悪い。


「捕虜にされた騎士たちの協力がなければ、あれほどの戦果はあげられなかった」


「開放したのはお前だろう」


「ケンプレスの力で、村の協力もあおげた」


「村の協力って、帰りの食事と、裸に剥かれた騎士様たちの服と靴だろ。そのくらいしてもらわなくちゃ困るだろうが」


「命を惜しまず戦う。敵は必ずブチ殺す。だが手柄を声高に主張するのは、俺の主義に反する」


 ガーラントは繰り返した。


 たしかに『ご婦人のための長盾』騎士団における、ガーラントの地位は確固たるものになっている。モテモテらしい。

 ただガーラントは元々『銀の切っ先』騎士団の所属なので、別の騎士団でいくら人気者でも意味が無い。


「が、頑固者!」


「頑固じゃないぞ。ニコルがやれというなら、俺はやる。でも俺はやりたくない。だから頼む。今回は折れてくれ」


 ガーラントはペコリとオレに頭を下げた。


「冷静になれよ。上級騎士になれるチャンスだぞ。報酬だってすごいことになる。吟遊詩人に歌ってもらえれば、著作権収入だってはいる。そのために作詞作曲までして待ってたのに……全部パーだ!」


「すまん」


「ゴブリン殺しの勇者ガーラント! 子供でも歌えるように単調な歌詞にした。お前を称える歌を、街中の子供が歌うんだ」


「それはまた次の機会で。頼む!」


 さらに深く頭を下げられた。もうガーラントの額がテーブルにぴったりくっついてる。

 こうなったらどうしようもない。ガーラントは絶対に折れないだろう。ここまで頭を下げられたら、押し付けることは出来ない。


「……はぁ、またしばらく貧乏暮らしか」


 オレはガックリとうなだれた。


「援軍に派兵された手当はつく。お前に全部やる」


「いいよ。イゼットさんに土産でも買ってやれ」


 オレは今回の大手柄での出世は諦めた。


 そして別のことだが、先ほどのガーラントの言葉で、ちょっと気になることがあった。


「ところで。ケンプレス様のことだんだが」


「ああ、ケンプレスがどうかしたか?」


 呼び捨てである。ケンプレス様は『ご婦人のための長盾』騎士団の副団長で、かつ貴族階級だというのに。扱いが親しげというか荒っぽいというか。


「関係、続いているのか?」


「変な言い方をしないでくれ。ゴブリンにやられた悪い記憶がなくなるまでのことだ」


「……もうずいぶん時間がたった気もするんだが」


「まだ忘れられないらしい」


 オレはガーラントの目を見た。こいつは基本的にバカだ。脳筋だ。騙されている可能性もある。


「まさか今回の手柄の譲渡は、ケンプレス様に勧められたわけじゃないよな?」


 ガーラントが手柄を主張すると、ケンプレス様はゴブリンに負けた無能な騎士団の副団長ということになる。一番の責任はゴブリンに魔術師がいることを考慮しなかった団長だけど、責任は問われる立場だ。


 逆にガーラントが手柄を譲れば、ケンプレス様にはゴブリンを退治した騎士団の副団長という名誉がもらえる。


 騙されている可能性あり!

 上手く話を持っていけば、手柄はやっぱりこっちのものに出来るか!?


「いや。ケンプレスはすべて俺の手柄にして欲しいといっていた」


 違ったようだ。くそ!


「そっかーーー。うんうん、ケンプレス様の言うとおりだな。オレもそう思う。……そうしないか?」


「しない」


 頑固者め。


「ケンプレスは今回のことで責任を問われたら、潔く騎士団を辞するつもりだそうだ」


 実際、責任あるし。それもしょうがないんじゃないか?


「騎士団をやめて、俺を婿に迎えて家庭に入りたいと言われた」


 オレは飲んでいた白湯をボフッと吹き出してしまった。


「お前は結婚してる上に子持ちだろうが! イゼットさんはどうするんだよ」


「もちろん俺もそう言って断った。そしたら子連れでも構わないと。イゼットも側室として暖かく迎えると言われた」


「……」


 ケンプレス様、すげー性格だなぁ。結婚している男に求婚して、奥さんを愛人に格下げさせようとしてんのかよ。平民を人間と思ってないのかな? 

 あー、そういや俺をめちゃめちゃ見下してたな。貴族ってそういうものかも。覚えておこう。


「で、どうしたの?」


「ぶん殴った」


 さすがガーラント。考えるより手が先に動くやつだ!


「嫌われるかと思ったけど、余計にくっつかれるようになった」


 なんでそうなる!?

 ケンプレス様って特殊性癖なのか? ゴブリンにやられて、変なスイッチが入ったのかも。くわばらくわばら。


 まあ話し合いはこれで終了。ガーラント&ニコルの初任務は、大成果の少報酬で終わった。

 実益として得れたのは、僅かな給金だけだ。


 あとガーラントと『ご婦人のための長盾』騎士団の女騎士たちとの不適切な関係は、その後もしばらく続いていた。

 ケンプレス様だけじゃなくって、助けた他の女騎士様たちみんなと。お相手の合計25人の盛大な浮気である。


 絶倫でならすガーラントといえども、さすがに家庭での性生活に影響が出て、イゼットさんが浮気に気がついた。


 度量の広いイゼットさんは、多少は黙認するつもりだったようだ。

 が、浮気の相手が25人にも登ることを知り、堪忍袋がいくつもブチ切れて、子供を連れて実家に帰ってしまった。


 うん、100%自業自得だ!

 ガーラントめ、ざまーみろ!

作者より

ここらへんでガーラントの人となりが出てきた気がします。バカだけど利益誘導しづらいバカです。こういうキャラは大好き。理想はビッテンフェルト提督ですね。

同時にニコルの方もキャラが徐々に立ってきました。

頑張りましょう。

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