第15話 おっぱい騎士団
ニコル15歳 ガーラント22歳
3日後。
丘の上で待っていると、ガーラントがやってきた。
生きて帰ってきてくれたかガーラント!
と感動的に抱き合いたかったが、それどころじゃなかった。
ガーラントの後ろには、ぞろぞろ女がついてきていたのだ。全員、裸のお姉さんである。
たゆんたゆんしている。プリンプリンもしている。目をどこにやれば失礼に当たらないか全くわからないほどピンク色だ。
「ゴブリンに捕虜にされていた、『ご婦人のための長盾』騎士団の騎士たちを開放してきた」
「あ、ああ」
その数25人。逃げ遅れた女騎士様たちは、ほとんど全員ゴブリンに捕まっていたそうだ。ちなみに逃げ遅れた男の騎士はここで全員死亡。
女騎士様たちはゴブリンの住処に連れて行かれ、そこで両手両足を縛られてエロイことをされていたそうだ。
んで、朝日とともにガーラントの登場。猛烈な勢いで、ゴブリンの撲殺開始。
逃げ惑うゴブリン、血まみれで暴れまくるガーラント。
大混乱のなかで開放された女騎士様たちは、怒りのままゴブリンに襲いかかり、そして一緒に逃げてきたそうだ。
女騎士様たちは、着の身着のままというか、脱がされてそのままだった。ゴブリンから奪い取った粗末な武装以外はなにもない。それこそ布一切れすらない。
「ニコル。とにかく飯を用意してくれ。あと服。靴も必要だ」
無茶言うな! こっちだって服着てるだけで、ほとんどなんにも無いんだぞ。
っていうか、ガーラント家の全財産をつかっても25人分の衣服と食事なんて用意できないだろう。
そこで目につく女騎士様のおっぱい。いや不埒な意味ではない。行きのときに彼女らの奔放な着替えを見ていたので、オレは全員のおっぱいを覚えている。
のだが、見覚えのないおっぱいがいた。顔にも見覚えがない。
「ガーラント、こちらの方はどなただ?」
「捕虜になってた騎士だぞ」
そんなの知ってる。
ザワッと、女騎士様たちがざわめいた。
いや、なにさ。どうしたの?
「……恥を忍んで言おう」
おっぱいに見覚えがない女騎士様が、葉っぱで胸と股間を隠しながら言った。
服を渡したいけど、他にもたくさん全裸の騎士様がいるからオレが全裸になっても布が足りない。
「私は『ご婦人のための長盾』騎士団の副団長、ケンプレスだ」
「副団長様!?」
これは驚いた。そして納得だ。騎士団の副団長で、たぶん貴族なんだろう。だから外で着替えるなんてことせず、たくさんいる従士にテントを張らせていたに違いない。
名乗らなかった理由もわかる。ゴブリン相手に騎士団を壊滅させられたんだ。おめおめ名乗れるわけもない。
「お前、副団長様だったのか。そっかそっか、そういや挨拶したな」
ガーラントが豪快に笑う。騎士団に入るときに、ガーラントは絶対に会っているはずなんだか。忘れていたのか、この脳筋め。
「こちらの意図をくんで、気づかないふりをしてくれているのかと思っていた」
ケンプレス様が言う。
ケンプレス様は、金髪の背が高い美女といっても差し支えのない顔立ちをしていた。そしてかなり若い。ガーラントより年下か? かしたら10代かもしれない。
この若さで副団長ということは、ケンプレス様はよっぽど家柄が良いんだろう。もしくは『ご婦人のための長盾』騎士団に人材がいないかだ。
一応、ケンプレス様が超有能という可能性もワンチャンあるが……たぶん違うだろう。有能そうな雰囲気がない。
「いや完全に忘れてた。悪い悪い。えっとケンプレス様」
「……昨日のように呼び捨てで構わないぞ、ガーラント殿」
ケンプレス様がうつむきながらガーラントに言った。なんか恥ずかしそう。全裸だからとか、そういうのじゃなくって。
なにこれ?
