第14話 火攻めをしてくれたゴブリンさんに、早朝襲撃をプレゼント
ニコル15歳 ガーラント22歳
ゴブリンは夜行性だ。つまり昼は寝ている時間。では真っ昼間が一番奇襲に適しているかと言われれば、さにあらず。
この場合、日の出る直前あたりが一番良い。
「じゃあいってくるぜ」
ガーラントは完全武装であった。
鉄の鎧にで全身を覆い、子供の身長ほどはある巨大なメイスを持つ。武器と鎧を含めた総重量は大人数人分はあるだろう。それがとどまることなく動き続ける。メイスは高速で振り回される。近寄れば生物が瞬時に肉片へと代わる地獄戦車だ。
オレはその殺人兵器に、二度目の送り出しをした。
「おう、死ぬなよ」
今回はオレも戦闘要員だ。なにしろ2人しかいない。
オレが戦えばゴブリンにすら負けるかもしれないが、囮にはなる。なるべく戦わずに囮になるために、オレは鍋を装備した。戦いの銅鑼代わりだ。
弓を射ることも出来ないオレは、偽兵を演出するだけで手一杯。
ガーラントはガチャガチャと音を立ててゴブリンのすみかに歩いて行った。音がするにものすごく目立つ。でも見つかることはないはずだ。
ゴブリンたちは今、宴の真っ最中のはずだから。
ゴブリンたちは基本的に捕虜なんて概念はない。にも関わらず騎士を捕虜にした。
その用途は、ガーラントの話を聞いてすぐ理解できた。
「女だけ連れてかれてた」
つまり「くっ殺せ!」的なエロい展開が、ゴブリンの集落で繰り広げているのだろう。
騎士団にいた女騎士は52人。逃げ遅れた者はみんな、捕虜にされたそうだ。
旅の途中で、おおらかな性格の女騎士様たちは、隠すことなく着替えとかをしてくれた。オレは全員のおっぱいを覚えている。見捨てるわけにはいかなかった。後味が悪すぎる。
ゴブリンたちは捕まえた捕虜というか、まあ生のエロネタに大喜びしていろいろ頑張っていることだろう。
そしてクッタクタにくたびれている頃の時間が、夜明け直前のこの時間だろうと、オレは読んだ。根拠はオレの自慰習慣。エロイことは寝る前が一番盛り上がる。これについては子持ちのガーラントも「たしかに朝ごはん後と、夕食後じゃあ。どう考えても夕食後だな」ということだ。
宴に酔いまくるゴブリンたち1000人に、屈強にして最強の殺人機械とかしたガーラントがノシノシと歩いて行く。
大混乱になるはずだ。ガーラントがオレの望んだ通りの戦闘能力を保持していれば。
オレの仕事は、ガーラントの歩いていく真逆の方向で、鍋を叩きまくって偽兵を演出すること。こちらがやられた伏兵戦術をお返しだ。
オレがダッシュで木々の間を走っていると、ゴブリンの村のほうで絶叫が響いた。
ガーラントが始めたみたいだ。あいつの勇姿を見たい気もするが、オレはオレで忙しい。
最適と思える場所で、オレは鍋を鳴らして大声を発した。こっちに走ってきてたっぽいゴブリンが、大慌てで方向転換して逃げていく。
ゴブリンにとって、基本的に人間は強く手強い相手だ。オレが激弱だとは気づかず、どんどん逃げていく。もちろん逃げ道はたくさんだ。
敵には策をだせる司令官がいる。オレの仕事は、とにかくゴブリンを混乱させ、指揮させずに遁走させることだ。
1、超強い騎士が攻めてきた。
2、逆方向からも敵がいる。
3、逃げ道は無数にある。
この3つが組み合わされば、ゴブリンたちは猛ダッシュで逃げるはずだ。
オレは騒ぐだけ騒いで偽兵を演出すると、そのままガーラントとの第二合流ポイントに走った。
もはやここの近くで合流するのは危険だ。なにしろそこら中に逃走中のゴブリンがいる。見つかったら負けるのはオレの方なんだ。
合流地点はここからちょい離れた丘の上。目立つところじゃないとガーラントが迷子になって辿りつけない。
ガーラント、先に行って待ってるぞ。必ず生きて帰ってこいよ!
作者のギロチンです。
捕まった女騎士様たちの「くっ殺せ!」のエロシーンはないですよ。期待しないでくださいね。いや、ノクターンじゃないから期待するわけ無いか。
どうも普段はノクタにいるせいか、感覚がおかしいです。エロシーンが入れられるタイミングで入れないと、なんか罪悪感があります。
そういった感覚を普通に戻すリハビリ的な意味も、この連載にはあったりします。たぶん。