表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凍てつく王国  作者: 玖波 悠莉
前編
52/86

10-2 絶鳴

「そもそもの、話から始めよう。」

外から、ゴウゴウと風の唸る音が聞こえた。

暗闇をちろちろと炎が照らす。ジャックとシグルーンがおこした火だった。

雪に覆われた山の斜面にぽっかりと空いた横穴。その中に彼等はいた。入口に近い方にアリアが一人で座り、火を囲むようにしてシグルーン、ジャック、それからワイザーが座っていた。横穴の一番奥…火のほど近くでもある…にヘンケルが皆の外套にくるまれて寝かされていた。

「そうだな…アレストリアは元々さほど大きな国ではなかったが、近年、近隣の小国を平らげて、勢力を拡大していった。ここまでは知っていると言ってたな。」

揺らめく炎の光を見つめながらシグル-ンは、口を開いた。パチリ、とアリアがとってきた木が炎の中で爆ぜる。

「うん。」

「それをやったのが…現国王、ま、俺の父親でもあるわけだが…。数年前、病で倒れた。」

「数年前?」

「ああ。…話をつづけるぞ。王が病に臥せってから、政治の実権は兄たちが握った。当然といえば当然だが、次の王位への覇権争いが始まった。」

「シグは入ってないわけ?」

「ああ。俺は母方が貴族の出や、まぁ、そう言った家柄じゃなかったもんでな。」

「…そう。」

アリアは話を聞きながら、入り口近くの凍った壁に背を預け、伏目がちに外を眺めていた。

ぱちりと薪の爆ぜる音がした。

アリアは、ちらりとシグルーン達に目をやったが、再び、外に視線を戻した。

「その状態で、何年かが経ったが、今年、…そう、今年の夏からが問題だった。」

ジャックが溜息をつき、ワイザーが疲れたように薪を火に投げ込んだ。

一瞬、火は薪を飲み込んで大きくなったが、まだ薪は乾ききっていなかったのかぐずぐずと燃え、火は少し、小さくなった。

「冷夏だった。今年の夏は寒い夏で、作物の出来がかなり、悪かった。おかげで軒並み物価が跳ね上がった。」

「…そういえば言ってたね、ルイーゼさんがそんなこと。」

「ああ…。景気が悪いと娯楽は真っ先に手が出なくなるからな…。」

アリアは手近にあった氷柱をぽきりと折って、吹雪の舞う外へと放った。

「それで?」

「…そのまま秋が来て、冬にさしかかった。いつもより、ずっと寒い冬に。」

「金もない上に寒い冬ときたもんだ。最悪だ。」

ジャックがまた、薪を放る。

「アレストリアは父が病に伏せるまでは、他国を吸収して、そこそこ良い生活を送っていた。それが、一気にひっくり返った。この冬は死者が多くなるはずだ。餓死や、凍死といった普段ならほとんどいないはずの死者が。」

シグルーンは溜息をつきかけたが、そのまま、話をつづけた。

「そうなると、先は見えず、不安ばかりが募る。民衆の不安や不満が募ると、国が多きく揺らぐ。父が健勝だったなら、少しは違っていたかもしれないが、王座にいるのはお互いを牽制しあう兄たちだ。まぁ…ただ兄たちが愚かだという訳ではないだろう、足元が不安定極まりない上にこれだ。仕方がない、と言うつもりも、ないが…な。そこで、兄たちは原因を外に求めた。悪役を作ってしまえば、民衆の怒りや不満はそちらに向かう。」

ガキッと握りしめたアリアのこぶしの中で氷が砕けた。

「…ちょっと、待って。それは…どういうことだ?!」

シグル-ンは、少しの間、沈黙し、再び口を開いた。

「…この不況も、寒波も、どこかに原因があるという事にしたわけだ。そして、そんな折に、北の山脈に棲む白い一族の情報が入ってきた。氷の一族、という形ではなかったが…聞けば、その一族は冷気を操れるという話ではないか。それなら…と」

「ふざ…っけるな!どうやったらそんな話になる…!」

ぱらぱらと砕け散った氷の欠片を掌からこぼして立ち上がる。

「…。さすがに、その話を頭から信じはしなかっただろうが、別段、失敗したところで露見することもない。何か見つかれば儲けものだと思ったんだろう、一度、北の山脈に捜索隊と称して兵を派遣した…。」

シグルーンはその先を継ぐ前に、溜息をついた。ひどく、疲れたように。

「そこで…アリアを、見つけた、そうだ…。」

愕然と立ちすくむアリアの見つめる先で炎の中の薪がパチン、と弾けた。

揺らめく炎の光は、アリアに背を向けるシグル-ン達の影を、なお一層濃く、大きく浮かびあがらせていた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

何分文章力がないもので、説明が分かりにくいとは思いますが、大目に見てやっていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