「ガーラント。まさかとは思うが、そのーー」
「妻には内緒な」
ガーラントンは唇に指を当てて笑った。
手ぇーだしてるぅ!!
こっちが心配しながら待っていたというのに、のんきに開放された女騎士様とやってたのかよ、てめー!
「誤解するなよニコル。ゴブリンとの悪い思い出は無くしたいと言われたら断れんだろう。これは慈善活動なのだ。」
そのボランティア活動、オレもやりたい! 超やりたい!
「それに逃げてきたのはたった3日だ。さすがに全員は手が回っていない」
はぁぁ!? エッチしたの、ケンプレス様だけじゃないのぉ?
見ると後ろの女騎士様たちも、行きの移動中には欠片もみえなかった乙女の顔でこっちを見ている。具体的には、ガーラントを見ている。
なにこの好色一代男! ハーレムで作るつもりかよ。
街に帰ったら改めて、という約束を女騎士様たちと交わしたらしい。人数は25人。つまり全員。なんかこの……なんか、なんか……。
半分くらい、こっちのもわけてくれませんかねぇ?
「とにかく飯と服と靴だ。ニコル」
「やる気しないなぁーーー」
ふてくされるオレ。自分でも器の小ささに泣きたくなる。
「あとで紹介するから」
「むしろイゼットさんに紹介したいよ」
「それは勘弁! な、頼むよニコル。騎士は戦闘以外じゃ無能だ。頼む!」
ガーラントがオレに手を合わせて拝んだ。
後ろで見ていたケンプレス様が、それをみてイライラしたらしく、オレに言う。
「おいニコルとやら。貴様は従士の分際で、騎士に頭を下げさせるとはどういう了見だ! 序列というものを知らないのか。黙って従え!」
「……」
オレの動きが止まった。先ほどまでの笑いを含んだふてくされた心は消え去り、冷たい感情が心臓を支配する。
オレはケンプレス様に視線をやった。たぶん、とても冷たい目をしていたと思う。
それに気が付き、そして即座に行動してくれたのはガーラントだった。
ガーラントは手甲をはずし、素手になった手でケンプレス様を平手打ちした。全裸の女を、しかも貴族の女を容赦なくひっぱたいた。
「ニコルは俺の半身だ。ニコルは俺の右腕で、俺はニコルの右腕だ。こいつを粗略に扱うならば、俺はお前と決闘せねばならん。お前は俺より弱い。戦ったら必ず殺してしまう。だからお前はこいつをバカにするな」
「あ、……え? ガーラント様?」
先ほどまでの優しいガーラントとのあまりに違いに、ケンプレス様は驚いたようだ。
「謝るのならば、許す」
一歩も引かないベルレルレン。
ケンプレス様は、とても小さい声で「申し訳ない」と独り言のように呟いた。
ガーラントンの気遣いは、正直すごく嬉しい。
でもそれ以上におっかない。貴族に恨みを買ってしまったんじゃないかと、怖くなってくる。
ケンプレス様は、恨めしいといった表情で俺を睨んでいた。100%恨みを買っている。
なんで殴ったガーラントじゃなくって、オレが恨まれるんだ。意味がわからん。オレは睨んだだけで我慢したじゃないか!
「はぁ、25人分の飯と服と靴。だな」
オレは考えるのが面倒になり、ともかく目の前の問題を解決するように動き出した。貴族にして騎士団副団長のケンプレス様がいるんだったら、話は早い。彼女にオレの服を着てもらって、近所の村で助力を請おう。借用書をきれば、全て用意してくれるはずだ。
近隣の村で色々借りて、どうにかオレたちは街まで帰ることが出来た。
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無能騎士のケンプレス様です。
知恵のニコルと力のガーラント。そして厄介事を持ってくる役のケンプレス様。こっから物語を展開させることが出来るかどうか……。ま、やるだけやってみましょう。
全裸描写を徹底的にやって微エロ入れようとしましたけど、やめました。話の流れが悪くなるし。なんかこのストーリーに合わん気がする。